俺達は事件解決後、探偵事務所に依頼人と校長を呼び出して昨日と一昨日の事件について話した。
jp「……つまりあの学校には怪異が住み着いていて、学校内の虐めや古くなって扉が開かない等の問題が、このような現状に繋がってしまったと考えられます。」
「なるほど……では問題は解決しましどうたが、学校は取り壊すという判断をするのが得策ですかね」
「でもあの学校は地域内でも生徒の中でもかなり愛され、大切に扱われています。それを取り壊すなんて……私にはとても……」
「生徒に被害が出るかもしれないんですよ?扉が開かなくて……事故が多発して……そんな風に事件が起こる度に言い訳して逃げるおつもりですか?」
mf「……でしたら事故が起きやすい場所だけを直して、生徒の子供達にもしっかりと危険な場所や行為を伝えたらどうでしょうか?小学校からこういう風なことを、しっかりと覚えるのが生徒や先生にとっても得策と言えるんじゃないですか?」
「……そうですよね、すみません何か取り壊すことばかり頭にあって、直せば大きな問題にもならないし……はぁ……校長失格ですね」
jp「そんなことないですよ……人間偉い人になったからっていい案が思い付くわけでも、急に何でも出来る訳でもないですから」
校長は手で顔を覆い俯いたまま、涙で体を震わせている。 依頼人は校長の肩に手を置いてぽんぽんと慰めている。
それを見るとかなり仲が良くて、もしかしたら同期だった可能性もあるなと自分の昔を思い出して感傷に浸る。
小さい頃からずっと仲良しだった人も大きくなると、別人みたいに見えることがある。
でもそれは見た目だけで本当の中身は変わっていないんだろう、彼ら彼女らを形作っているのは俺も関わっている道だから。
しっかりとこの目に脳に焼き付いている思い出だから。
jp「それでは……またご依頼がありましたら……是非。」
「はい、!本当にありがとうございました」
俺達の探偵事務所では着手金を前払いした後、成功報酬等を後払いするのが基本になっているのでそのまま料金を支払って貰い、学校のことは依頼主と校長にお任せすることになった。
途中倒して壊れた可能性がある物や買ってきて貰った物に関しては、何も弁償する必要はないと御厚意で言って貰ったので、有り難くその厚意を受け取った。
ガチャ……
na「お疲れ様で~す」
jp「疲れたぁ……休憩中?」
na「はい、ちょっとだけ」
mf「あぁ”~暑いな」
jp「冷房つける?」
na「でも良かったですね……弁償しなくて良いなんて」
mf「そーだね、色々と面倒だし有り難いよ」
dn「本当にね」
jp「そぉいや今日の当番あと一人誰だっけ?」
na「えっと~」
俺達の事務所では当番制で、当番じゃない時は基本的に他の仕事をしている人が多いくて、まぁ……要はシフト制ってこと。
自分達の好きなことや出来ることを仕事にしているので、どうしてもやりたいことがあるとその時は変わって貰ったり、そっちを優先したりするのが此処の基本的な状態。
そもそも探偵は依頼がない限り仕事がなくなるので、バイト的なノリでする人が多いのが普通……という世界なのだ。
そしてこの事務所ではどぬとのあさんが探偵カウンセラーをしていて、心のケアをしてくれている。
例えば依頼人のアフターフォローや、誰かは分からないけど、助けて欲しいと願って掛けてくる人への対応をしてくれている。
どぬものあさんもどっちも声が優しくて、話を聞いて貰ってると元気が出て落ち着くと、皆から言われてもっと役に立ちたいという理由から、自分達からやりたいと提案してくれた。
カウンセラーには年齢制限もなくて、資格なしでも名乗ることが出来る。
それでもちゃんとしたカウンセラーになり、苦しんでる人を助けたいと簡単では決してないけど、資格を取るために勉強して3ヶ月程でクリアしていた。
仕事時間は二人で話し合った結果、朝にのあさんでお昼頃はどぬ、考え事をすると悪い方向に向かいやすい夜は二人で行うという感じに決まった。
勿論毎日ではなく、なるべくホワイトを目指しているので、土日祝は休みという風に判断した。
プルルルル……ガチャ
na「はい、カラピチ探偵事務所です。……勇気出して電話してくれてありがとう」
『あの…………私今まで頑張って生きてたんだけど……でも本当はずっと死にたくて……でも…怖いんです。死ぬのが怖いんです。』
na「うん……そうだね、怖いよね」
『死んじゃった方が楽なんじゃないかって……ずっと思ってるのに……死ねなくて……情けなくて……悔しい……ぐすっ』
na「そっかぁ……苦しいよね」
『私が中学生になった時に虐めとか虐待とか…………っ…………れっ、レイプとか……色々あって、だから死にたくて……ポロポロ』
na「うん、怖かったよね……頑張ったね」
『誰にもいわなぃでください……脅されてるんです……言ったらダメって、きっと言ったら私の人生終わっちゃうっ……ぐすっ』
na「勿論誰にも言わないよぉ……?」
『ぐすっ……ポロポロ……死にたいけど……でも殺されるのは怖い。……ごめんっなっさい……グスッ』
na「怖いよね……生きていて凄いよ……」
『ぁ……ぐすっ……ぅう……うわぁぁんっっ……ポロポロ』
na「よく頑張ったね」
na「それじゃあ……またお話しにきてね」
『……次はもっと話す……』
na「うん、ありがとう……沢山お話ししてくれるの待ってるね」
『バイバイ』
na「うん、さようなら、!」
……ガチャ
基本的にお話しをしてくれる人は30分から一時間の間に自分の気持ちや、今の状況を話してくれる。
途中で黙ったまま20分ぐらい待つこともあるし、掛かってきたと思ったら切られるなんてこともある。
そもそも鬱の時や苦しい時に電話を掛けるのは、かなり勇気がいるし……普通に怖いと思う。
だからこそ私は始めに勇気を出して電話をしてくれてありがとうと、毎回言うようにしている。
私がずっと話すと相手が緊張したり、タイミングが掴めなくなる可能性があるので、基本的には相槌のタイミングで話をするけど、その言葉 だけは毎回伝えるようにしている。
電話をしてくれた人は話し終わった後はふわふわした話し方になる人や安心した声の人や笑って会話をしてくれる人もいる。
とりあえず皆安心してくれているので、こちらとしても嬉しい限りだ。
dn「お疲れ……そろそろ代わるよ」
na「うん、ありがとう……じゃあお願いしまぁす」
dn「はぁい」
今日の人数は五人で、私 どぬくさん もふくん ゆあんくん じゃぱぱさんで仕事をこなしている。
ガチャ……バタン
ya「ただいま~ご飯買ってきたよ」
mf「お腹空いたぁ」
jp「おぉ、やったぁ」
na「どぬくさんに渡してきますね」
トコトコ…コンコン………ガチャ
na「……」
電話中に私達で話すと相手の話が止まってしまったり、相談者が緊張してしまうので周りの音は小さめに、お話し中はご飯等は近くの机に置いてなるべく早めに出ていくのがルール。
dn「うん、凄いよ……頑張ったんだね」
……パタン
いつも通りなのにやっぱり話せないと、空白感が否めず気分が落ち込んでしまう。
それでも前を向いて歩かないといけない時は、少しだけ気を緩めて自分を甘やかしていつもより自分を大切にしてあげないとね。
勿論探偵だから気を緩めすぎちゃ駄目だけど、ずっと気を張って疲れたままよりは案外休みつつが良いからね。
……はぁ……
mf「お帰り~」
ya「のあさんどれ食べる?」
ur「これなんて可愛くね?」
「ほんとだね……買おうか」
ur「んふっ……いっつも買ってるじゃん、金無くなるよ?」
「うりくんの為なら安いもんだよ!」
ur「そう?んなら良いけどさ……俺心配だもん」
「俺のこと好きすぎじゃん」
ur「ったり前だろ」
俺は探偵の仕事がない日は基本的に、レンタル彼氏をしている。
別に何かある訳じゃないけど、普通に欲求不満?とか……とりあえず遊びたいみたいな感じ。
買い物だって無理に強制しないし、意外と優しいんだよ?
まぁ、お互い遊びだと思ってるだろーけど。
ur「次あっち行こ?」
「うん、えへへ」
ur「じゃあ此処で……三時間なんで6000円だね…大丈夫?」
「うん、!うん!大丈夫だよ……次はもっといっぱい話したいな」
ur「そか、また遊んでね」
「じゃあ……はい、これ」
ur「……んっ……おっけ、そんじゃ…さよなら」
レンタル彼氏 彼女は比較的安全に稼げるので人気だし、遊びの延長みたいに考えればかなり楽しい。
変態もいるけどそういうのばっかじゃなくて、話がしたいとか一人じゃ入りにくい店に一緒に入って欲しいとか、デートをしてみたいとか色々と理由はある。
最近ではおすすめのデートスポットを教えて欲しいとか、彼氏を喜ばせるにはどんなのが嬉しいのかみたいに相談するために利用する人もいる。
まぁ、どんな理由でも問題ないし、探偵としては会話には楽しいと感じる話し方や、相手の心理を探るのも重要でその練習にもなる。
こういうのが普通にできないと、危険な時も気付けないことが多くなる。
そもそもレンタル彼氏はあくまでデート……つまり偽物の彼氏として会う人で、そういう関係になるのは別に問題はないけど無理やり行うのは、普通に犯罪で訴えることができる。
苦手な人を相手しないといけない時もあるし、変な噂を流されたり指名がないと儲からないとか色々とデメリットはあるけど、ほとんど趣味みたいな感じでやってるし、噂なんかにはめっぽう強いので、俺にはデメリットがほとんどない。
ur「とりあえず……家帰ってゲームでもしよ」
jp「じゃあ頑張ってな……」
na「は~い、お疲れ様でーす」
dn「じゃっぴ気を付けてねぇ」
jp「おう……」
ガチャ……バタン
いやさぁ分かってるけど……やっぱ ちょっと心配だなぁ……
大袈裟に言ってるつもりはないけど、みんなの為になら死んでもいいくらいに思ってる。
jp「……はぁ、俺頼りないもんな」
いつものように複雑気味の建物を歩いて外に出た後、コンビニに寄ってアイスと晩御飯を買う。
家に帰ってとりあえず晩御飯を温めて、ご飯を食べながらYouTubeを見る。
最近ハマってるのはゲーム実況で、よく動画を観ながら寝落ちしてしまうことが多々ある。
風呂には大体週三回位入ることが多分多い。
正確には測ってないから分からんけど、そんなに毎日入る訳じゃない。
さすがに今日は入るか……
ただ、依頼人から浮気調査やその他諸々の調査をしていると男女の生活面も見えてきて、女性の方が風呂に入る日数が多くて、デートの前日は自分磨きを頑張る人が多いから、男が女性に対していい匂いとか、いつも綺麗で清潔って幻想を抱いてしまうのは女性側の努力の結晶だと思う。
だからこそ俺達男と女は大きくすれ違う時があり、女性側は受け入れた後、妊娠と出産までの期間が続き自身が死んでしまう可能性も当然あるという高いリスクを抱えている。
男の場合は自分の遺伝子を託してしまえば、その後は役目を終了して、気持ち良く終わることができ、女性に対して乱暴なことをしてしまうのも、そういうことの妄想が強く時間をかけてしまうのも、そんな風に男女で違いがあるからだと思う。
jp「……考えすぎて眠いわ」
ピロピロリン……ピピ
『君とは初めましてかな?』
ur「お前がゆあんを脅したやつか?」
『脅したとは人聞きの悪い』
ur「お前人じゃないだろ」
『まぁまぁ……今からそっちに行ってやる』
ur「……は?いいから早く依頼内容話せよ」
俺が小さな機械を見ながら話すと、後ろから気配がして振り返える。
バッ……
『初めまして……君に依頼したいのはね』
ur「は?見えねぇんだけど」
『恐がらなくて大丈夫だよ?依頼内容はコイツだ……とりあえず頑張ってね』
ur「どいつだよ……暗くて見えねぇー」
『……』
スリッ……
ur「んっ……あ”ぁ?何すんだよ」
ギュウウ!!!……
ur「い”っ……あ”ぁっ!」
『口には気を付けろよ?ボソッ』
ur「んあっ……ぇ?はぁ、はぁっ?? 」
俺が瞬きをするとソイツは居なくて、部屋も暗くなかった。
今でもジンジンと痛むソコを落ち着くまで待った後、机に丁寧に重ねて置かれた紙を見てそれが依頼人とターゲットの資料だと気付いた。
ur「……チッ……めんど」
俺は軽く目で文字を追った後、外の暗闇に向かって歩き出した。
今の季節は秋に変わる頃……夜はコオロギ、スズムシそれかマツムシ秋を代表する鳴き声が、絶えず木霊する。
まだ残暑が抜けきれてないのか、じわっと暑いのがイライラを掻き立てる。
殺すなんてどうやったら良いのか分からんしとりあえず聞いたら、この機械のような物を首に当て、そのまま上に引っ張るらしい。
……は?
まぁ、よく分からんが殺らなきゃいけないのは変わんないので、ターゲットの家に向かった。
仕事柄忍び込んだり後をつけたり何てのはお手のもの、簡単に警戒をすり抜けてターゲットに近付く。
……現在地は大人の遊び場でターゲットと仲良く会話をしている。
ur「やっぱ女好きっしょ?」(なんか……楽勝だな)
「うっせ、てか馴染みすぎw違和感仕事しねぇわww」
ur「マジ?」
「てかアイツ可愛くね?」
「お前行けよ~wワンチャンあるかもよ?」
「……っ……行かん!」
「迷ったなw」
ur「ひよってるわwwだっせ」
とりあえず仲の良い友達と連るんでたんで、軽く酔いそうなとこに誘導して、チカチカと蛍光ライトの光るいかにもな店に入る。
「まじでおれわるくねぇもん」
「お前飲み過ぎw」
「コイツ吐きそうだし置いてかね?」
「良いね!それ……じゃあお前!」
ur「ん?」
「コイツよろしく~」
ur「うっわダル絡みしてくんじゃんw」
「じゃあなぁ……金は払っとくから頼んだ」
俺としては好都合な状況だけどこんなこともあるもんなんだな……こんなあっさりと
まぁ、いいや……とりあえずコイツをトイレにでも連れてくか。
ur「お前飲み過ぎだからトイレ行けよ」
「んーん……おまえもついてこい、!」
ur「へーい、ほらっ立って」
俺はターゲットの男をトイレに誘導して個室に入ると、周りの声や音がほとんど遮断される。
気の緩んでる男の首に機械を当てると、男は手放された人形のように力なく倒れてしまい、そのまま頭に向けて動かすと男は痙攣を起こした後に跡形もなく消えてしまった。
ur「……んだ、これ」
言われた通りに動いたけど自分からやったのに、死んでしまったのか消えて失くなってしまったのか分からず、手が震える。
目をぎゅっと瞑って冷静を取り戻そうと、呼吸を繰り返して、扉をそっと開け事前に確認したように辺りを見回す。
この店には防犯カメラが少ないので、とりあえず早めに店を出ることにした。
カランカラン……
ur「はぁ……マジかぁ」
俺はゆあんを庇って仲間に入ったことに後悔はないけど、やはりこういうのを自分が行ったと思うと冷静さを失う。
報告はこの機械ですると思うので、家に帰って部屋に戻る。
すると部屋の隅が黒くなっていき、暗闇の中にボヤッとした影が見える。
『おかえり、随分と早かったね?』
ur「いや、お前普通に居座ってんじゃねぇよ」
『上手く殺れたようだね……さぁ、こっちにおいで』
ur「何がさぁだよ、お前に近付きたくねぇんだよ」
『……おいで』
突然全身に雷が落ちたような……少し大袈裟だけど、そんな感じの電気が流れたと錯覚した。
ur「ぁ……ぁあ……っ……」
太もも全体がまだ痺れていて、腰と頭が怠くなり、俺はへなへなっと座り込んでしまった。
コイツが何をするか分からないため、辛うじて目を離さないでいるが、操り人形になったように自分の力では身動きをとることが出来なくなった。
ur「ひっ……ぁう……」
段々とはっきり自分が恐いと恐怖を抱いていることが、声や行動に明確に現れてしまい恐ろしいのか情けないのか涙が出てきた。
『泣かなくていいんだよ?……怖かったね』
ナデナデ……よしよし
ur「ぅ、……はぁ……ひぅ」
『さぁ、もう一度……』
『おいで』
ur「ぁ……うぅ”……///」
トテトテ……ギュゥ
『良くできたね……偉い偉い』
スリスリ……(首筋を撫でる)
ur「うぁ……んふっ”……やっ」
『アイツは生きる価値もない人間なんだよ……君がちゃんと始末してくれて良かったよ』
ur「……んん”……」
『ん?もっとかい?……可愛いね不安になったよね……急だったもんね?頑張った頑張った』
ur「……ポアポア」
『蕩けちゃったね?……そろそろ良いかな?』
ur「ん”……やだぁ」
『困ったなっ……ははっw』
全然困った声じゃないし……何だか眠くなってきた。
『……お疲れ様……明日からもよろしく』
ちゅっ……トサッ
ふわふわした頭の中で気持ちいいお布団が身体を包んで、さっきまで痺れてた体も軽くなって瞼は重くなった。