テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ysdさんがダンサー講師、snさんが研究生です。
真夏の事務所のスタジオ、鏡張りの広い部屋に詰め込められた研究生たち。
その中にいる佐野勇斗。
勇斗は研究生の中でも、頭ひとつ実力が上で有名だ。
今日は研究生の特別レッスンの日だった。
外部のダンサーさんが先生として来てくれるらしい。
せっかく来てくださるんだから、盗めるものは全て盗んで帰ってやろう、とやる気満々でレッスンに臨む。
ドアが開く。
入ってきた人を見た瞬間勇斗は固まる。
……え。
やば…。
そこにいたのは吉田仁人というダンサーさん。
彼はいかにもダンサーらしい格好をしていて、
ダボダボの半袖Tシャツにダボダボのスウェット、深めのキャップ。
気だるげに肩にかけたバック。
そして。
顔がとんでもない。
俺のドタイプの顔面だ。
キャップのつばから覗くその顔は、ぷるぷるの唇に、きゅるきゅるの目。
丸顔に魅力的なほくろが多々見える。
本当に顔が好きだ。
たとえ男だとしても流石に一目惚れしてしまう。
__________
仁人は普通に荷物を置き挨拶をする。
「今日はダンス見させてもらいます、吉田です。」
落ち着いた声。
おそらく20歳前後の年上の方だろう。
勇斗の心臓が今までにないくらいドキドキしてある。
レッスン開始。
仁人が前で振りを見せる。
ターン、腰ヒット、胸アイソレ、どこをとって見ても綺麗で文句のつけようがない。
ジャズがルーツだからか、女性的な体の使い方をしている、ダンスのラインが映えてセクシーだ。
言葉を選ばずにいうとエロい。
勇斗は全然集中できなくて、ぼーっと見惚れている。
振りのなかで、腕を上にあげる振りがあった。
吉田先生のTシャツがふわっと捲れる。
腹が見えそうだ。
いや、ギリ見えそうで見えないラインなんだけど…。
いや、見える、頑張って見るんだ俺!!!
俺の自慢の万年視力Aの両目をガン開いて腹を凝視する。
思春期の男を舐めてはいけない。
普段あまり露出されないところが見えそうなだけで興奮が止まらない。
ああー見えなかった。くそが。
そのままレッスンは続いていく。
少し進んで休憩中、水分をとりながら友達に話しかける。
「なあ太智、あの先生めっちゃ可愛いと思わね?」
『はあ?そうか?佐野さんも変な趣味もってしもたな〜!』
『やったら俺は〇〇先生の方が可愛いと思うけどなあ』
「うわ!お前センスな」
『はぁ?!』
そんなことを話していると、吉田先生から休憩終了の声がかかる。
レッスンは続行され、次の振りに移る。
…また腕が上がった!!!
Tシャツがさっきより大きく捲れ上がる。
頼む。頼む。本当に頼む。
俺のこれからのダンス人生これで決まる。
見えろ見えろ見えろ見えろ。
もうダンスどころではない。
研究生、生徒としては最悪だがこれはしょうがないと言っていいだろう。
だって思春期真っ只中だもん…。
完全に腹チラチャンスを逃さぬ獣と化している。
きたー!!!!!!!
腹、見えた!!
…と思った瞬間、
視界に明らか人間の肌の色ではない真っ白の色が飛び込んできた。
白タンクトップだ。
しっかり中に仕込んであった。
は?
ちょ、ガチでそれはずるい。
なんでタンクトップ着ちゃうかな、暑いでしょ、今の季節、脱いだほうがいいよ先生。
ちょ、まじかぁ……。そこは直でしょ…。
絶望でしかなかった。
完全敗北。
正直これからのレッスンのやる気はゼロだ。
その後の振りも話も何も入ってこない。最悪だ。
ぼーっと先生の話を聞き、なんとなく踊る。
さすが先生と言ったところだろうか、吉田先生は1人のやる気がないヤツに気づき、音を止める。
「あ、佐野くん?だよね。」
突然名前呼ばれてびっくりしてしまった。
「は、はい!」
吉田先生は腕組んで睨むように勇斗を見る。
「さっきから全然踊ってないよね。」
図星である。図星すぎて気まずい。
周りのメンバーにはちょっと笑われ、先生には詰められ。
勇斗は内心とんでもなく焦る。
「あ、いや、あの…」
言い訳が何も出ない。
先生が少しこっちに近づいて口を開く。
「集中して。」
軽く言われたがオーラがなんか、やばかった。
てか近くで見ると余計顔綺麗に見えんな。
わざわざ自分に近づいてくれたのが嬉しくて完全にパニックの勇斗。
「はい!!」
少し声は裏返ってしまったが、大きな声で返事をしたため少しは真面目に見えただろう。
そのあとからは頑張って踊るようにした。
でも頭の中はタンクトップに対する怨念の気持ちが半分くらいを占めている。
くっそ、なんで下に着てんだよ。
悔しすぎる。
めちゃくちゃ悔しい。
__________
結局、そのままレッスンを受けていたらレッスンが終わった。
勇斗はスタジオ出ながら決意する。
次こそ絶対に腹を見る。
そこからマネージャーの方に次いつ吉田先生が来るのか聞き続ける日々が続きました。