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先に言っときます。
今回めっっっつちゃ長いです。
あと、めめの照くんの呼び方が何回か「岩本くん」じゃなくて「照くん」になってると、文章が変なのは許して(>︿<。)
書き直そうかと思ったんですけど……
最後まで読んでくれると嬉しいです!!
「……あ、あべちゃん、まって……そこ、変な感じする……っ」
阿部のマンション、カーテンを閉め切った薄暗いリビング。
ソファの上で、目黒は阿部の腕の中にすっぽりと収まっていた。
いつもは長身でモデル体型な目黒も、阿部の巧みな指先と熱い執着にさらされると、驚くほど小さく、愛らしく丸まってしまう。
阿部の指が、目黒のシャツの合わせ目から入り込み、熱を帯びた腹筋をなぞり、そのまま胸元へと這い上がる。
「めめ、力抜きすぎ。……そんなに気持ちいい?」
「……っ、ふ、あ……。あべちゃんが、……いじわるするから……っ」
目黒の瞳は潤み、視界は熱で白濁している。阿部の肩に回した腕には力が入らず、ただ無防備に、誘うような吐息を漏らすことしかできない。
阿部はそんな目黒の「受け」としての可愛さに拍車がかかっているのを見て、さらに独占欲を煽られた。首筋に深く顔を埋め、吸い上げるように赤い痕を刻みつける。
「あ……んっ、……あべ、ちゃん……っ」
甘い声がリビングに響き渡った、その時だった。
「おっじゃましまーーす!! 阿部ちゃーん、佐久間さん降臨だぞー!」
「康二特製の激ウマおつまみセット、持ってきたでー!!」
静寂を切り裂く、陽気すぎる二人の声。
ガチャン、と鍵が開く音がして、賑やかな足音が玄関からリビングへと一直線に向かってくる。
「……っ!!」
阿部がハッとして動きを止めたが、目黒はまだ熱の渦の中にいた。腰が震え、阿部のシャツを掴んだ指先が離れない。
「あ、あれ? リビング暗いな……阿部ちゃーん? 寝て……」
佐久間と康二がリビングに足を踏み入れた瞬間、時間は止まった。
二人の目に飛び込んできたのは、ソファで阿部に組み敷かれ、シャツのボタンが半分以上外れ、肩まで露わになった目黒の姿。
そして何より衝撃的だったのは、目黒の表情だ。
頬を林檎のように赤く染め、焦点の定まらない潤んだ瞳。少し開いた唇からは、まだ甘い吐息が零れ落ちている。
「…………えっ」
佐久間が手に持っていたコンビニ袋を床に落とした。カラン、と缶チューハイが虚しく転がる。
「…………めめ……?」
康二は持っていたタッパーを抱えたまま、口をパクパクさせて固まっている。
いつもはクールで、誰もが憧れる
「漢・目黒蓮」。
だが今そこにいるのは、阿部に愛されすぎて、自分たちの存在にすら気づかないほど蕩けきった、色っぽくて危うい「受け」の目黒だった。
「……あっ、二人とも……ごめん、今日、約束してたの忘れてて……!」
阿部が慌てて目黒の体を隠すように抱き寄せ、自分の上着を被せる。
しかし、その腕の中で、目黒はまだ状況が飲み込めていないのか、阿部の胸板に顔を擦り付けながら、消え入りそうな声でぐずりだした。
「……あべちゃん……やめないで……もっと……」
「「…………っっ!!!」」
佐久間と康二の脳内で、何かが音を立てて崩壊した。
「めめが、……あんな声で……?」
「……あんなに、……誘ってる……?」
あまりの破壊力に、二人は顔を見合わせ、言葉を失った。
自分たちが踏み込んでいい領域ではなかった。これは「阿部亮平だけの目黒蓮」なのだと、本能が理解した。
「……こ、康二。俺たち、忘れ物したわ。アニメイトに忘れ物した」
「せ、せやな……俺も、タイに忘れ物した気がするわ……!」
二人は引き攣った笑顔を浮かべたまま、音を立てないように、けれど全力のスピードで玄関へと後ずさりしていった。
バタン、とドアが閉まる音がして、再び静寂が訪れる。
「……めめ、二人……行っちゃったよ」
阿部が苦笑いしながら声をかけると、目黒はやっと正気に戻ったのか、真っ赤な顔で阿部を見上げた。
「……見られた? 俺、……あんなところ、見られたの……?」
「……うん。でも、おかげで邪魔者は消えたよ」
阿部は目黒の耳元で低く囁くと、再びその柔らかな唇を塞いだ。
外で呆然としているであろう二人のことなど、もう今の二人には関係なかった。
ガチャッ、と楽屋のドアが開く。
「おはよー……」
入ってきたのは、いつも通りクールで端正な顔立ちの目黒。
しかし、その姿が見えた瞬間、先に座っていた佐久間と康二の肩がビクッと跳ねた。
「お、おぅ……めめ、おはよう……(昨日のアレ、幻じゃないよな!?)」
「おはよ、めめ……(あかん、直視できへん……!)」
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二人は不自然なほど素早く視線を逸らし、手元のスマホや雑誌に猛烈な勢いで集中し始める。
目黒は首を少し傾げながら、自分の席に座った。
「……二人とも、どうしたの? 今日、元気なくない?」
「げ、元気だよ! 超元気! ピーマソ食べてるくらい元気!」
「せ、せやで! 俺も今、タイの気温調べてたくらい余裕やで!」
支離滅裂な返答を返す二人に、目黒は不思議そうに目を細める。
と、そこへ追い打ちをかけるように、阿部がにこやかに楽屋に入ってきた。
「みんな、おはよう。……あ、めめ。昨日、忘れ物してたよ」
阿部が差し出したのは、目黒のネックレス。
それを受け取る際、阿部が目黒の耳元で
「昨日はお疲れ様」と、二人だけにしか聞こえないような低音で囁いたのを、地獄耳の佐久間と康二は見逃さなかった。
((ひえっ……!!))
昨夜の「あべちゃん、もっと……」という目黒の甘い声が脳内で再生され、二人の顔は一気に沸騰したように赤くなる。
「……ねえ、佐久間くん、康二。……昨日、何かあった?」
目黒がじりじりと距離を詰めてくる。昨夜の「受け」の顔とは打って変わって、いつもの鋭い視線。
「い、いや! 何も見てない! 阿部ちゃんのソファでめめがシャツはだけて『あべちゃん、やめないで』って言ってたのなんて、一ミリも見てないから!!」
「……佐久間くん、全部言ってる」
康二が顔を覆って絶望する。
目黒は一瞬フリーズした後、耳まで真っ赤に染まった。
「……っ、……見てたんじゃん……!!」
「あ、あはは……めめ、あんな顔するんだねぇ……」
「康二、もう……俺ら、今日は一日、透明人間になろう…」
気まずさに耐えきれず、隅っこで小さくなる佐久間と康二。
そんな二人を、阿部だけが
「見たからには、覚悟できてるよね?」と言わんばかりの、黒い微笑みを浮かべて見つめていた。
「……ねぇ、二人とも。ちょっとこっち来て?」
阿部の声は、いつになく穏やかだった。けれど、その瞳の奥には、絶対に逃がさないという冷徹な光が宿っている。
「ヒッ……!!」
佐久間と康二は、椅子から転げ落ちそうになりながら、一歩、また一歩と後退りした。
「あ、阿部ちゃん? 笑顔が怖いよ! 般若が見えるよ!?」
「せやで! 俺ら、昨日のはもう脳内からデリートしたから! 記憶喪失やから!!」
しかし、阿部は二人の言い訳など聞く耳持たず、ゆっくりと距離を詰めていく。目黒はといえば、自分の失態を思い出して、顔を両手で覆ったまま、真っ赤になって自分の席で固まっている。
「記憶にないなら、もう一度詳しく教えてあげようか? 昨日、二人がドアを開けた時に『めめがどんな声で鳴いてたか』」
「ぎゃあああああ!! 言わないで! 聞きたくない!!」
佐久間は耳を塞いで絶叫した。
あの色っぽすぎる、とろけた目黒の声をこれ以上思い出したら、自分の理性が、あるいは目黒とのこれまでの友情が、別の意味で崩壊しそうだったからだ。
「康二も。……スマホ、出して?」
「な、なんで!? スマホは勘弁してや!!」
「昨日、一瞬向けたよね? カメラ」
阿部の声が一段と低くなる。康二は
「あ、終わった」と悟った。
実は昨夜、あまりの衝撃映像に、指が勝手に動いてシャッターを切ってしまったのだ。もちろん保存はされていない(はずだ)が、阿部の執念深い追求から逃げられるはずもなかった。
「……あべちゃん、ごめんってぇ……」
康二は泣きべそをかきながら、ガタガタと震える手でスマホを阿部に差し出した。
阿部はそれを無言で受け取ると、画面を確認し、数秒後、フッと鼻で笑った。
「……ふーん。結構綺麗に撮れてるじゃん。……でも、これ見れるのは俺だけだから」
阿部は迷わずそのデータを自分のスマホに転送し、康二の端末からは跡形もなく消去した。
その一連の動作の鮮やかさに、佐久間と康二は戦慄する。
「いい? 二人とも。昨日のことは、墓場まで持って行ってね。……もし、他のメンバーやスタッフさんに一言でも漏らしたら……」
阿部が二人の肩に、ぽん、と手を置く。
その手の重みは、友情の重みではなく、完全なる「脅し」の重みだった。
「……分かってるよね?」
「「……はい……っっ!!!」」
二人は食い気味に返事をし、そのまま直立不動で固まった。
その横で、ようやく顔を上げた目黒が、真っ赤な顔で
「……あべちゃん、もう許してあげなよ……」と弱々しく呟く。
すると阿部は、途端に慈愛に満ちた表情に切り替わり、
「めめがそう言うなら、ね」と、目黒の頭を優しく撫でた。
そのあまりの温度差に、佐久間と康二は、
「やっぱりめめは阿部ちゃんのものだわ……」
と、心の底から(震えながら)再確認するのだった。
その日は、Snow Man全員での雑誌のグラビア撮影だった。
テーマは「密着」。
ペアやトリオで絡みのあるカットが多く、楽屋での緊張を引きずったままの佐久間と康二は、なるべく目黒と距離を置こうとソワソワしていた。
しかし、運命の悪戯か、カメラマンが指示を出す。
「次は阿部くんと目黒くん。あと、佐久間くんと向井くんも入って、4人で絡んでみようか」
「「……えっ!!」」
佐久間と康二の顔が引き攣る。
よりによって、あの二人の至近距離に行かなければならない。
撮影が始まると、阿部の独占欲は一気に爆発した。
「めめ、こっち向いて」
阿部は目黒の腰をぐいと引き寄せると、自分の胸の中に完全に閉じ込めるように抱きしめた。カメラマンが「いいよ!」とシャッターを切る中、阿部はわざと、後ろにいる佐久間と康二に見せつけるように、目黒のうなじを鼻先でなぞる。
「……っ、あべちゃん、みんな見てるから……」
目黒が耳まで赤くして身を縮めるが、阿部は離さない。
それどころか、空いた手で目黒の指を絡め取り、恋人繋ぎのままギュッと力を込めた。
「いいじゃん、仕事だし。……それとも、昨日の続き、みんなの前でした方がいい?」
耳元で囁かれた低音に、目黒の肩が跳ねる。その顔は、昨夜二人が見てしまった、あの無防備でとろけた「受け」の表情に一瞬で戻ってしまった。
「あ……ん、……だめ……」
潤んだ瞳で阿部を見上げる目黒。
その、世界で一番甘い「めめ」を目の当たりにした佐久間と康二は、あまりの衝撃と阿部からの無言の圧(これは俺の、というオーラ)に、撮影中にもかかわらずガタガタと震え出した。
「佐久間くん、向井くん! もっと楽しそうに! 怯えてるみたいだよ!」
カメラマンの声が飛ぶが、無理な相談だ。
阿部はチラリと二人の方を向くと、目黒の腰をさらに深く抱き寄せ、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
その目は明らかに
「昨日見たことは忘れろ。この体も、この声も、全部俺だけのものだ」と告げている。
「……康二、俺もう無理……帰りたい……」
「……さっくん、俺もや……今のめめの顔、完全に『あべちゃん専用』やん……」
撮影が終わる頃には、目黒は阿部の過剰な愛撫に腰を抜かしそうになり、佐久間と康二は精神的な疲労で真っ白に燃え尽きていた。
結局、その日の写真は「あまりにも阿部と目黒の空気が濃密すぎて、雑誌の掲載基準を超えている」という理由で、数枚がボツになり、阿部の個人フォルダへと密かに回収されたという。
撮影が終わり、ようやく阿部のマンションに戻った二人。
リビングのドアが閉まった瞬間、目黒はくるりと振り返り、阿部の胸元を両手で強く突いた。
「……あべちゃん、今日のはやりすぎ!」
顔を真っ赤にして抗議する目黒。しかし、阿部は余裕の笑みを崩さない。
「え、何が? 仲良く撮影してただけじゃん」
「嘘ばっかり! 佐久間くんたち、あんなに震えてたんだよ!? それに……っ、腰とか、変なとこずっと触ってたでしょ!」
目黒は憤慨しながら、阿部をソファに押し倒した。
予期せぬ「めめ」の力強い行動に、阿部は少し驚いたように目を丸くして、背中をクッションに預ける。
「……お、めめから押し倒してくるなんて珍しいね。反撃のつもり?」
「そうだよ! いつもあべちゃんばっかり攻めてくるから……今日は、俺がわからせてやるんだから」
目黒は阿部の上に跨ると、その両手首を頭の上で片手で押さえ込んだ。
モデル体型の目黒に上から抑え込まれると、流石の阿部も身動きが取れない。
「……っ、めめ……?」
阿部の声が少し上擦る。目黒はニヤリと、少し意地悪な笑みを浮かべた。
「あべちゃん、ここ弱いよね?」
そう言って、目黒は阿部の耳元に顔を寄せ、熱い吐息を吹きかけながら、柔らかく耳たぶを噛んだ。
「っ……あ……!」
さらに、空いている方の手で、阿部の脇腹から腰にかけてを、わざとゆっくり、じりじりと愛撫するように這わせていく。
いつも阿部が自分にしてくる「焦らし」を、そのままお返ししてやるのだ。
「あべちゃん、顔赤いよ? 余裕ないの?」
「……くっ、……お前、……調子乗んなよ……」
阿部は顔を背けて耐えようとするが、目黒の執拗な攻撃に、ついに吐息が漏れ出す。
「あ……んっ、めめ、……そこ、だめ……っ」
いつもは「受け」として蕩けている目黒が、鋭い視線で自分を見下ろし、攻めに転じている。そのギャップと、必死に自分を翻弄しようとする健気な姿に、阿部は別の意味で限界が近かった。
「……ねぇ、あべちゃん。俺にされた方が、もっと気持ちいいでしょ?」
上目遣いで、けれど男らしく、とろけるようなキスを降らせる目黒。
「反撃」のつもりが、結局はその色っぽさで阿部の理性を完全に焼き切ってしまい、この後、目黒くんは倍以上の「お返し」をされることになるのですが……。
目黒の「反撃」は、阿部の理性を完全に粉砕するトリガーでしかなかった。
「……めめ、自分が何したかわかってんの?」
阿部の声が、それまでの余裕をかなぐり捨てた「獣」の低音に変わる。
目黒が「え……」と固まった瞬間、拘束されていたはずの阿部の両手が、逆に目黒の細い手首を掴み返した。
「あ、あべちゃ……っ、んんっ!?」
立場は一瞬で逆転した。ソファに押し倒された目黒は、阿部の激しい口づけに呼吸を奪われる。
いつもなら優しく解きほぐしてくれるはずの手が、今は焦れったさを隠そうともせず、目黒の服を乱暴に剥ぎ取っていく。
「ひっ、……あべちゃん、まって、はやい……っ!」
「待たない。……めめがその気にさせたんだから、最後まで責任取れよ」
阿部の瞳は、独占欲と情欲でどろりと濁っている。
目黒の白い肌に、次々と赤い花びらを散らすように熱い痕を刻み、敏感な場所を容赦なく責め立てる。目黒はあまりの快感の波に、背中を反らせて阿部の名をつぶやくことしかできない。
「あ……ぁっ、……てる……っ、あべちゃん、だいすき、……もっと、きて……っ!」
反撃したはずの目黒は、結局、阿部の熱い猛攻に翻弄され、涙目で何度も名前を呼び続けながら、深い夜の底へと沈んでいった。
ガチャッ、と楽屋のドアが勢いよく開く。
「おはようございまーす」
「……おはよ……(阿部の背中で顔を隠しながら)」
入ってきたのは、目黒を軽々とおんぶした阿部。
目黒は完全に顔を阿部の首筋に埋め、耳まで真っ赤にして
「降ろして……」と小声で抗議しているが、阿部は満足げな笑みを浮かべて離さない。
その異様な光景に、楽屋にいたメンバーの動きがピタリと止まった。
「…………え、何? 撮影? ドッキリ?」
渡辺が手に持っていた美顔器を落としそうになりながら絶句する。
「おーい、めめどうした!? 怪我か!?」
心配性の照くんが駆け寄ろうとするが、阿部がそれを制するように一歩下がった。
「あ、照。大丈夫、怪我じゃないから。ちょっと……昨日の夜、腰を酷使させすぎちゃって。 今日は俺が介護担当ね」
阿部がサラッと言ってのけた瞬間、楽屋に激震が走った。
「「「…………っっっ!!!!」」」
昨日の一部始終を目撃していた佐久間と康二は、その場で泡を吹いて倒れそうになる。
「お、追い打ち……! 阿部ちゃんの独占欲の追い打ちが来たぞ……!」
「介護って何や! その言葉選びがもうアウトやろ!!」
ふっかさんは「あーあ……」と遠い目をし、舘様は静かにティーカップを置いて
「……お幸せに」とだけ呟いた。
「阿部ちゃん、もういいから! 降ろして!!」
目黒が涙目で暴れるが、阿部は目黒の膝の裏をギュッと掴み直し、逆に密着度を上げる。
「ダメだよ。歩くと響くでしょ? ほら、めめ。みんなにおはようって言わなきゃ」
「…………っ、みんな、おはよ……(消え入りそうな声)」
阿部の背中で完全に「借りてきた猫」状態の目黒。
クールな目黒蓮の面影は微塵もなく、誰の目から見ても
「阿部ちゃんに愛されすぎてボロボロにされた受け」の姿そのものだった。
「……康二、俺たち、今日から『あべめめ尊い』を通り越して『あべめめ恐ろしい』に改名しような」
「せやな……俺もう、一生独身でええ気がしてきたわ……」
隅っこでガタガタ震えながら抱き合う二人の横で、阿部は目黒をソファに優しく降ろし、そのまま当たり前のように膝枕を始めるのだった。
「……阿部。ちょっと、表出ろ」
楽屋のソファで目黒を膝枕して、甲斐甲斐しく世話を焼いていた阿部に向かって、岩本の低く重い声が響いた。
普段は温厚なリーダーだが、その目はマジだ。目黒を過剰に
「自分だけのもの」として扱う阿部の態度は、グループの規律(と、佐久間・康二の精神衛生)を乱すと判断したらしい。
「あ、照。……ごめん、ちょっと待って。今、めめに水飲ませてるから」
「……いいから来い」
岩本は阿部の腕を掴むと、そのまま楽屋の外、非常階段の踊り場へと連れ出した。
「阿部、お前……やりすぎだ」
壁に背を預け、腕を組んだ岩本が阿部を真っ直ぐに見据える。
「……何が?」
「トボけんな。昨日の撮影も、今朝の『おんぶ』もだ。お前がめめを愛してるのは勝手だけど、周りの空気考えろ。佐久間と康二、死んだ魚みたいな目してたぞ」
阿部は少しだけバツが悪そうに視線を逸らしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「……だって、照。目を離すと、あいつすぐ誰かに甘えるでしょ。あんな無防備な顔、他の奴に見せたくないんだよね」
「だからって仕事場に私情を持ち込むな。……それに、めめがあんなに恥ずかしがってるのに、それを見て楽しんでるだろ、お前」
「…………」
図星だった。阿部は、恥じらいに震える目黒を独占し、周りに見せつける快感に味をしめていた。
「いいか、阿部。次、楽屋で度を越したイチャつき方したら、……俺がめめを連れ去るからな。お前から隔離して、俺の筋トレメニューに一日中付き合わせる」
「……っ、それは困る。めめの体力がもたない」
「だったら自制しろ。めめはみんなの宝なんだよ。お前一人で壊していいもんじゃない」
岩本の「リーダー」としての、そして「一人の男」としての重みのある言葉に、阿部もようやく深いため息をついて頷いた。
「……わかったよ。少しは控える。……少しだけね」
「……はぁ。お前、本当にめめのことになるとタガが外れるな……」
岩本が呆れたように頭を振って楽屋に戻ると、そこには隅っこで震える佐久間と康二を、目黒が(腰を痛めながらも)必死になだめている光景が広がっていた。
「……あ、照くん。阿部ちゃんは?」
心配そうに駆け寄ろうとする目黒に、岩本はポンと頭を置いて言った。
「安心しろ。……今夜からは、少しは優しくしてくれるはずだぞ」
その言葉の裏の意味を察して、目黒は再び茹で上がったように顔を赤くするのだった。
非常階段の踊り場。
阿部を楽屋に帰した後、岩本は一人、冷たい手すりに身を預けていた。
「……『みんなの宝』、か」
自分で言った言葉が、皮肉にも胸に突き刺さる。
阿部を説教したのは、リーダーとして楽屋の空気を守るため……というのは、半分は本当で、半分は嘘だった。
本当は、阿部の腕の中でとろとろに蕩けて、自分たちには見せない「受け」の顔を晒している目黒を、これ以上見ていられなかっただけだ。
「……あんな顔、俺だって知らなかったのに」
岩本の脳裏に、入所したての頃の幼い目黒の姿が浮かぶ。
がむしゃらに自分を追いかけてきて、今や背丈も肩を並べるほどになった。ずっと「可愛い弟分」だと言い聞かせてきた。けれど、いつの間にかその感情は、名前の付けられない重い執着へと変わっていた。
ガチャン、とドアが開く音がして、目黒がひょっこりと顔を出した。
「……照くん? まだここにいたんだ」
「めめ……。腰、大丈夫なのかよ」
岩本は瞬時に「リーダー」の仮面を被り、いつもの低い声で問いかける。
「うん。阿部ちゃんがマッサージしてくれたから。……さっきは、阿部ちゃんのこと怒ってくれてありがとう」
目黒が少し申し訳なさそうに、けれど信頼しきった瞳で岩本を見つめる。
その無防備な視線が、岩本の理性をじりじりと削る。
阿部にあんなに酷い目に合わされてもなお、目黒の心は阿部一色なのだ。
「……めめ。お前さ、あいつに甘やかされすぎてバカになってんじゃないの?」
「えっ?」
岩本は思わず、目黒を壁際へと追い詰めた。
長い腕が目黒の逃げ場を塞ぐ。阿部の時とは違う、圧倒的な筋肉の威圧感と、焦燥感に混じった熱。
「照、くん……?」
「……阿部が執着する理由、わかるよ。お前、自分が今どんな顔してるか分かってねぇだろ」
岩本の手が、目黒の頬に触れる。親指が目黒の唇をなぞり、ぐいと押し下げた。
「俺だって、ずっと我慢してんだよ。……お前が阿部のもんだなんて、認めたこと一回もねぇから」
「っ、……照くん、何、を……」
目黒の瞳が驚きで大きく見開かれる。
岩本は目黒の耳元に顔を寄せ、阿部には決して聞かせられないような、熱く、苦しい本音を吐き出した。
「……今夜、俺の家に来い。……阿部につけられた痕、全部俺が上書きしてやる」
いつもは「漢」として、あるいは「兄貴」として接してくる岩本から放たれた、剥き出しの独占欲。
目黒は、阿部とはまた違う、強引で圧倒的な「雄」の熱に当てられ、腰の痛みを忘れてその場にへたり込みそうになった。
「……上書き、って。照くんもマッサージしてくれるの?」
目黒は首を傾げながら、無邪気な瞳で岩本を見上げた。
「阿部ちゃんも上手だけど、照くんの指圧ならもっと効きそうだし。……お邪魔してもいい?」
「…………」
岩本は絶句した。あんなに熱く、独占欲を剥き出しにして誘ったというのに、この男はどこまで無防備で鈍感なのだろうか。
「……あぁ、そうだよ。お前が二度と阿部のこと思い出せなくなるくらい、最高に『効くやつ』やってやる」
「えっ、楽しみ! 照くん、優しいね」
自分の身に迫る危機に全く気づかないまま、目黒はふわりと微笑んだ。その笑顔が、岩本の中に残っていた最後の「理性」という名のストッパーを外した。
【岩本家のリビング】
「お邪魔しまーす。……わ、照くんの家、やっぱりストイックな感じだね」
キョロキョロと部屋を見渡す目黒に、岩本は背後からゆっくりと近づいた。
「めめ。とりあえず、そこに座れよ」
「うん。……あ、もうシャツ脱いだ方がいい? マッサージしやすいように」
そう言って、目黒が自らシャツのボタンに手をかけた瞬間、岩本の視線が鋭く光った。
はだけた胸元には、まだ阿部が残した淡い赤い痕がいくつか残っている。
「……あいつ、本当にやりたい放題だな」
「え? 何か言った?」
目黒が振り返るより早く、岩本の逞しい腕が目黒の腰を抱き寄せ、そのままソファへと押し倒した。
「わっ、照くん!? ちょっと、マッサージにしては力強くない……っ?」
「マッサージなんて言った覚えはねぇよ。……『上書き』って言っただろ」
岩本は目黒の両手首を片手で頭の上に固定した。
阿部の時はどこか「悦び」を伴う強引さだったが、岩本のそれは、獲物を逃さない「狩人」のような、圧倒的な力強さだった。
「……阿部の痕、目障りなんだよ」
そう言うと、岩本は目黒の首筋にある阿部の痕を、塗りつぶすように深く、激しく吸い上げた。
「っ、……あ、いわもっとくん、……痛いっ、……そこ、……あ、んっ!」
阿部のテクニカルな愛撫とは違い、岩本のそれは、ただひたすらに熱く、力強く、目黒の存在を自分の中に刻み込もうとするような激しさ。
目黒はここでようやく、自分がとんでもない場所に付いてきてしまったことに気づいた。
「て、照くん……まって、これ……マッサージじゃ……っ、ふあ……!」
「今更気づいても遅い。……今日は、阿部の名前なんて呼ぶ暇、与えてやんねぇから」
岩本の逞しい体が目黒の上に覆い被さる。
窓の外、夜の静寂を切り裂くように、目黒の甘い悲鳴が漏れ出した。
一方その頃、目黒が岩本と帰ったことを知った阿部ちゃんは、真っ黒な笑顔でスマホを握りしめていた――。
「……っ、いわ、も、とくん……もう、むり……力、はいんない……」
岩本のベッドの上で、目黒は完全に力なく横たわっていた。
阿部の時は、どこか「理性的」で、目黒の反応を楽しみながら愛でるような余裕があった。だが、岩本は違う。
その逞しい体から溢れる熱量と、一切の容赦がない力強さで、目黒の感覚を根こそぎ奪い去っていった。
岩本の手が、目黒の熱を持った肌をなぞる。
「……阿部の痕、消えたな。全部俺のになった」
「……っ、そんな、言い方……。あ、ん……っ」
目黒は潤んだ瞳で岩本を見上げる。心も体も、岩本の圧倒的な独占欲に塗りつぶされ、さっきまでの「鈍感なめめ」はどこにもいなかった。
岩本が目黒の腰を再び引き寄せ、深い口づけを落とした、その時だった。
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!!
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
深夜の静寂を切り裂く、尋常ではない音。
「……ちっ、誰だよ、こんな時間に」
岩本が不機嫌そうに身を起こすが、目黒は
「……この叩き方、まさか……」
と顔を真っ青にする。
「……照。開けて。……そこに、俺の『忘れ物』があるの分かってんだよ」
玄関の外から聞こえてきたのは、地獄の底から響くような、阿部の冷ややかな声だった。
岩本は舌打ちしながら、目黒に自分のパーカーを投げつけ、玄関へと向かう。
ドアを開けた瞬間、そこには——。
完璧に整った髪、けれど瞳の奥は全く笑っていない、真っ黒なオーラを纏った阿部が立っていた。
「……あ、阿部。お前、なんの用だ」
「何って。めめを迎えに来たに決まってんじゃん。照、うちのめめに何してくれたの?」
阿部は岩本の肩を無理やり押し退けてリビングへ。
そこには、岩本のパーカー一枚を羽織り、首筋に新しい「上書き」の痕を赤々と残して、震えている目黒の姿。
「…………へぇ。上書き、ってこういうことか」
阿部の微笑みが、さらに深くなる。
「めめ、おいで。……お仕置き、まだ足りなかったみたいだね」
「あ……あべ、ちゃん……っ」
「待てよ阿部。めめは俺のとこに来るって選んだんだよ」
岩本が背後から目黒の肩を抱き、阿部を睨みつける。
「選んだんじゃなくて、君が騙したんでしょ? ……さあ、めめ。帰るよ。それとも……今ここで、三人の続きにする?」
阿部の提案に、目黒は心臓が止まるかと思った。
「雄」としての本能を剥き出しにする岩本と、理性をかなぐり捨てた執着の塊の阿部。
二人の巨大な熱量に挟まれ、目黒は再び、腰の痛みと共に甘い絶望を感じるのだった。
「……三人で、って……そんなの、無理だよ……っ」
目黒が震える声で拒絶するが、その言葉は熱を帯びた空気の中に虚しく消えた。
右側からは、岩本の逞しい腕が腰を抱き寄せ、左側からは、阿部の冷たくも熱い指先が目黒の顎を持ち上げる。
「無理かどうか、試してみればいいじゃん」
阿部の声には、もう一切の慈悲はなかった。彼は目黒の首筋、岩本がつけたばかりの新しい痕を指でなぞり、そこに自らの唇を重ねた。
「っ……あ……んっ!」
岩本に上書きされた場所を、さらに阿部が奪い返すように深く吸い上げる。
「阿部、めめを泣かせんなよ……って言いたいけど、俺も今日は譲る気ねぇから」
岩本は目黒の耳元で低く笑うと、反対側の耳たぶを甘噛みした。
右からは岩本の「雄」の熱、左からは阿部の「執着」の毒。
挟まれた目黒は、二人の異なる熱量に当てられ、呼吸を整えることすらできない。
「あ、ぁ……いわもとくん、あべちゃん……っ、だめ、……ふたつ、いっしょ……っ」
ベッドに沈められた目黒は、まさに「地獄」のただ中にいた。
岩本が目黒の両手首を頭の上でがっちりと固定し、逃げ場を塞ぐ。その隙に阿部が目黒のシャツを完全に剥ぎ取り、その白い肌を二人で分かち合うように愛撫していく。
「めめ、どっちが気持ちいいか、声で教えて?」
阿部がわざとらしく敏感な場所を指先で弾くと、目黒の背中が大きく反る。
「……っ、ふ、あ……! あべ、ちゃん……っ」
「……俺の名前も呼べよ。めめ」
岩本がわざと低く、響くような声で囁きながら、内腿を強く愛撫する。
「あ……ぅ、……っ! たすけて……っ」
「助けて、じゃないでしょ。……おねだりしなよ」
阿部の冷静な瞳と、岩本の飢えた獣のような瞳。
交互に降ってくる激しい口づけに、目黒の意識は混濁していく。
一人の愛に溺れることすら過酷なのに、二人の巨大な感情を一度にぶつけられ、目黒の体は快感の限界を超えて震え続けた。
「……あ、……あ、あああああ……っ!」
朝が来るまで、二人は交互に、あるいは同時に目黒を愛し、その肌に自分たちの証を刻み続けた。
目黒が最後に見たのは、自分を挟んで不敵に笑い合う、二人の「悪魔」のような顔だった。
翌日
「……おい。ちょっと、全員そこに並べ」
楽屋に入ってきた深澤の声は、低く、静かだった。それが一番怖いことを、メンバー全員が知っている。
深澤の目の前には、阿部と岩本の二人に両脇を支えられ、最早自分の足で立っているのかも怪しい、顔面蒼白(かつ首元がガムテープでも隠しきれないほど赤い)目黒の姿。
「ふ、ふっか……これは、その……」
岩本が珍しく冷や汗をかきながら言い訳しようとするが、深澤の手がそれを制した。
「照、お前さ……リーダーだろ? 何やってんの? 阿部も、お前はインテリ担当じゃねぇのかよ。その頭脳を『どうやったらめめを壊せるか』に使うんじゃねぇよ!」
深澤の怒りは、いつもガタガタ震えている佐久間と康二にまで飛び火した。
「佐久間! 康二! お前らもだ! 止めろよ! なんで見て見ぬふりしてんだよ!」
「「いや、無理だってぇ!! あの二人のオーラ、マジでエヴァの使徒みたいだったもん!!」」
深澤は大きくため息をつくと、ぐったりしている目黒の前にしゃがみ込み、そのおでこに優しく手を当てた。
「めめ、大丈夫か? ……お前も、断れ。嫌な時は嫌って言わなきゃダメだぞ」
「……ふっか、さん……ごめん……俺、……よく、わかんなくて……」
弱々しく、今にも消え入りそうな声で呟く目黒。その、あまりにも「受け」としてボロボロにされた姿を見て、深澤の中で何かが弾けた。
「……よし、決めた。今日から一週間、目黒は俺が預かる。阿部も照も、一歩も近づくな。半径3メートル以内に入ったら、俺がガチのトーンでマネージャーに報告して、お前らのソロ仕事増やすからな」
「「えっ……!?」」
阿部と岩本が同時に声を上げるが、深澤の目は本気だ。
「めめ、行くぞ。今日は俺の横にいろ。……お前ら二人(阿部・岩本)は、反省文な。400字詰め原稿用紙10枚。テーマは『グループの調和と健全な愛について』だ」
深澤は目黒の腰に手を回し(これは、あくまで『介護』として)、二人を睨みつけながら目黒を自分の席へと連れて行った。
深澤の意外な騎士(ナイト)っぷりに、目黒は少しだけ安心したようにその背中に縋り付く。
だが、深澤もまた、目黒のうなじに残る痕を見て、密かに
「……俺ならもっと優しくしてやれるのに」と、黒い独占欲の種を芽生えさせていたことに、まだ誰も気づいていなかった。
「ほら、めめ。口開けて? あーん」
「……ふっかさん、自分で食べられるよ」
深澤の自宅。ソファでクッションに囲まれ、まるでお姫様のように座らされている目黒に、深澤はせっせとお粥を運んでいる。
「ダメだよー。めめは腰痛めてるんだから、無駄な動きは一切禁止。俺が全部やってあげるから」
ふっかさんはニコニコと笑っているが、その目は「一歩も外に出さない」という強い意志に満ちている。
スマホも「仕事の連絡以外、阿部ちゃんと照からは遮断するからね」と没収済み。
「……ふっかさん、なんか、至れり尽くせりすぎて逆に怖いんだけど……」
「失礼だな! 俺はただ、傷ついためめを癒してあげたいだけなの。……ほら、食後はお薬(サプリ)の時間。その後、俺が『優しく』マッサージしてあげるからね」
寝室で、目黒が眠りにつこうとすると、深澤が当然のようにベッドに入ってきた。
「……ふっかさん?」
「隔離中なんだから、一人にしたら不安でしょ? 俺が一緒にいてあげる」
深澤は目黒を背後から優しく抱きしめた。岩本くんの力強さや、阿部くんの執着とは違う、柔らかくて大きな包容力。
けれど、ふっかさんの手が目黒のパジャマのボタンに指をかけたとき、その空気が一変した。
「……めめ。あいつらにあんなに酷いことされて、まだあいつらのこと考えてる?」
耳元で囁かれる、低くて甘い声。
「……え、いや、それは……」
「ダメだよ。今は俺のことだけ見て。……俺なら、めめが『もっと』って泣くまで、優しく、じっくり愛してあげられるよ?」
ふっかさんの指先が、岩本と阿部が残した痕を上から優しく、けれど塗りつぶすように撫で上げる。
「あ……っ、ふっか、さん……」
「そう、いい声。あいつらに教えられた汚いこと、全部俺が忘れさせてあげるから……」
ふっかさんは「お母さん」の顔をかなぐり捨て、経験豊富な「男」の顔で、目黒をじわじわと、けれど確実に自分の色に染め上げていく。
それは、力でねじ伏せるよりもずっと深く、目黒の心を絡め取っていくような甘い地獄だった。
【その頃、楽屋では……】
「……あいつ、隔離とか言って、自分が一番楽しんでるだろ」
「反省文、書き終わった。……今すぐふっかの家、カチコミ行くぞ、照」
地獄の底から響くような声で呟く、岩本と阿部のコンビ。
二人の「猛獣」が、ついにふっかさんの城へ向けて牙を剥き始めました。
「めめ、ほら。俺の言うことだけ聞いてれば、もう痛い思いもしなくて済むんだよ……?」
ベッドの上で、深澤が目黒の耳たぶを甘く噛み、とろとろに解かしていたその時だった。
ドンッ!! ドドォォォン!!!
「深澤ぁ! 開けろ! めめを返せ!!」
「ふっか、鍵なんて無駄だよ。ピッキングで開けて入るからね?」
玄関から響く、岩本の怒号と阿部の冷徹な宣告。
「……っ! 照くんと阿部ちゃん……!?」
目黒がガタガタと震え出すが、深澤はちっと舌打ちをして、目黒をさらに強く抱きしめた。
「チッ、しつけぇな……。めめ、大丈夫。あいつらには指一本触れさせないから」
しかし、阿部の言葉はハッタリではなかった。数秒後、カチリと鍵が開く音がして、二人の影が寝室になだれ込んでくる。
「……ふっか、お前、いい度胸してんな」
岩本の瞳は完全に据わっており、その背後では阿部が真っ黒な笑みを浮かべて、手にしたノートパソコン(位置情報特定用)をパタンと閉じた。
「隔離して『癒やす』んじゃなかったの? めめの顔、初日より蕩けてるみたいだけど?」
阿部がベッドに歩み寄り、深澤の手を無理やり引き剥がそうとする。
「離せよ。めめは今、俺がいないとダメなんだよ」
深澤も負けじと目黒の腰を引き寄せる。
「は? 俺の方がめめの体のこと分かってんだよ!」
岩本も反対側から目黒の腕を掴み、力ずくで引き寄せる。
「あ、ぅ……みんな、やめて……っ、ひっぱらないで……!」
右からは岩本の暴力的なまでの「雄」の熱。
左からは阿部の逃げ場を塞ぐ「執着」の檻。
そして正面からは、深澤のすべてを飲み込むような「包容」の沼。
「めめ、誰がいい? ……俺だよね?」
「俺に上書きされたいんだろ、めめ」
「……お前ら、めめが嫌がってるだろ。俺の胸の中に隠れな」
三人の巨大な感情が狭いベッドの上で激突し、その中心にいる目黒は、もはや快感と恐怖と羞恥で、頭がどうにかなりそうだった。
三人の手が、目黒の肌のいたるところを奪い合うように這い回り、昨夜までの「隔離」は、一瞬にして
「三人に同時に愛でられる」という、人生最大のカオスな夜へと変貌していった。
翌朝、現場。
「……なぁ、今日のめめ、一気に三歳くらい老けてない?」
「……いや、老けてるんやなくて、魂が宇宙(そら)に飛んでるんや……」
ボロボロを通り越して「透明」になりそうな目黒を、佐久間と康二はただ遠くから拝むことしかできませんでした。
コメント
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めっちゃ元気出ました!最高です