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2024年、俺が所属するマフィアの組織、梟谷。

そして俺には、尊敬する先輩がいる。

梟谷若頭の木兎さんだ。

俺がこのマフィアの世界に足を踏み入れたのも、俺が今生きているのも全部この人のお陰だ。

2010年、当時10歳だった俺は親から虐待を受け、家出をするも、当時の自分に稼げる手段などなく、野垂れ死にかけていたところを当時俺の一個上の木兎さんが拾ってくれた。

木兎さんは俺を背負い、自分の家まで連れて行ってくれた。

その最中、自分の家は危険なことをやっているようなところで、君も巻き込まれてしまうかもしれない、警察の方が良いかもしれない、と木兎さんは話してくれたが、ここで俺は死んだ身だ。木兎さんが救ってくれた命なら、木兎さんの為に使いたい。

そう言うと木兎さんは嬉しそうに口角を上げた。

木兎さんは俺の保護を、組長…つまり、木兎さんの親に必死に頼んでくれた。意外と、他人の俺にも組長や周りの人間は気さくで、俺は晴れてこの組で面倒を見てもらえることになった。


こんな話も、もう14年前の話。

昔の思い出に浸りすぎてしまった。

組のリビングからすぐのベランダにでて、木兎さんに誕生日プレゼントでもらったオイルライターでタバコに火をつける。煙が辺りを登ってゆき、星が沢山の美しい空に靄がかかる

木兎さんが、敵対勢力の所に向かって、もう5日は経つ。

何故、こんな事になったのか。

それは6日前のことだ。

小さな組の組長から突然電話がきた。内容はこうだ。梟谷のファミリーの3人を捉えた。返して欲しくば、若頭の木兎光太郎を連れてこい。殺すことはない。しかし、もしも来なければ、捉えた3人の命は保証できない…そんなものだった。その3人は10日前の仕事から行方不明になっている者達だった。俺たちマフィアは時に汚いこともするし、それ相応の事を受ける事だってある。仲間が死ぬなんてこともあるし、梟谷の組は日本の中でも5本の指に入るほど優秀な組織。正直、ここで若頭と言う木兎さんを素直に差し出すのは、皆反対していた。しかし、あの人は

「俺なら殺さないんだろ?なら俺、いくよ。」

そう言ったのだ。全員が止めた。若頭がもし、居なくなったら、そんな想像を皆していたのだろう。勿論俺も猛烈に反対をした。しかし、木兎さんはそんな俺の頭を撫で、

「安心しろ、絶対帰ってくるから。」

そう言った。

俺は、言葉を返すことが出来なかった。

「絶対、絶対、あの3人を家に帰すから」

そう言ってあの人は敵地へ1人で乗り込んでいった。



「赤葦」

突然、背後から名前を呼ばれる。この声は木葉さんだ。木葉さんは木兎さんと同い年で、よく器用貧乏なんて言われているが、凄腕の上司だ。彼なしに梟谷は回らないだろう。

「火ぃくれ、」

そう言い、火のついていないタバコを俺のタバコの先端につける。

「どうしたんですか、木葉さん」

そう問う

「木兎の件、落ち込んでねぇかなって、アイツに一番懐いてたってか懐かれてたのお前だろ。まあ、アイツが帰ってこねぇことは絶対無いだろうがな、あのバカ、意外となんでも1人で背負うからな。めんどくせぇし、幼稚園児みたいなのに」

「そうですよね、末っ子気質というか…」

「この前音駒のトサカの若頭に弄られてしょぼくれてた時とかめんどくさかったわw」

木葉さんと、昔の思い出話に花を咲かせる。

すると、突然木葉さんの携帯がなり始めた。

「あっ、ちょっとまって!呼び出しくらったからちょっとぬけるわ!」

木葉さんがそう言う。

「わかりました。」

「木兎の件、信じとけよ、アイツは絶対に帰ってくる。」

そう言いってから木葉さんは彼方に走って行った。

タバコを吸いながら空を見て黄昏ていると、どうしても木兎さんとの思い出が頭を過ってしまう。

意外にもあの人は幼くて、放って置けないような人だった。若頭と言う地位につき、実力もかなりのものながらも、みんなからの扱いはまるで末っ子のようだ。

そんな木兎さんが帰ってこなくて、皆の空気がピリピリしている。早く、早く帰ってきてくださいよ…

ピンポーン

インターホンがなった。そのとき、手が空いていた俺が、タバコをしまい、ベランダから出てリビングの扉を開けると、そこに人の気配はなかったが、代わりに、巨大な黒い袋が置いてあった。人間3人程度なら余裕で入りそうなサイズだ。

「なんだこれ…」

持ち上げてみると、とてつもなく重い。200キロ近くあるのでは無いか?到底俺1人では持ち上げられない。爆破物かとも思ったが、感触が違う。なんだこれ、まるで人間の体のようなーーー

やめておこう。一旦、他の人にもきてもらい、運ぶのを最重要にしたい。

声をかけると、5人程度がこちらにきてくれた。

一気に持ち上げ、中央部分のテーブルまで運ぶ。

ゾロゾロと人が集まり、15人以上がそこに集まった。

嫌な予感がしながらも、袋を開ける。

袋は三重になっていて、一袋目を開けた瞬間から、この世のものとは思えない異臭が鼻についた。後ろにも伝わったようで、背後にいた一個下の尾長が「うっ、」と声をあげる。

とんでもない異臭だ。この辺りから何人かは何が入っているのか、勘付いたのであろう。

中を開けて姿を現したのは、とんでもない異臭を放つ大量の肉塊だった。胃液が込み上げてくる。職業柄、死体やら、グロテスクなものを見ることもあるが、別格だ。

「これ……○○たちじゃ……」

誰かが、今回、敵組織に連れ去られた〇〇たちの名前を呟く。

肉塊の隙間から見えるうちの組織の制服、髪の毛、途端吐いてしまうものまでいた。

しかし、よく調べなくては、どうしてこの者たちが死んでいるのか?何故?木兎さんは?

木兎さんーーー

途端、息が苦しくなる。

もしもこの中に木兎さんがいたらーー考えるだけでゾッとする。しばらく袋の前で、固まっていたのだと思う。

そのうち、木葉さんと、任務から帰ってきた猿杭さんがこちらにきた。別室で話をしていたようだが、こちらの悲鳴や叫び声、とんでもない異臭でこちらに来たようだ。

「これ……」

猿杭さんが呟く。

「っ…一旦、全部取り出そう」

木葉さんがそう言った。そうして、俺たちはこの”中身”を取り出す事にした。

ある程度の耐性があった俺と木葉さん、猿杭さんで別室で確認する事になった。

別室に行き、一つ一つ、肉塊を集めて並べて行く。

驚くべき事に、肉塊の数は100以上にも上った。

所々に顔のパーツのようなものがある。

「うわっ」

そう木葉さんが声を漏らしたので近づいてみると、そこには頭があった。敵組織に連れ去られたファミリーの頭らしきもの、脳みそが飛び出し、顔が抉られ、歯は全てなく、ほとんど原型を留めていないが、このホクロの位置。間違いなく〇〇だ。

10日前まで、一緒に話していた仲間だったのに。

その後、残りの2人の頭部らしきものが出てきた。

一つは、頭部が縦半分に切断され、目玉がくり抜かれているもの。もう一つは中から爆発されたようなもの、これは、体の損傷が激しすぎて、誰かもよくわからなくなっている。どれも肉体の損傷が激しい。この者たちはどのようにして殺されたのか?

生理的吐き気が俺を襲う。

「これ、死んでから1週間近く経ってない?」

猿杭さんが呟いた。

「確かに…この腐り具合からして、確実に1週間以上経っているだろうな…」

木葉さんも口を開く。

は?1週間前には確実に死んでいる?なら、木兎さんは、なんのために?連絡が来たのは6日前、その頃には死んでいたと言うのか?頭が困惑する。では、木兎さんは?1人で敵勢力の所へ向かったと言う事なのか?なんの意味もなく?

頭が困惑する。

「赤葦、大丈夫だ。木兎は絶対戻ってくる。そう言ってたんだからな」

震えた声で木葉さんと猿杭さんが言う。2人の方が俺よりも木兎さんとの古い付き合いで、とても仲が良かったように見えた。お互いが、お互いのことを信頼し合っているような。

「この、袋の中に木兎はいなかった。絶対生きてるってことだ」

だから大丈夫、アイツなら、また、震えた声で2人は言った。

木兎さん、俺の恩人、大切な人。本当に、無事で居てください。お願いします。






ーーーーー


10日前に行方不明になった〇〇達が、まだ生きている。

その希望を胸に、俺は敵の本拠地へ向かった。

東北の一部を牛耳っている小さめの組、1人で行くなんて危険と赤葦達に止められたけど、俺が行けば助けられるかもしれない仲間を捨てるなんて、俺に出来っこない。

そうこう考えているうちに、敵の本拠地についた。インターホンを鳴らすと、強面の、身長が高い男が出てきた。俺が185センチあって、相手が10センチほど高いので、2メートル近いのだろう。

「梟谷の木兎光太郎さんですね!わざわざありがとうございます!」

男が腰を曲げながらそう言う。

「俺たちの仲間はどこにやった?」

俺がそう言うと、男は俺を奥の部屋に案内した。異臭が立ち込めるそこは、血まみれで、大量の拷問器具がある。

「〇〇達は?」

そう聞くと、男は黒いゴミ袋を指差した。瞬間、嫌な妄想が頭をよぎる。

「しっかりと、仲間のもとにお届け致しますよ」

そう言って、不気味な笑みを浮かべる男。

嵌められたーーー

やっぱり、俺にこの仕事は向いていなかったのかもしれない。大切な仲間を守れず、挙げ句の果てには罠に嵌められ…

銃を取り、逃げ出そうとした瞬間、途轍もない睡魔が襲う。

抵抗も虚しく、俺の意識はそこで途絶えた。




次に目が覚めた時には十字架の貼り付け台に括り付けられていた。脱出を試みたが、拘束が頑丈すぎて、どうも抜け出せる気がしない。

「おはようございます。光太郎さん」

ハンマーを片手に持った先程の男がまたしても不気味な笑みを浮かべて、こちらを見つめる。

「お前っ……!〇〇達を…!」

「ああ、そうですね、今から丁重に貴方の組のところにお返ししますよ。でも…このサイズだと少し大きいのでもう少し細かくしましょうか」

そう言い、男は黒いゴミ袋から3人の遺体を取り出した。

「やめっ…」

そう言うと同時に男はハンマーを1人の頭に直撃させた。

ガンッと頭蓋骨とハンマーが当たる音がする。頭蓋骨が丸見えになり、傷つき、割れた箇所からピンク色の脳みそが見える。

「てめぇっ……やめろ!」

男が〇〇の遺体の舌を縦に3センチほど切り、引きちぎる。

〇〇の遺体にはこれを始める前から腑が引き裂かれていたり、酷い損傷がたくさんあった。きっと、苦しみながら殺されたのだろう。死んでなお、こんなことをされるなんて、俺は精一杯の抵抗をしたが、拘束がキツすぎて身動き一つ取れない。

「まだまだ2人もいるんですから、そんな酷い顔しないでくださいよ、殺意も丸見えですよ」

そう言うと男は切断されたもう1人の頭を空中に投げ、チェーンソーで縦に切断した。両方の目玉が飛んでゆき、地獄絵図だ。

「やめ…〇〇!!」

体も顔をのぞかせる。こちらもまた、損傷が酷く、下半身がぐちゃぐちゃになっている。

「これ、凄いですよね。あっちにあるでかいシュレッダーでゆっくーり砕いて行くんです。中々死ねないから、一番苦しかったんじゃないですかね?多分足が削られ始めて10分は地獄の時間が続いたと思います」

そう言って笑う男に、俺は生理的嫌悪を覚る。

「最後まで、木兎さん、貴方の名前を呼んでいましたよ。助けてー助けてーって、だっさいですよね〜」

怒りで爆発してしまいそうだ。

俺の仲間は死んで尚侮辱されなければならないのか?

「最後はこれ!まだ生きているんですよ。右足はないですけどね」

そう言って袋から〇〇が出される。

「木兎さん……助けて…」

か細い声でそう言う。

「これ、きっと面白いと思いますよ?こいつの中に爆竹が入っているんです。」

よく見ると、〇〇の腹は切り裂かれて縫われた跡がある。

「爆発しますよ〜3」

「助けて、木兎さん、お願い助けて、死にたくない、死にたくない」

「2」

「いやっ、助けていやだ、いやだ、」

「1」

「木兎さ…」

「ぜーーろ」

「〇〇……?」

思わず声が出る。

最後に「木兎さん」と叫びながら〇〇は体の内部から爆発した。〇〇の血肉が俺の体に飛んでくる。

手にグチュっとした食感の何かが飛んできている。これはなんだ?薄々察しながらも、頼むから、違う物であってくれ、と淡い希望を抱き、動きにくい首を動かして手のひらの上を見た。手のひらには〇〇の目玉がくっついていた。


「うあつ、つ、えあ」

声にならない嗚咽をあげる

白かった壁は〇〇の血肉で赤や白に汚れ、酷い異臭を放っている。

「どうです?少しでも貴方の戦意が削がれたら…と思ったのですけど、びっくりしました?」

困惑で頭が動かなくなる。

何故、こんな目に?俺もこうなるのか?…最後に赤葦達ともっと話しとけば良かった。俺がバカだから、敵の策にまんまとはまって、やっぱり、かしらなんて向いてなかったのかなぁ?

「ハハハ、今自分も同じ目に合うかも…なんて思ってました?貴方にはもっと酷い目に遭ってもらいますから」

そう男が言うと、その男は磔にされた俺の腹を思いきり、壁にかかってあった火縄銃の台かぶ部分で殴る。

「うぐっ…あっ?!ゴホッうぐぅ、」

当たりどころが悪かったようで、咳き込んでしまう。

男が俺の髪を掴み、顔を近づける。

「貴方の顔、綺麗ですよね。梟みたいで、クールですけど、愛嬌もある。切り取って飾っておきたいものです」

そう言い手を離す。セットをした髪が落ちて目に入る。



「さて、話は変わりますが、何故貴方の部下を攫ったと思います?」

「えっ?」

「分かります?」

心当たりは一つしかない。

「そっちの組と、乱闘になった時、こっちが勝ったから?」

「不正解ですね」

そう笑いながら言うと、男はまたしても火縄銃で俺の腹を殴った。

「んぐぅ!っ…じゃあ、なんで」

「貴方の事が好きなんです。」

尚更何故、このような行為に及んだんだ?意味がわからない

「貴方に振り向いて欲しかったから、でも、手が届くわけないですよね。なんたったって貴方は男で俺も男。組もちがけりゃ、地位も違う。貴方の部下を殺す事で、少しでも貴方に振り向いてもらえると思ったんです」

は?じゃあなんだと言うのだ?〇〇達は、あの3人は俺のせいで死んだと言うのか?

最初から最後まで俺のことを尊敬してくれ、楽しく話をしたあいつらは俺のせいで、人生の幕を閉めたのか?俺のせいで、俺のせいで。自分に嫌悪感を抱く。

「いい顔ですね、ほら、こんなに興奮してきてしまった。」

そう言いながら男は自分の膨れ上がった股間を見せてくる。気持ち悪い。気持ち悪い。

「私、昔から極度のサディストで、昔から、好きな人の苦しむ顔でないと勃たないんです」

そう言うと男は俺の腕を服越しで撫でた。

「この美しい手足を切ったら、貴方は、どんな顔をしてくれるんでしょうね」

嫌な予感がする。こいつは本当にやってのける。嫌だ。

〇〇達を死なせてしまったのは俺のせいだ。戦うくらいしかできない俺にできることなんて、暴力ごとだけだ。〇〇たちの仇討ちもしなければならないし、頭として、もっと、仲間をもう死なせないように、やらないといけないのに。

どうにか脱出できないかと思考を回らせる間にも、男は切断用の道具を用意している。

「さて…お待たせしました。どれで切って欲しいですか?」

そう言って男が見せた物は、ノコギリ、ハンマー、包丁、腕用ギロチンだった。

もう、覚悟はできている。

梟谷の頭らしくせめて、屈せずに死んでいく。

「ふむ…何も言わないなら、うーんそうだなぁ…とりあえず最初ですし、王道にノコギリといきましょうか」

そう言うと男はノコギリを持ち、俺の前に近づいてきた。そして、ゆっくり腕に当てる。

腕に、冷ややかな鉄の温度が当たる。そして男は、ノコギリを上下に動かし出した。

プチップチと肉の切れる音がする。

「うぐっ…あうっ…っ……」

あまりの痛みに嗚咽が漏れてしまう。ゆっくり、じっくり自分の腕と体が離れてゆく。骨までいった。ギコギコギコギコ骨を切る音が脳に響く。

男は、下半身を膨らませながら楽しそうに俺の腕を切っている。骨の殆どが切れた音がする。傷口が熱い。焼けそうで、けれど、〇〇達はもっと辛い目に遭ったはずだ。俺が耐え切れずにどうする。「ぐっ…うっ…」ブチブチブチと骨が切れ、跡僅か、ギリギリで腕と体を繋いでいる肉が引き裂ける音がする。地獄の時間。きっと数分なのだろうが、何時間にも、何日にも思える程、これがあと三本…ボトリと、腕の落ちる音がする。

「あれぇ、反応薄いですね、声も全然出さないし、初めてです」

「俺、結構、タフだから、ね」

「息、切れてますよ笑タフだから…ねぇ天下の梟谷若頭がどマゾなんて、死んだ仲間も報われませんね」

「てめぇ…俺の仲間を、侮辱、するな」

「そんなに辛そうに息を切らして言われても、なんの脅しにもなりませんよ」

「まだ三本もありますからね。気長にいきましょうか」

そう言い、男はノコギリをチャッカマンで熱している。

「次は足ですよ。頑張ってください」

そう言い、紅く染まったノコギリとハンマーを両手に持ってくる男。

「はーい頑張ってください」

俺の足にノコギリを添える。燃えるように熱い。熱い。熱湯をかけられたときのようなそんな、熱い、熱い

「息、荒いですよ?痛いですよね。一旦離してあげますよ」

そう言い、男はノコギリを俺の足から遠ざけるが、熱したノコギリに俺の皮膚がくっつき、取れなくなってしまった。そこで男は無理やりノコギリを引っ張ってしまった。皮を強制的に剥がれ、うっ、と声が漏れてしまう。

「休憩はできましたか?もういきますよ」

男が笑いながら言う。最初からこれが目的だったのであろう。足に再びノコギリが当たる。今回は皮膚が2枚程剥け、より一層焼ける痛みを感じる。

「あぐあっ…うぐっ、っ…」

また、嗚咽のような声を出してしまう。

「流石、これでまだ叫ばないなんて、でもこれならどうですか?」

そう言うと男はノコギリのノコ身部分を思い切りハンマーで叩いた。

「?!」

足に100度を超える熱さのノコギリが入る。

「うぐっあ、ぐっ…っ…」

熱い、中から焼けてゆく痛みは先程と比べ物にならない。

そうしてまた、男はトンカチを振り下ろした。その瞬間、ギリギリ繋がっていた足が、ゴトリと落ちた。

今すぐにでも悲鳴をあげて、助けを求めたい。けれど、こんな奴にそんな姿を見せるなんて死ぬより嫌だ。

「なんですか?その反抗的な目…やっぱり貴方は私の選んだ人だ…美しい。もうそろそろ、私の息子を慰めて欲しいところですが、逃げ出されたくはないのでね、あと二本…そろそろ、可哀想になってきたので、楽に落としてあげますよ」

そう言うと男は小さなギロチン…手足用のギロチンを持ってきた。一時的に鉄製の首輪をつけられ、磔から降りる。降りる時、いきなり高速器具を外せられたので、足の傷口から勢いよく地面へ落ちる。

「うぐっ…あっ…」

痛い。残っていた骨が肉に突き刺さったようで、とにかく激痛がする。

「じゃあ、ここに腕を置きます」

そう言って男は俺の腕を持ち、ギロチンの刃の下に置いた。瞬間、ギロチンの刃が落ち、痛みも感じぬままに呆気なく右手が切り落とされた。

痛みを感じなかったのも束の間、切り落とされ、腕が落ちた音がしてすぐ、激痛が襲い始める。

三本の四肢がなくなった。もう、日常を過ごすことなど不可能だ。もう、仲間達の頭を撫でることもできない。好きだったことも全部出来なくなってしまう。俺の弟子も、友人も、部下も仲間も、こんな俺を見てどう思うのだろうか?こんな、汚れ仕事しか脳がなかったのに、それさえ出来なくなってしまっては、生きる意味など無いのではないか?

「ぼーとしないでくださいよ」

男はそう言い、先程切断した腕の断面に指を突っ込む。

途端、途轍もない激痛が俺を襲った「うぐあっ…っっっ」

男はそんな俺を見て恍惚な笑みを浮かべた。

その後、同じようにして、残った一本の足を切断された。

完全に、四肢を失ってしまった。これほどまでの喪失感があるのだろうか?

男は、もう立てずに、這いつくばった俺を見てニヤリと微笑んだ。

「纒足というものをご存知ですか?」

痛みで頭が回らない。纒足?赤葦たちと昔、テレビで見たような

「纏足とは、前近代の中国で行われた、女性の足を布で縛り小さく変形させる慣習です。纏足は美と女性らしさの象徴でした。」

「なんの話だ…?」

「まあまあ、些細な雑談のようなものですよ。昔から、不自由で、家から出てこれないような人に、惹かれてしまうんです。みな、この不自由さを美しいと思うんです」

意味の分からないことを言いながら、俺の方をじっくりと見る。

「やはり切ってよかった!!貴方の美しさはワンランクアップした!!その不自由な体!誰かに助けを貰わないと生きていけないなんて!…失礼、興奮しすぎましたね」

気持ち悪い、気持ち悪い、四肢を切っていたときの男の顔、まるで面白い玩具を見つけた幼児のような、無邪気さ、気持ちが悪い。それにしても痛い。手足がない。もう、赤葦を撫でてやることもできないなーーあいつ、しっかりしてるけど、まだガキだし、もっと沢山ふざけたり、遊んだりしたかったんだけど。感情に浸っている間も、時折手足の傷口に風が当たり、焼けるような痛みが襲う。

すると、しばらくだんまりしていた男が口を開けた。

「さあ、美しくなった貴方とやりたいことがあるのです。」

「やりたいこと……?」

火炙りでもするのだろうか?俺を〇〇みたいに爆発させるのだろうか?死ぬんだろうか?

「…貴方を殺したりなんてしませんよ?先ほど言った通り、私は貴方のことが好きなのですから。」

「貴方の全てを知りたい。貴方の苦痛に歪んだ顔が見たい。貴方が声を出す様子が見たい。」

何を言っているのか?

「痛みに強くても、快感には強いんですかね?」

そう言い、男は俺の服をあげ、俺の腹を撫でる。

男は俺のズボンを脱がし始めた。俺、男だよ?なんで、嫌だ。気持ち悪い、気持ち悪い

「やだっ…!」

そう言うと、男は何も言わず、俺の舌を引っ張った。

「?!」

男が、俺の舌を強い力で引っ張る。千切れそうだ。

「やっ…うぐ」

今はない腕で、精一杯の抵抗をする。しかし、抵抗は虚しく、俺の短くなってしまった腕では、とてもじゃないが男に届きはしない。

男が俺の舌から手を離す。

「ゴホッ、かほっ、っ〜!」

男が俺のズボンとトランクスを脱がす。時折、服と男の指が傷口にあたる。どうもこの激痛には慣れず、声が少し漏れる。

「さて、始めようか」

男の声が聞こえる。


男は、俺の後ろに座り、服を取られて顕になった陰茎を愛おしそうに触る。

「美しい…やはり、貴方が世界で一番美しい。」

男のざらざらと乾燥した皮膚が俺の秘部を触れる。なんとも気持ちが悪いものだ。しかし、先程まで受けた痛みと比べると、嫌悪感だけで済むだけ、まだマシだ。

「萎えてますねぇ…」

そう言いながら男は尿道付近や裏を、人差し指でなぞった。滑稽なことに、他人に触られたことのない部分を触られ、こんな状況でも声が漏れそうになってしまう。目の前には無惨に散った仲間がいるのにも関わらず。

「あれっ…ちょっと勃ってるんじゃないですか?」

「うるっ…せぇ…」

本当に自分が嫌になってしまう。自分から目を背けるように横を見ると、無惨に殺され、屍となった部下と目が合う。

本当に死んでしまいたい。

もう、このまま辱めを受け、人間として死ぬ前に、今、死んでしまった方が楽なのでは?

そう思い、歯で舌を噛み切ろうとした瞬間

「ダメですよ」

という男の声と同時に、口の中に後ろから片方の男の手が入れられる。

その手は血は血の味がして、肉の塊のようなものも付いている。きっと、俺と、爆発した〇〇の血肉だろう。一気に吐き気が込み上げ、俺の口から吐瀉物が出てきた。

「あれれ、吐いちゃいましたか。すみません。手を奥まで入れすぎたんでしょうか?でも、貴方が自死なんて選ぼうとするのが悪いですよね」

そう言うと、男は俺の吐瀉物がついたままの手で、俺の秘部をまた弄り始めた。

「ん、っ」

少し、声が出てしまう。死にたい。もう、殺してくれ。

「先端、汁みたいなのでちゃってますよ?仲間に見られて…四肢を切られて、敵に、しかも男に弄られて感じちゃうなんて、ど淫乱なんですね。本当に貴方の為に死んでいった仲間達が哀れで堪りません笑」

今すぐにでもこいつを殴り殺してしまいたい。しかし、いくら手を伸ばしたって、男には届きはしない。

「んっ…はっ、」

突然、男が俺の陰茎を激しく上下に擦り出す。その刺激に俺は驚き、

「…出ちゃいましたね。」

そう言い、男が笑う。

「本当に出してしまうなんて!アハハハハ!!」

俺の中で、何かが切れる音する。

「うわあああああん」

こんな歳にもなって、大号泣だ。今まで、必死で守り抜いたプライドが、全て崩れ去る。

今の俺は相当みっともなく、どうしようもない奴なんだろう。

俺を頼ってくれた部下も、親父も、友人も、弟子も、今の俺を見たらどう思うのだろうか?きっと、哀れに思うだろう。馬鹿な奴だと呆れるだろう。

もう嫌だ。死にたい。死んでしまいたい。

「アハハハハ面白い!面白い!いいねその顔!!四肢を切っても、折れなかったその目が、簡単に折れてしまった!!アハハハハ、その顔が見たかったんだ!美しい!そのプライドを全部捨て、仲間の期待を全て裏切り、幼児のように泣くその姿!!」

そう男は嬉しそうに叫ぶと、自分の固い股間を、俺の精子で濡れた尻に押し当てる。

「さあ、美しい貴方と繋がる時がやっときた……それでは、私もそろそろ脱いで…」

そう男が言った瞬間、こちらに走る音が迫ってくる。

「もう来たんですか…」

男が小声で呟いた。

扉が勢いよく開くと同時に、「木兎さん!!!」という赤葦の声が聞こえ、こちらに走ってきた。

「木兎さん!手足がっ?!」

赤葦が涙で顔はぐちゃぐちゃで、手足がなく、下半身が出たままの俺を抱えて言う。

「あかあし…?」

「木兎さん!!意識っ…とりあえず、救急車をっ!!!」

そう言いながら赤葦は空いている片手で携帯を取り出し、どこかに電話をした。

赤葦の体温が冷えた体に伝わり、眠たくなってきた。

「木兎さん!木兎さん!」

赤葦の声が薄れていき、俺の視界は黒く染まっていった。

「んんっ…」

次に目が覚めた時、一番最初に見えたのは病院の天井だった。

無いままではあるが、手足の痛みがだいぶおさまっている。あの後、病院に行ったのであろう。横には、椅子に座り、うとうととしている赤葦がいた。

俺がベットから起きあがろうとすると、赤葦はハッと俺の方を見た。

「木兎さん……」

そう言いながら赤葦は涙目で俺の顔を見つめる。

「よかっです、本当に、俺、木兎さんがもし、めざめかったらって、」

赤葦が目を赤くし、鼻を啜りながら言う。

「ごめん、心配かけて、俺のほうこそ、ごめん。もう、仕事できないし、あんなみっともないところ見して、」

精一杯の笑顔でそう言う。すると赤葦は泣きながら抱きついてきた。

「そんなこと、ないです。木兎さん、はかっこよくて、俺の憧れです。代わりっこ、ないです。」

そういうと、赤葦は俺を抱きしめる力を強くした。

俺は途端、また涙が溢れかえってきた。あそこで、枯れたと思ったのに。

そのあとは、いい大人が2人でボロボロ泣き続けた。

数十分後には、赤葦が呼んだのであろう組のみんなも俺たちの元に泣きながらきた。

大の、ゴツい大人達が、病室で泣いている、側から見たらとてもシュールな状況だ。

皆、優しくて、俺の頭を撫でて、辛かったなって慰めてくれた。仕事がもうできない、と語った俺にも、お前が生きている。それだけでもういいんだ。と言ってくれて、自死なんて選ぼうとした自分を殴ってしまいたい。こんなに、俺のことを思ってくれて、俺を、”木兎光太郎”を必要としてくれるいい仲間がいるじゃないか。

俺たちはこの後も、何時間も泣き続けた。




それから半年後、俺は退院することができた。

手足は直ることはなかったので、車椅子生活だ。赤葦が率先して俺の面倒を見てくれて、最近はずっと付きっきりになってくれている。

俺を嵌めようとした男は、もう逃げてしまったようで、足取りが不明のようだ。しかし、最近は、また、以前のように組のみんなや、他の組の友人などとも話せるようになってきた。しかし、あの事が原因で、あの男に似た人物を見たり、下半身を触れられると、時折、過呼吸を起こしてしまうようになった。

それでも、周りは皆、優しく俺に接してくれる。特に赤葦には、本当にお世話になっている。最近は、俺が不便だろうと同居までしてくれた。

赤葦には本当に感謝しかない。あいつがいなければ俺は、今頃死んでいたかもしれない。

今度の赤葦の誕生日は盛大に祝って、日頃の感謝を伝えよう。

楽しみだ。




ーーーーーー





「赤葦組長。言われた通りにやりましたよ」

部下が言う。

「ありがとう。お陰で、木兎さんと一緒にいる機会が増えたよ。」

「それにしても、組長は酷い人だ。命の恩人をこのような目に合わせて、何食わぬ顔をしているなんて」

「ははは、そうかもね。酷いのかもしれない。でも、こうでもしないと、あの人が俺に依存なんてしてくれないからね」

そう、俺は木兎さんのことが好きだ。だから、俺なしでは生きていけなくしたかった。わざわざ、俺の部下に頼んで、このようなことをした。全て、この為だ。

俺は、実は小さな組の組長をやっている。梟谷にいる時間はとてもたのしかったが、何かが足りなかった。14年前の胸のときめき。あの人に依存してほしい。あの人の色々な顔を見たい。

そんな思いで、俺の部下の中でも、木兎さんに少し気が合ったらしいコイツを使って、少し木兎さんを痛めつけるように頼んだ。

「それにしても、俺、木兎さんとえっちしたかったんすけど、ナイスタイミングできましたね組長。」

「お前に木兎さんが汚される様子なんて見たくないからね。」

「酷い笑」

「でも、ありがとうね、お駄賃は弾ませとくよ。」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、俺は木兎さんの元に帰るから。あの3人の死体処理はやっといてね」

「あっちこちに飛び散ってるからめんどくさいんですけど、」

「あいつらの殺し方、結構いい感じだったじゃん。適度に辛そうで。まあ、俺と木兎さんのために死ねて光栄って感じかな。」

「ははは」

「じゃあね、バイバイ」

そう言い、俺は愛しのあの人がいる家に帰る。

俺なしでは何にもできないあの人。愛しの木兎さん。

これが共依存というものだろうか?我ながら歪愛だと思う。

でもいいんだ。帰ったらあの人がいて、あの人の色々な手伝いをして、

「木兎さん。ただいま。」

全部、俺のせいでこうなったなんて、疑いもしていないような笑顔で木兎さんが返す。

「おかえり赤葦!」

嗚呼、素晴らしい人生だ。








end

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