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12月の冬、あたり一面は雪で覆われ全ては灰色の霧に包まれている。過酷な自然の中、多くの哺乳類は冬眠を始めていた。
しかし、人間はそこで殺し合いを行なっていた。
ボリスはリード帝国陸軍第13歩兵大隊に配属され、シロゲニア王国との戦いで最前線の 塹壕にいた。
「やつら、霧の中を火炎魔法で貫いてきやがる!こっちの攻撃には弾薬が必要というのに、クソ魔法使いめ!」
「魔法使い共は既に射程範囲内に入っているぞ!畜生、機関銃の弾薬がなくなった!」
この戦いは冬の中での消耗線に入っており、リード帝国軍の弾薬はほとんど尽きていた。一方、シロゲニア王国軍はリードほどの文明力を持たないが、魔法の知識に長けていたため、初期は劣勢であったものの消耗線に入ると優位になっていた。
ボリスのいる戦線でも、敵に対する抵抗力を失ってきていた。ここも長くは持たないだろうと誰もが感じていた。
ある日、魔弾の雨と爆音が鳴るいつもの朝。突然、突撃命令の笛の音が塹壕に響き渡り、ボリス達は塹壕を登り始めた。雄叫びや「進めー!」という声が鳴り響いた。しかし、火炎魔法がヒュンヒュン飛んでくる状況下での突撃は明らかに自殺行為だった。 俺らは用済みだからここで死ねということらしい。突撃が始まり久々に塹壕を出た男たちの 狂ったような雄叫びは、雨のように降り注ぐ魔法攻撃のそばですぐに悲鳴とうめき声に変わっていき、やがてそれすらも聞こえなくなった。
「ぐあああああー! くそお!くそ!」
ボリスは爆撃魔法の爆風をくらい、空いていた穴に飛び込み、一方的な死を奇跡的に逃れることができたが、手足を複雑骨折してしまい、動くことのできない状況で死を待つのみだった。
穴の外では、常に爆音と悲痛な叫びが聞こえてきた、その声は確実に1年間この地獄をともにしてきた仲間達の声だ。
「畜生、戦争のくそったれが!なんで俺はこんなふざけた穴で虫みたいに死ぬことになってしまったんだ!ふざけやがって!」
手足が不自由になったボリスにできることは穴の中でこの2年間に起きたことを考えながら死を待つだけだった。