テラーノベル
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15から上がんないので次出します
主人公 いやそれって主のできが悪いだけやん
主 ひどい
主人公 しらんがな
それじゃあスタート
魔王軍の斥候が退いたあと、草原には嫌な静けさだけが残った。
死体も血もないのに、さっきまでの緊張が身体から抜けない。
「……生きてるよな、俺」
自分の両手を見る。
さっき、確かに魔力が流れた。偶然じゃない。あれは――使った。
「浮かれるな」
賢者のおっさんが、杖で地面を軽く突いた。
「今のは“出た”だけだ。“使える”とは言わん」
「ぐうの音も出ねぇ」
だが、おっさんの目は少しだけ柔らいでいた。
「だが、条件は揃った。恐怖、責任、判断。
お前は“逃げなかった”。それが魔法の核だ」
俺はその場に座り込む。
心臓の音が、まだうるさい。
「魔法ってさ……才能とか血筋とかじゃないのか」
「それもある。だが、全てじゃない」
おっさんは俺の前に立ち、ゆっくりと言った。
「魔法とは“自分をどう扱ってきたか”の結果だ」
「……重いな」
「ブラックな人生ほど、向いている」
慰めてるのか、皮肉なのか分からない。
「いいか。お前の魔力は強くない。だが、制御が異常に上手い」
「え」
「理不尽を飲み込み、優先順位を即座に切り替え、
壊れない程度に自分を使う――それを何年もやってきただろう」
それは、否定できなかった。
「今日は一つだけ覚えろ。派手な魔法はいらん」
おっさんは地面に円を描いた。
「生活魔法《簡易操作》。
魔力を“力”として扱う基礎だ」
「地味だな」
「生き残る魔法は、だいたい地味だ」
俺は円の中央に立つ。
「魔力を集めろ。ただし、気合を入れるな」
「え、さっきは必死だったぞ」
「必死になるな。“いつもの感じ”でやれ」
いつもの感じ。
期限、無理難題、責任だけ重い仕事。
逃げたいけど逃げられない、あの感覚。
――淡く、体の奥が温かくなる。
「……来た」
「止めるな。流せ」
意識を手のひらに向ける。
魔力が、指先で素直に留まる。
「次、対象を意識しろ」
足元の小石。
ただそれだけ。
「動かします」
口に出した瞬間、小石がころりと転がった。
「……あ」
もう一度。
今度は、少し遠くへ。
三度目には、狙った場所に落ちた。
「成功だ」
おっさんは、はっきりそう言った。
「これで、お前は“魔法が使える側”だ」
胸の奥が、静かに熱くなる。
派手じゃない。だが、確実だった。
「派手な火とか雷は?」
「しばらく禁止だ」
「ですよね」
だが不思議と、不満はなかった。
「魔法をマスターするってさ」
立ち上がりながら、俺は言った。
「もっとすごいもんだと思ってた」
「大体の奴は、そう思って死ぬ」
おっさんは空を見上げる。
「だが、お前は違う。
使える力を、使える範囲で、確実に使う」
遠くで、風が戻ってきた。
草が揺れ、世界が動き出す。
無職三十路。
異世界転生。
――魔法、習得完了。
そして、
次に来るのはきっと、もっと面倒な“仕事”だ。
コメント
2件
やっぱしうめぇぇぇ!