第5話
「そういえば今日ずっと僕のことを芥川先生って呼んでいた…。ま、まさか貴様は太宰さんの偽物か!?なら許さん!!!!」
詰んだ。本当にこれは詰んだ。つい、つい先生と呼んでしまっていた!!!いくらなんでも先生なんて呼ばないって最初から来たただろ、私!!!!どうすればいいか。あの少年と会った時に素直に(私は君の知ってる男ではない)と言えばよかった。さて、どうしよう。少なくとも、絶対踏んではならない地雷があることだけはわかる。それは今私の正体を明かすことだ。だって…なんか芥川先生が殺意丸出しなんだもん!!!!なんか変な犬みたいなやつもくっついて出てきたし!!!なにあれ!?どうなってんの!?
「なになに、君たち何してるのさ?」
太宰(?)が焦っている中、1人の男が現れた。
「!?乱歩さん!!」
「やあやあ、敦に国木田に芥川くんに太宰。」
「乱歩さん、丁度いいところに現れてくれました!!唐変木の偽物らしき人物を捕らえました!超推理で確かめてくれませんか?」
「…ラムネ一本、と言いたいところだけどまー仕方がない。敦、あとで持ってこいよ?」
「は、はい!」
「では…異能力、超推理!!!!」
異能力…なんだその厨二病みたいなものは…。てか見た感じ探偵っぽいけどもしバレたら!?わ、私は殺されてしまうのか!?死ぬのはいいが、殺されるのはごめんだ!死ぬのなら心中が良い!
乱歩さん以外は乱歩さんの判決を待った。待つ間、1人は焦り、1人は殺意を向け、1人は少し困惑し、1人は落ち着いていた。
そして…。
「…なるほど。ボソッあはは、どうやら面白いことが起きているようだね。とりあえず」
「乱歩さん、わかったんですか?」
「ああ、太宰、もう芝居はそこまでにしな。」
「!?」
バレなかった…!?そう感じた瞬間。そっと胸を撫で下ろした。よかった。はは、これほどに安心したのは久しぶりかもしれない。
私は心の中でひたすら探偵らしき男にお礼をし、自分が取るべき行動を取ろうとした。そう、演技だ。おそらくこの体の男はいたずら好きでおちゃらけているのだろう。おそらく道化師に近い存在なのだろう。ならば、得意中の得意だ!!!
「あはは、さっすが乱歩さん!!いやー三人とも騙されすぎじゃないかい?」
「な、なんだ。よかった…。」
「な、この唐変木が!!!乱歩さんの手を煩わすなどと!!!」
「まあまあいいじゃないか、国木田。ね?」
「…乱歩さんがそこまでいうのなら。だが次はないぞ太宰!!!」
「わかってるよー」
「さ、さすが太宰さんです!!!!僕すっかり騙されました!!」
「でしょでしょ〜?」
「はい!ってもうこんな時間か…。太宰さん、失礼します!また来ます!!!」
「はいはーい」
どうやら本物だと信じ込んだ芥川は上機嫌でその場をさっていった。
「帰りますか…」
「そうですね」
「てか太宰さん!心臓に悪いんでこういうことはもうやめてくださいね!!」
「ごめんごめーん!さ、探偵社に帰ろう!!」
「全く貴様は…。」
「…」
乱歩はクスりと笑った。そしてニヤつきながら。
「にしても名演技だね、太宰。いや、津島修治さん?」
冷や汗をかいた。気づかれてた???ならさっきのはわざとか…!!!
「え、何を言っているんです?乱歩さん」
「津島…?」
「…」
___困惑する2人を囲う空気はとても重苦しい空気だった。
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