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「あれは事故ではありませんの?」


フランツは頷く。


「実行犯だけは捕らえてあります。チューザレとの繋がりはまだ掴めていませんがね」


アザレアはそれを受けて言った。


「でも、あの日ミツカッチャ洞窟に私が行ったのは偶然でしてよ?」


あの日、シモーヌにマユリのところに行くとは言ったが、ミツカッチャ洞窟にはたまたま祭事がやっているのに気づいて、気まぐれで出かけている。誰も知る由がない。今度はカルが答える。


「標的は君ではない。洞窟内にいたアングレカム大司教だ。アングレカムこそ、最初に横領疑惑に気づき、僕にこの話を持ってきた大司教だ。逆に君があそこに居たことは、チューザレにとっては大誤算だっただろうな。なんせ君の魔法のせいで素早くアングレカムが助けられてしまったのだからね」


アザレアはそれを否定する。


「いいえ、洞窟内でアングレカム大司教は軽く怪我をされた程度でした。私が居なくとも、洞窟の瓦礫を取り除ければアングレカム大司教は助かったと思います」


カルは頷く。


「もちろん、あの崩落だけでは失敗もあり得る。だが、あの洞窟内部には暗殺者がいたんだ。その暗殺者が崩落事故に見せかけ暗殺する予定になっていたようだ」


カルは大きくため息をつき言った。


「恐ろしいことにね、チューザレはアングレカム一人を暗殺するために、あの事件を起こしたらしい」


アザレアは驚愕した。以前の話し合いでチューザレを見たときは、背中を丸め申し訳なさそうに座っており、そんな残忍な人物には見えなかったからだ。


カルは話を続ける。


「崩落事件についてだが、君が寝込んでいる間に原因究明の調査をした。何年も崩れず、そんな兆候もなしに洞窟が突然崩れるのは、どう考えてもおかしかったからね。で、その過程で爆発を起こす魔石の欠片を発見した。やはりと思ったよ。そこから更に色々捜査して、魔石の入手先からなんとか実行犯にたどり着いた。そこからは、更にいもずる式に暗殺者まで捕らえることができた。前述した通り、チューザレとの繋がりは吐かなかったけどね」


カルはそう言うと肩をすくめた。


「混乱を招かないように、公には事件だったと発表しないことにした。そんなときに国民が君に注目して、この事件について関心が離れたのも良かった」


そう言ったあと


「目立つことの嫌いな君には、嫌な思いをさせてしまったね。申し訳なかった。だが、実際に国民が君を愛し、聖女様と慕う気持ちは本物だ。そこは受け入れて欲しい」


そして頭を下げ、アザレアを心配そうに見つめた。


「話を続けても大丈夫か?」


フランツも心配した様子でアザレアに声をかける。


「あまりにも、色々な情報が入ると人は混乱しショックを受けることがあります。色々なことをアザレア様に隠しておいたのはこちらなのに、こんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、少し休まれてはどうでしょうか?」


しかし、アザレアは今日こそしっかり話をすると決めていたので、カルをまっすぐ見据えて言った。


「いいえ、大丈夫です。話を続けてください」


カルは頷く。


「わかった、君がそう言うなら話を続けるよ。こちらが横領に気づき、調べていることは向こうもとっくに気づいているだろう。結界石が限界に近付いている兆候が少しずつ出始め、近い将来聖女を召喚することになるのを分かっていたチューザレは、その聖女を利用してこの状況をなんとかしようとしていたようだ。だが、そこで問題が発生した。時空属性持ちの者が現れた。君だよ、彼にとってはこれは大誤算だったに違いない。このままでは聖女が召喚されなくなるかもしれない。焦ったチューザレは、君が時空属性持ちなのだと世間に知られる前に、急いで聖女を召喚することにしたのだろう。前倒しで決定的な限界の兆候があったと報告し、先に聖女を召喚したのではないだろうか。あとは自分の思い通りに聖女を操り、君を亡き者にしたのち、聖女を私にあてがい横領の件をうやむやにし、権力を握ろうと企んだのだろう」


カルはそこまで言うと、一息ついた。とんでもない話である。事実なら国の載っとりを企てていると言っても過言ではないのだ。カルは続ける。


「だが、召喚された聖女があれではね。聖女も君と同様に未来のことが少しは分かるようだが、君と違って全くと言っていいほど、その知識を利用できていないしね」


と、心底同情したように言った。


話を聞き終わると、アザレアは大きく息を吐いて立ち上がった。


「少し外の空気を吸いに庭に出ます」


そう言い残して、執務室を後にした。廊下から庭に出てしばらく歩いていると、後ろからカルに声をかけられた。


「追いかけようか迷ったが、こんな時に君を一人にはできない。それに、もう一度謝りたかった。色々隠していて本当にすまない」


そう言って、カルはアザレアの手をとった。アザレアは首をゆるゆると横に振る。


「本当に大丈夫ですわ。それよりカルも大変でしたのね」


カルはギュっとアザレアの手を握る。


「許してくれてありがとう」


そう言って、アザレアの指にキスをし、アザレア見つめて言った。

 

「これからは君に隠し事は絶対にしないと約束する。それに、チューザレのやったことに対する証拠をつかむためにも、今後アズの時空魔法の力を借りるかもしれない。頼りにしている」


アザレアは微笑むと答える。


「今日話してくださったからもういいですわ。それに、カルたちはずっと|私《わたくし》を守ってくださっていたのですのね。ありがとう」


二人はお互いにしばらく見つめ合った。そして手を繋いだまま、無言で庭を歩きはじめる。辺りは静寂につつまれ、二人が落ち葉を踏みしめる音だけがした。


そうして進んで行くと、レッドマジックリリーの花が咲き誇っている場所に出た。


「もうこの花が咲く時期ですのね」


そう言って、花に近づいた。カルも一緒に花に近づく。すると、カルの着けているフラワーホルダーの魔石が青く光って反応した。カルは困惑する。


「アズ、この魔石にはなんの魔力付与がされているんだ?」


アザレアはこんな風に、何かに反応するような魔力は付与していなかったし、何に反応しているかもわからず、困惑した。


「花が枯れないようにする魔力しか付与していませんわ」


そう答えるしかなかった。とりあえず戻ることにして、二人で王宮に向かって歩き始めたところ、魔石の光が消えた。原因が分からず困惑していると、フランツがやってきた。


「しばらくは二人にして差し上げましたが、限界です。それにアザレア様、この気候の中でこれ以上外に居てはお体に障ります。殿下もアザレア様も、中にお戻りください」


二人はブローチのことは後回しにして、部屋に戻ることにした。

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