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「知らぬ初恋 恋い慕い」
――お品書き――
本作品「迷彩帝都の成れの果て」はいずれも政治的意図、戦争賛美、特定の思想を賛美した作品ではありません。また、実際の国家や団体、人物をモデルにしたフィクションです。
“カントリーヒューマンズの二次創作です”
カプ▶︎ソビエト連邦×ナチス・ドイツ(ソナチ)
苦手な方はブラウザバック。
また、1話「千変万化の謹製譚」を見ていない方は其方を先に見ることでさらに楽しむことができます。
____1945年5月9日。ナチス・ドイツは降伏し、独ソ戦は終戦した。この殲滅戦争は大多数の死者を出した非残な戦争。これは、”あったかもしれない”、架空の後日談である。
すぅ、息をするとアルコール等の匂いがツンと鼻を刺激する。ぱち、と目を覚ますとそこは私はとある病室のベッドに横になっていた。目の中に入る光は眩しく、窓から入る暖かな日差しは布団の白を輪郭をぼやかしていた。どうやら私は気を失ってしまったらしい。ここは総統官邸の地下壕では無い。
街中で沸きあがる悲鳴、飲み込んだ青酸カリ、手の中に残る金属の冷たさ。それらを思い出す度、記憶が映像の様に脳裏に焼き付く。疲れきっていた私は思わず呻き声を漏らした。
「うう”…。」
「っ!!ナチッ!!」
ベッドの横の椅子で座っていた1人の人物。軍服に身を包む男。黒い金糸で鎌と槌の刺繍がされた眼帯に、ウシャンカを被る忌々しき敵、ソ連がいた。
ソ連は私の呻き声を聞けばうたた寝していた目を即座に覚まし、私のことを抱き締めた。体温が、冷え切っている私に染みる。突如そんな事をされれば、私は反射的に警戒した素振りを見せる。が彼は何故か涙を浮かべていた。
「良かった……。医者からは危ない状態って言われてて…。」
___そこまでして私を生かしたいのか、と正直、血の気が引いた。此奴は私と思想も国も何もかもが相対する、”敵国”だ。お前とはこの間まで戦争し、血で血を洗う戦いをしていた。血と血を塗り固めた憎悪の歴史そのもの。それなのに、何故だろうか。彼と一緒に居ると私も少し落ち着く気がする。地下壕で自殺を試みた時もそうだった。彼が私の手当をしてくれた時も、意外と心地が悪くなかった。それどころか、安心感までも……。私が唖然としていると、ソ連は何かを決心したように、口を開いた。
「…なぁ、ナチ。」
「俺、お前のことが好きだ。」
ソ連は私をじぃっ、と真っ直ぐな瞳で見つめている。
お陰で、私の回らない思考はさらに回らなくなる。ソ連はぎこちなく笑ってそう告げたのだ。確かに、私のことが好きならば、手当をしたり、生かそうとするのも納得がいく。然し、敵国だった相手に対して告白するとは心底考えが分からない。
「は………?は……?」
心臓の鼓動が鮮明になる。声色が震え、言葉が詰まる。私はソ連の事が嫌いだ。けれど、自然と居心地は悪くない。何故だ。そんな矛盾が交差する。心臓、思考がぐるぐると回るような感覚を押さえつけるよう、息を整える。落ち着くんだ私。
深呼吸をしている私をソ連は真剣に見据えて言葉を発した。
「……変だよな。こないだまで敵国だった相手に告白されるなんて」
私は完全に図星を突かれたように黙ってしまう。私は此奴の事が嫌いだ。大嫌いだ。この前まで戦って___。そう思えば思うほど自分の胸が締め付けられるような感覚がする。葛藤の末、重い口を開く。断ってやろう、と思った。
「…………………………だ」
「なんて?」
聞き返されれば、少し躊躇いが生じる。が、今度こそしっかり断ろう___,と
「わっ、私も貴様の事が好きだと言っているのだっ!!!」
しかし、口から出てきた言葉は考えていたことと真反対の事だった。少し赤く染まる顔は温かいような。ソ連はそれを聞いて安堵したような表情を浮かべる。私はそれを見て先程考えていたことに関して罪悪感を覚えてしまった。
「ぁあぅ”あぁっ…………」
「おおっと。ぇ、な、ナチ?」
突然、私の目からは涙が零れ、ソ連の胸へ顔をうずくめた。段々と涙と鼻水でくしゃくしゃになっていく顔を押し付けるのも申し訳ないと思った。声にも鳴らないような泣き声で泣きじゃくる私をソ連はぎゅ、とやさしく抱き締めてくれた。ソ連の匂いはほんのりと心の中を温めてくれた。あぁ、きっと私も心の中の何処かで思っていたのだ。彼の事が、ソ連の事が好きだったのだと。
―――迷彩帝都の成れの果て2話「知らぬ初恋、恋い慕い」
コメント
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テスト期間に無理やりねじ込んでやっている故、次回の更新は未定です。落ち着いたら3話投げます。