汗だくになって目が覚める。
「あぁ、夢か…」
ベット脇のチェストに置いてあるスマホに手を伸ばし、時刻を確認する。
「そろそろ準備しなきゃだな…」
私はベットからだるい体を浮かして、準備を始めた。
私の名前は、川崎瑠愛。都内の高校に通う高校2年生だ。部活動には所属していない。
部活動に所属していないのには理由がある。私は、2週間に1度は精神科に行く必要があるからだ。
準備が終わり、家を出る。
私は小学生まで、ごく一般的な小学生だったーらしい。らしい、というのは、私に高校生以前の記憶がないからだ。記憶がない、というよりも高校生から私の人生が始まっているような感覚。
「ッ…はぁ、はぁ…フゥ…」
頭に閃光が走るような感覚。その瞬間にあるシーンが頭に浮かび上がる。
傷だらけの女の子。
『しあわせ…だよ?私は…幸福…』
泣いていた。なぜ泣いているのだろう。わからない。あなたはなぜ泣いているの?
それは、心のなかにある、あるはずのない
『過去の自分』。
「違うっ!違うんだってば!」
あれは、私じゃない!ホントの私は、私は…
「あの…大丈夫?」
周りの人が、駅のホームでいきなり叫んでしゃがみこんだ私に好奇の目を向けるなか、1人の男性が声をかけてくれた。
「ごめんなさい、私のせいで…」
「?」
「私がいたから、あなたまで好奇の目に巻き込んでしまって…ごめんなさいっ…」
「そんなことか。気にしてないよ。あと、なかなか気づかないようだから言うけど、同じ高校だよね?」
「え…?あ…」
彼は、私と同じ高校の制服を着ていた。
(同じ学年…?でも、すごく背が高い…先輩かな?)
起き上がって姿勢を正し、改めてお礼を言ってから私は言った。
「あっ…の、すみませんが、学年をお聞きしてもよろしいですか?」
「俺は3年生だよ。君は…2年生かな?」
「あ…正解です。すごいですね」
「うん。なんか2年生にこんな雰囲気の女の子いたなーって」
(雰囲気だけで分かるなんて!)心のなかで驚愕してしまった。
とりあえず、学校に行かなければならない。
「あっ、あの!ありがとうございました…」
「全然大丈夫だよ?だけどさ、こっから一人で行くつもり?」
「え?」
「だから、さっきしゃがみこんじゃった後輩の女の子を先輩がほっとけるわけないでしょ。一緒に行こう。行き先同じなんだから。」
「あっ、はい…お願いします」
彼はニコッと微笑んだあと、私の手を取って改札口へ向かった。
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