テラーノベル
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琥珀色の放課後、ステップを踏んで「とわ! またそんなところで寝て……風邪ひくぞ」
カサリ、とローファーのつま先が、屋上のコンクリートを叩いた。
呼びかけられた少女——日暮とわは、顔に乗せていたノートを退けて、眩しそうに目を細める。
「ん……あ、せつな。もう放課後?」
「そうだ。HR(ホームルーム)が終わっても帰ってこないから、またここにいるのだろうと」
呆れたようにため息をつくせつなは、ブレザーの制服をきっちりと着こなし、肩にはバイオリンのケースを背負っている。一方のとわは、ネクタイを少し緩め、スカートの下に黒いスパッツを穿いた活動的なスタイルだ。
現代の高校に通うようになって、1年。
戦国時代での戦いの日々がまるで夢だったかのように、2人は普通の(ちょっと身体能力が高すぎる)女子高生としての日常を送っていた。
変わるもの、変わらないもの
「見てよせつな、今日の現国のテスト。結構頑張ったんだよ」
とわが差し出したプリントには、綺麗に「85点」の文字。
「……フン、まあまあだな」
「冷たいなぁ! 昔に比べたら、現代の言葉もだいぶ覚えたでしょ?」
嬉しそうに笑うとわの後ろを、せつなは一歩引いて歩く。
せつなは、高校に入ってから「器楽部」に入部し、バイオリンの腕をさらに磨いていた。戦国時代で奏でていたあの切なくも力強い調べは、今やコンクールの常連として学校内でも有名だ。
「そういえばせつな、今日の部活は休み?」
「あ備品の弦を買いに、少し遠くの楽器店まで行く。……とわ、お前も来るか?」
「行く! 行く行く!」
せつなの誘いに、とわは犬の尻尾が見えそうなほどブンブンと頭を振った。
離れていた時間を埋めるように、とわはいつでもせつなの隣にいたがったし、せつなも口では面倒くさがりながら、決してとわを突き放すことはしなかった。
街角のハプニング
駅前の賑やかな商店街。
楽器店での用事を済ませた帰り道、2人はクレープ屋に立ち寄った。
「現代の甘味は、本当に飽きないな」
生クリームとイチゴが乗ったクレープを、せつなは珍しそうに、でも嬉しそうに口に運ぶ。
「でしょ? はい、せつな、口についてる」
とわが自然な手つきで、せつなの頬のクリームを指で拭った。
「なっ……! 子ども扱いするな!」
真っ赤になって怒るせつなを見て、とわはケラケラと笑う。
その時、近くの路地裏から「待てコラぁ!」という怒鳴り声と、悲鳴が聞こえた。
見ると、柄の悪い男たちが、他校の女子生徒を囲んでいる。
「……せつな」
とわの目が、一瞬で「戦士」のそれに変わった。
「……フン。放っておけば、またお前が一人で突っ込んで大騒ぎにするからな」
せつなはバイオリンケースを近くのベンチに置くと、制服の袖を少しだけ捲り上げた。
双子のコンビネーション
「ちょっと、そこの人たち。女の子が嫌がってるよ」
とわが凛とした声で割って入る。男たちは「あぁ? なんだお前ら、聖ガブリエル学園の……」と、2人の制服を見て冷やかすように一歩踏み出してきた。
だが、次の瞬間。
男の手がとわの肩に触れるより早く、とわは相手の腕を掴んで鮮やかに一本背負いを決めた。
ドシン! とアスファルトが揺れる。
「な、何ぃ!?」
慌てて飛びかかってきたもう一人の男の足元へ、せつなが鋭いローキックを叩き込む。
「よそ見をするな」
せつなの容赦ない一撃で、男は崩れ落ちた。
わずか数十秒。武器(刀)を持たずとも、2人の息の合った連携と人間離れした身体能力の前には、不良たちなど敵ではなかった。
「ひ、ひえぇぇ!」
捨て台詞を残して逃げていく男たちを見送り、2人はふぅ、と息を吐く。
「大丈夫だった?」
とわが他校の女子生徒に優しく手を差し伸べると、その生徒は目をキラキラ輝かせて「は、はい! ありがとうございます……! かっこいい……」と、赤面してとわを見つめた。
「……相変わらず、無自覚に人をたらし込む奴だ」
せつなは呆れたように呟きながら、バイオリンケースを再び背負った。
繋いだ手のあたたかさ
夕暮れ時、オレンジ色に染まる帰り道。
「現代でも、やることはあんまり変わらないね」
とわが苦笑いしながら言う。
「お前が首を突っ込みすぎるだけだ。……だが、怪我がなくてよかった」
「せつな……。うん、せつなが一緒にいてくれたから、百人力だよ!」
とわは、せつなの左手をぎゅっと握りしめた。
せつなは一瞬、驚いたように目を見開いたが、今度は振り払わなかった。少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らしながら、静かにその手を握り返す。
戦国時代を生き抜き、現代という新しい世界で高校生になった双子。
制服を身にまとい、勉強や部活に追われる日々の中でも、2人の間に流れる絆の強さは、あの頃と少しも変わらない。
「明日も、一緒に学校行こうね。せつな」
「あぁ。遅刻するなよ、とわ」
沈みゆく夕日に向かって、2人の影が仲良く並んで伸びていった。
コメント
1件
読んだ読んだ!戦国から現代にタイムスリップしてきた双子の女子高生、最高じゃん🔥 屋上で寝てたとわをせつなが起こす冒頭からもうカッコいいわ。普段はクレープ食べて和んでるのに、不良相手に一瞬で戦士の顔になるギャップ萌え〜。しかもバイオリンケース置いてローキック決めるせつな、渋すぎるだろ!最後に手を繋いで帰る夕暮れがもう…尊い。おバカな人、続きめっちゃ気になるわ!
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#ゾム