テラーノベル
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「やっぱり、おかしい。」
優が、”もう一度”その言葉を言った。
「何回目だよ。それ。」
和也の注意する言葉にも、元気がなかった。
もう何件目だろう。
本田芽衣の居場所を探して1時間、俺たちは挫折しかけていた。
「・・・」
真姫にいたっては、話す気力もないようだ。
「ねぇ、やっぱり、おかしいよ。」
もう聞き飽きた、それ。
「だってみんな、芽衣ちゃんのこと、何にも知らないんだもん。」
ようやく真姫が口を開く。
「そうよねぇ、こんなに小さな町に、知らない人なんているはずもないのに。」
そうだ、どうしてみんな知らないんだろう。
田中のじぃちゃんも、真山のねぇちゃんも、ましてや学校の先生ですら首をかしげていた。
「あーあ、みんな記憶を消されちゃったのかなぁ!!」
全てぶん投げるように優が言う。
「まさか、物語のせかいじゃないもの。」
その時、ふわりと風に乗って何かが飛んできた。
A4くらいのサイズの紙。
「なに、これ。」
裏返すと、それはテストだった。
しばらくそれを見つめていた真姫が声を漏らす。
「なんて、悪い点数なの・・・」
すごくげんなりしている。
確かに悪い点数だ。
ショートテストで12点て・・・
ふと後ろを向くと和也がほっぺを赤くしていた。
「これ、オメーのかよ。」
俺は差し出した答案を和也は横を向いて受け取る。
「悪かったな!」
口を尖らせた和也を見て、俺らはつい噴出した。
だけど2人で大笑いしている中、優だけは何も言わない。
ただ真顔で、空を見つめている。
「どうしたんだ?」
俺が聞いても、何も言わない。
「おーい、優ー?」
「ごめん、ちょぉっと静かにして!なんか思い出しそうだから!!」
まじ?
「優、それ、ほんと⁉」
優は何も答えなかった。
でもその表情がいたって真剣で、なんだか邪魔しちゃいけないムードが漂っていた。
「12回目・・・」
ようやく優が口を開いた。
「そうだ、芽衣は12回目だったんだ!!!」
は?
俺たちはただただポカーンとしていた。
「12回目って、何が⁉」
たまらず真姫が問い詰める。
「いったい何が12回目だったっていうのよ!」
和也も俺も、ご愁傷さまというようにただただ2人を見つめる。
優はしばらく迷っていて、やがてあきらめたようにしぶしぶ答える。
「えぇーっと、芽衣が・・・かな?」
その一言で真姫の怒りは絶頂。
「そんなのあったりまえじゃない、何言ってんのよっ!」
優はこの雰囲気にもう耐えられないというようにぎゅっと目をつぶった。
「だから芽衣は、人生12回目っ・・・」
!
瞬間俺たちに”記憶”が戻った。
それと同時に芽衣の居場所もわかった。
俺たちと芽衣との大切な思い出―――――