「俺は水の魔法使いで、モトキは炎の剣使い。リョウちゃんは…」
「あ、それね。ヒーラーをお願いしたんだ。ぴったりだと思って」
目をキラキラとさせながら説明するモトキを見て納得がいかない俺。
ぴったり?
モトキから感じるような強い力を、リョウちゃんからは感じないのに?
「ほら、変な先入観があるからだって。無心でよーく見てみて」
感情抜きで見ろってか。
努めて冷静に、平常心、無心になる。
すると…
「えっ」
俺の反応に戸惑ってオロオロしているリョウちゃんの周りに、ふわふわと優しい光が数えきれないほど浮かんでいる。
まるで遊んでるかのように彼の周りを飛び回っているのだ。
ね!とモトキが笑った。
驚いた。
正直に言うなら…
派手な見た目なのに実力も無さそうな、なんなら年上なのに弱そうでもある相手を。
なぜ命を懸けて闘うかもしれないパーティーのメンバーに選んだのかと思っていた。
けれど。
今はまだ覚醒してないようだけど、 確実に彼は実力者になる。 なぜなら…
「凄いでしょ。こんなに沢山の妖精から加護を受けてる人、学園でも他にいない」
「いや、そんな…っ。ヒーラー学科の中では皆に追いつけて無くてね…。妖精は小さい時から側にいてくれてたけど別に凄いことはしたことないよ。ただ僕の友達であり相談相手なんだ」
だからなんでスカウトしてくれたのか、よく解らないんだけどねと。
自信なさげな顔をして少し寂しそうに笑った。
「いいんだよ、リョウちゃんはそのままで。魔法はゆっくりでも訓練して出来るようになればいいんだから」
モトキが優しい目と声で彼の肩をポンと叩く。
その間にも、おそらく気のせいではなく。
俺だけが彼の周りの妖精から警戒と敵意を向けられていた。
特殊な存在、圧倒的な力を持つ存在ゆえ。
彼に対する今までの感情や態度が筒抜けだからだ。
妖精は味方になれば強いが、敵にすれば人間など簡単に殺すことも出来る。
だからと言って怖いから、ではなく。
彼の内面にあるものへ。
これだけの妖精が惹かれて加護を与えている。
努力してどうにか得られるものではなく。
天性の恵み、彼自身。
選ばれた者だけが持って生まれる性質。
認めるしかなかった。
「わかった…悪かった。改めてよろしく」
「ありがとう。こちらこそ、よろしくね 」
ふっ、と力を抜いて心から握手を求めれば。
嬉しそうに笑ったリョウちゃんの周りに、パパバパッと優しい色の花々が咲いた。
もちろん本物の花ではない。
リョウちゃんの嬉しさに妖精が共鳴し、イメージとして見える花々だ。
見てる者まで温かくなる癒し効果があるようだった。
どうやら許されたらしい。
「しかし凄いな…本人が喜ぶと妖精も喜んで花が咲くとは」
「ふふ、リョウちゃん可愛い」
俺が納得し仲良くなれそうな雰囲気に、モトキも嬉しそうにしている。
にしても、とんでもない人材を見つけてくる才まであるとは。
それに加えて自覚の無い加護を持つリョウちゃんという仲間が増え。
これからが楽しみで思わず笑みがこぼれた。
コメント
4件
この作者さん絶対人気作家だよう……。ファンとしての称号を私にください……
早速拝読致しました〜!! 実際の彼らのエピソードがものすごく自然に溶け込んでて感動しました😭 年末まで突っ走るエネルギー、もらいました✨️💪