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天正17年 1589年 2月
相模国 小田原城
「では、行ってきてくれ。」
「はっ。行ってきます。」
「なんとか有利に持ってきてくれ。」
「もちろんでございます。」
「では、行って参ります。」
山城国 京
「よくぞ京まで来てくれた。板部岡江雪斎殿、感謝申し上げるぞ。」
「いえ、滅相もない。」
「そうか。ならば良かった。して、なにようで?」
「今回は沼田について話し合いたいと思っています。」
「ほう、あの真田殿が治めてる地か。あの地は北条も狙っておるとか。」
「はい。しかし、狙ってるとは人聞きが悪うございます。“取り返す”といってほしいです。」
「ほう、というと?」
「北条家はかつて関東を基盤に日の本を支配した一族である鎌倉幕府執権の北条からとっております。そして我々も乱れた関東の支配を目指して努力し、その過程で1552年に北条氏3代目当主、氏康様が上野国を支配したのです。しかしその後、上杉氏や武田氏、織田氏などに移りわたり、織田家臣の滝川氏が支配しました。しかしすぐに本能寺の変が起こり、取り返す好機と思い、見事取り戻したのです。しかし、真田殿はそこに横入りし、沼田領である吾妻郡、利根郡を奪っていったのです。どうか北条に返してくだされ。」
「…よし、それでは裁定する。真田は北条に沼田領の3分の2を還付することとする。」
「つまり…」
「利根川以東、つまり利根郡は北条領、利根川以西、つまり吾妻郡は真田領というわけだ、これなら双方異論はないであろう。」
「代わりに真田殿には他の地を与えてやろう。異論はないな。」
「はっ、ありがたく存じます。」
「ははっ、面を上げい。裁定するのも天下人の役目だ。」
約1ヶ月後
相模国 小田原城
「そうか、そういう結果になったか。」
「納得、いってないですよね。」
「沼田領全て返してもらう予定だったからな。」
「どうするのですか?」
「不満だが、こっちから仕掛けるのは良くない。」
「一旦考えさせてくれ。」
「承知しました。」
6月
「決めたぞ。」
「なにがですか?」
「沼田領の裁定についてだ。」
「どうするのですか?」
「承諾する。そして、上洛する。」
「上洛するのですか!?いやその前に、沼田の件は承諾するのですね。」
「そうだ。そして私自身が上洛しようと思う。そろそろ行かんと危なそうだからな。」
「はい、わかりました。」
7月
「ついに返ってきたな、我が沼田よ。」
「返還された土地には沼田城も含まれております。」
「うむ。何よりだ。西部がないのが少し残念だがな。東部が返ってきたので良いとしよう。」
「そうでございますな。」
数ヶ月後
「後、数ヶ月で上洛ですね。」
「そうだな。」
「それについてだがな、上洛を来年の春か夏まで延ばそうと思っているのだ。」
「何故ですか?」
「まあ、いろいろ、な。」
(殿は上洛する気はあるのだろうか。)
摂津国 大阪城
「先延ばししたいだと!」
「はい。来年のh」
ガッ
「いや許さん!絶対に今年の12月には上洛してもらうぞ。」
「わかりました。そのように申していたと伝えさせておきます。」
「そうしろ!」
(ふっ、これで来なかったらこれを口実に…)
次回 第3話 名胡桃城事件
コメント
1件
第2話、読ませていただきました。歴史の重みと人間の駆け引きがじっくり描かれていて、引き込まれました。特に板部岡江雪斎の京での交渉、秀吉の裁定を受ける緊張感が伝わってきました。北条氏直が内心で納得していないのに、表面上は承諾するしかないもどかしさ…。最後の秀吉の「ふっ」が不気味で、次回の名胡桃城事件がどう動くのか、すごく気になります。史実の空気感を大切にした語り口、とても好きです。続きを楽しみにしています🌿
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