着物の裾が乱れるのも構わず姿勢を崩し、露わになった足はあまりにも白く。
見た目で不自由さは感じとれないが、滑り落ちていく指の流れに惹きつけられる。
穏やかに微笑みながらも物騒な光を宿した瞳を伏せれば、目元に長い睫毛の影が落ちた。
その風情に暫し見とれたまま口を開く。
「家を、出るつもりだ。親を亡くした俺を引き取ってもらった恩は違う形で返そうと思ってる。お前も…」
「和之さん」
最後まで言わせないかのように、押し倒して跨がり首に手をかけていた。
「逃げるつもりですか」
冷たく細い指は震えていた。
いつもの冷静さは消え、責める言葉とは裏腹に揺れる眼差し。
「違う。消える訳じゃあない。お前も俺も踏み出すんだ」
幼い頃に出会った。
男の癖に可憐な容姿でありながら、その内に激しい焔と鋭い刃を隠していることも感じていた。
脆さと、切ない望みも。
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