テラーノベル
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セミの部屋には静かな夜の空気が満ちていた。
窓の外からは虫の声だけが聞こえていて、誰にも邪魔されない
────はずだった。
彼女はベッドに深く腰を沈め、ゆっくりと目を閉じる。
ドアには鍵をかけていないけれど、誰も来ないと油断していた。
「……っ、ん……ちゅ……っ……ん、ぅ……」
下着を少しずらし、指先を敏感な部分に触れさせながら、薄く唇を開いて喘ぐ。
ナムギュとの昼の記憶が、脳裏をくすぐるように蘇ってきていた。
「……んっ、は……っ……」
しかし――。
「……なにしてんだよ、クソアマ」
その瞬間、バタン、と勢いよく開いたドアの音にセミの全身が凍りつく。
「なっ……っ!? ちょっ、見んな!!」
慌てて布団をかき寄せて隠すが、指先の湿り気と、頬の熱さはどうやってもごまかせない。
「……は? おま、今……」
ナムギュは一瞬絶句して、眉をひそめる。
怒っているのか、呆れているのか、声のトーンが読めない。
セミは必死で頭を回転させて、口を開いた。
「べ、別に……してないし。なんか、お腹痛くて……! さすってただけ!」
「……は?」
「ほんとにっ! 変な想像しないで。あんたってほんと、そういうとこ最低!」
早口でまくしたてると、ナムギュはジッと彼女を睨みつけた。
「……クソアマ、さすってたにしては顔赤すぎだろ。……声も出てたぞ。『んっ』とか言ってたよな?」
「い、言ってないし! それ、あくびっ!」
「……はぁ……お前さぁ……マジで、あほか?」
そう言いながらナムギュは、少しだけ顔を赤らめてそっぽを向く。けれど、その耳は真っ赤だった。
「とにかく、もう出てって! ドア勝手に開けないでって、前に言ったでしょ!」
「うるせぇよ……別に、お前が勝手に一人で……やってんのが悪いだろ」
「やってないって言ってるじゃん!!」
「はいはい、してないしてない。……腹、痛かっただけな、クソアマ」
ナムギュはそう言って、ニヤリと皮肉っぽく笑いながら、ドアを閉めた。
その背中に枕を投げつけたくなる衝動を、セミは全力でこらえた。
けれど、心臓のドキドキは収まらず、指先の熱もまだ残っていて――なにより、
「見られた」という羞恥が、ずっとセミの中に残っていた。
ナムギュが出ていってから数分。
セミはようやくベッドの上に身体を投げ出したまま、真っ赤になった顔を冷やすように枕に押し当てた。
(最悪……なんであのタイミングで来んの……)
思い出すだけで、全身が熱くなる。
それ以上に、ナムギュの反応――あのジト目と皮肉な笑み――が頭から離れない。
「……見られたって、ほんと……バカじゃないの私……っ」
そう呟いた矢先、ふいに────
「おい、セミヌナ」
「っ!? な、なに!? また来たの!?」
返事を待たずにドアが開く。鍵、やっぱり閉めとけばよかった。
ナムギュはさっきよりもゆるい格好。Tシャツにジャージで、手には缶ジュースを持っていた。
「……ほら。冷たいの。頭冷やせよ、変な声出してたから」
「うるさいっ……!」
缶を受け取りながら、セミは目をそらす。
ナムギュは勝手にベッドの端に腰を下ろした。
「てか、お前さ」
「なに?」
「……俺が見て、嫌だったか?」
その言葉に、セミの身体がピクリと反応した。
「……は? なに言ってんの、あんたが勝手に入ってきただけでしょ」
「そうだけど、でも……なんか、あの顔見たら……」
彼はぽつりと、視線を床に落としながら続ける。
「……触りたくなった」
「っ……なっ……!? ちょっ、バカ言わないでよ……!」
セミが慌てて身を引くと、ナムギュの手がふいに彼女の足首を掴んだ。
細いくるぶしを指先でなぞるように撫でられて、セミの喉がひくりと震える。
「……そのまま嘘ついて、シてないって言って……いつもよりは可愛かったかもな」
「っ……ふざけないで。……放して」
そう言うのに、ナムギュの手はゆっくりと足首から膝へ、そして太ももへと滑ってきた。
「……もう一回、してみろよ。……今度は、俺が見ててやるから」
「なっ……っ、や、だって……っ」
「さっきの続き。……本当は気持ちよかったんだろ?」
ナムギュの手が、セミのショーツの上からじわりと撫でた瞬間────
「っ……ぁ……やめ、っ……」
声が漏れた。
「……ほら、声、我慢できてない。……クソアマ」
いつもみたいに汚く笑いながらも、ナムギュの瞳の奥には、どこか熱くて真剣な色が浮かんでいた。
セミは押し倒され、もどかしそうに身をよじるしかなかった。
嘘も強がりも、もうとっくにバレていた。
ナムギュの手が、セミのショーツの上から指を滑らせる。
「……っ、く……そっ……やめ……っ」
言葉とは裏腹に、セミの脚は力が抜けてしまったように震え、膝がベッドの上で開いてしまっていた。
(なにこれ……あんたなんかに……っ、感じてるわけないのに……!)
「はっ……なんだよ、もう濡れてんじゃん」
ナムギュの声は、いつも通りの皮肉まじりで、でもその声も少し掠れていた。
セミの視線がナムギュの下半身に落ちる。
その膨らみは、嘘をついていない。
「……は? なに勃ってんの……あんたこそ……私のこと、クソアマとか言ってたくせに」
「うるせぇ……お前が色っぽい顔するからだろ……っ!」
「は……っ、バカ……!」
言い合いながらも、視線が合った。お互い、息が少しずつ荒くなっていく。
「……嫌いなんでしょ?あたしのこと」
「……そうだよ。ムカつく。うるせぇし、男たらしだし」
「じゃあ……なんで……そんな顔して……っ」
セミの声が震える。
ナムギュも言葉を返せない。
どちらかが動けば、もう後戻りできないことを、二人とも分かっていた。
それでも────
「……クソアマ、お前こそ……俺のことなんて見下してただろ」
「見下してたよ。……あんたみたいな最低男、大嫌い」
けれど────触れ合っている肌は熱くて、拒絶のはずの言葉が、空気を煽るだけだった。
「なのに……なんで、こんなに……っ」
「知らねぇよ……クソ、俺だって……」
二人の距離が一気に詰まり、唇がぶつかる。
互いの憎しみすら混ざった、乱暴なキス。
だけど、舌が絡んだ瞬間、どちらの身体ももう止まらなかった。
「っ……んぅ……ふ、ぁ……ちゅ……っ」
「はぁ、クソ……やばい……セミヌナ、やばい……っ」
「……うるさい、……っ、なんで……こんなに……」
ふたりとも、嫌いなはずの相手に────
ありえないほど、感じてしまっていた。
「……っ、ちょっと、もうやめてってば……っ」
「うるせぇ……お前が誘ったんだろ」
「誘ってないし……っ、勝手に興奮してきたのあんたじゃん……!」
言葉の応酬。
でも、その間も服はどんどん剥ぎ取られていく。
セミのキャミソールがズルリと肩から落ち、ナムギュの手が乱暴にブラをずらした。
「っ、は……っ、痛いって……」
「じゃあ止めろよ……ほら、言ってみろ。俺なんかに抱かれたくないって……!」
「……大嫌い。ほんと……大嫌い……っ」
そう言ったセミの瞳には、泣きそうなほどの悔しさと、微かに滲んだ快楽。
ナムギュは口角を歪めた。
「俺もだよ……クソアマ。お前みたいな女、だいっきらい」
それでも、彼の手はセミの太ももを割って、濡れた中心に触れている。
「……なにが、嫌いよ……嫌いな人のここ普通触んないでしょ……っ」
「だったら閉じろよ……自分から脚開いてんじゃねぇか、バカが……」
「はっ……あんたこそ、さっきからガチガチに勃ってんの……っ、ほんとは好きなんじゃないの? あたしのこと……」
「誰が……っ、言わせねぇからな……!」
そのまま一気に、ナムギュは自身を押し当てる。
熱と熱が、互いに飲み込まれるように深く────
「っ、あ……ぁ……っ、なに……っ、やば……っ、ふっ……!」
「……クソ、キツ……っ、声……出すな……っ」
「だ、だって……っ、あっ、ふっ……ん、んっ……!」
腰がぶつかるたびに、セミの喉から甘くて激しい声が漏れ出す。
それに応えるように、ナムギュも容赦なく奥を突き上げた。
「……っく、こんな女……抱いてる俺が、馬鹿みたいだ……っ」
「ふざけ、ないで……っ、あんたの方が……さっきから夢中で腰ふってるじゃん……!」
「うるせぇっ……っ、気持ちいいとか、言うな……っ!」
「言ってないっ……バカ……っ、でも……あんたの、中で……あたし……っ、もう……っ!」
互いに憎しみあっているはずなのに、
快感は止まらない。止められない。
繋がったまま、言葉では喧嘩しながら、
身体だけが正直に、奥を求めてぶつかりあう。
「あ、あっ……もうっ、ナムギュ……っ、バカ……!」
「……っ、くそ……お前が……っ、そんなに締めてくるからだろ……!」
最後まで、お互いが譲らず、
泣くほど乱れて、一緒に限界を越えた。
────数分後。
ベッドの上で、汗だくになって肩で息をする二人。
沈黙の中、セミがふと目をそらしながら言った。
「……ほんと、大嫌い」
「……俺もだよ、クソアマ」
けど、離れたくなくて。
まだ、お互いの中が熱くて────
もう一度、ナムギュがセミの腰を引き寄せた。
「……は、あっ……まだ、っ……?」
セミの身体がびくりと跳ねた。
まだ熱が引かないまま、ナムギュの指が再び中を探る。
「……お前、何回イったら気がすむんだよ」
「……っ、それは……あんたのせいでしょ……っ」
そう言い返しながらも、声が震えていた。
さっきまで激しく突かれた膣は敏感になりすぎて、指が触れるだけでもビクついてしまう。
「……もう無理。ほんとに……やだってば……」
「やだって言いながら、また濡れてんじゃねぇか……」
「うるさい……っ、キモい……ほんと無理……!」
セミがそう罵っても、ナムギュの顔はニヤついたまま。
自分の下で、睨みながら震えてるセミの身体に、彼はまた火がつくように勃起していた。
「……無理とか言って、俺の挿れたらまた締めるんだろ。……クソアマが」
「バカ……! そんなわけ……っ」
言い終わる前に、彼が自分のものを当ててくる。
「……っ、やめ……ちょ、待って……んっ、あぁっ……!」
ぐぷっ、とゆっくり押し込まれて、セミの声が裏返った。
「ほらな……やっぱ締めてんじゃん」
「っ、うるさい……っ、ほんと……死ね……!」
「お前もな……でも、気持ちいいんだろ?」
ナムギュがゆっくり、腰を動かし始める。
潤んだ熱が絡んで、ぬちゅ、ぬちゅといやらしい音を立てる。
「っ、あ……ぁっ……ん、く、っ……」
セミは口を開いて反論しようとするけど、喉から出るのは喘ぎだけだった。
「……はぁ、っ、やっぱお前……中、エロすぎ……」
「……し、知らない……っ、あんたのが、変なんでしょ……っ」
「変でもなんでもいいわ。……セミヌナの中、最高すぎて……やば」
そう言いながら、ナムギュは奥までぐっと突き上げた。
「っあ……っ、ああぁっ……!」
「またイきそうなんだろ。……どーせ俺のが欲しくてたまんねぇんだよ、クソアマ」
「うるさっ……い、ん、ばか……! ばか、ばかっ……!」
暴言と喘ぎが混じる部屋。
セミの背中がベッドに叩きつけられるたび、胸も揺れて、ナムギュはそれを口に含む。
「……っ、ちゅ、ぅ、んっ……ん……く、ふぅ……っ」
「乳首もこんなに固くして……っ、マジでえろいな、テメェ」
「やめ……っ、キモい……んっ、ああぁ……!」
でも、やめられない。
嫌いって言ってるはずなのにからだの相性が良すぎて快楽がすぐに支配してくる。
ナムギュの動きが激しくなるたび、ベッドがきしむ音とセミの喘ぎが交差する。
「……もう……無理……っ、イく、っ……っ……!」
「俺も……出す……中で出すから……!」
「バカ、っ、ほんとバカ……あっ、あっ、あっ……!」
そしてまた、一緒に――限界を超えた。
汗だくの身体を重ねて、しばらく言葉もなく。
やがてセミが、荒い息のまま睨む。
「……次、勝手にまた挿れたら殺すから」
「……じゃあ、殺される覚悟でまたやるわ」
互いに睨みながらも、
どこか、ふたりの指先はそっと繋がっていた。
朝。
カーテン越しに柔らかな光が差し込む部屋の中、セミは目を覚ました瞬間、昨夜の記憶が全身に一気にぶり返してきた。
(……最悪)
シーツはまだ、湿った熱を帯びている。
横を見れば、そこには……ナムギュが裸のまま、腕を枕代わりに眠っていた。
「……嘘でしょ」
小さな声でつぶやいて、そっとベッドから抜け出す。
身体のあちこちがじんわり痛くて、歩くたびに脚の内側が擦れて思い出してしまう。
(……あんなの、ただの勢いだったし……!)
シャワーを浴びながらも、ナムギュに言われたひとつひとつの言葉が脳内で繰り返される。
「締めてるじゃん」とか、
「気持ちいいんだろ」とか。
「……うるさい、ほんと、死ね……」
でも――
セミの手が、シャワーの水の中で、無意識に自分の下腹部に触れた時、
そこがまだじんと熱を帯びていて、言葉よりずっと正直に“昨夜”を覚えていた。
同じ頃、ナムギュもゆっくり目を覚ます。
「あ……クソ……」
ベッドの右側、空になっていた。
昨日の記憶が、じわじわと喉元まで込み上げてくる。
「……やっちまったな……」
そうぼやきながらも、
ナムギュの視線はセミの使っていた枕を見てしまう。
髪の匂いが、まだそこに残っていて、
吐き捨てたはずの“クソアマ”という言葉が、今はどこか……空々しく聞こえた。
リビング。
着替えを終えたセミがソファに座っていると、ナムギュが後から来て、視線が一瞬だけぶつかった。
でも────
「……昨日のこと、忘れて」
セミが先に口を開いた。
「は?」
「……言わないで、誰にも。あんたも私も……酔ってたってことにしよ。てか、ほんと無かったことにして」
「……」
ナムギュは黙ったまま、缶コーヒーのプルタブを開けた。
しゅっ、と小さな音がしても、沈黙は消えない。
「別に、特別とか、そういうんじゃないし」
「知ってるよ。……俺も、別に……お前なんかと、付き合う気ねーし」
「うん。こっちこそ」
だから、視線も合わせない。
だから、お互い何も言わない。
でも、唇はまだ、昨夜の味を覚えていて。
指先には、触れた肌の感触が残っていて。
(……なんで、こんなに気になるの)
(……クソアマのくせに、思い出すな)
曖昧な距離を置いたまま、ふたりはいつも通りを演じる。
――けれど、もう“いつも通り”には戻れなかった。
翌日。
リビングの空気はどこか落ち着かない。
セミは一昨日の余韻――というか、ナムギュとの“あれ”が、頭から離れずにいた。
(……あんなの、何……)
(ただの、嫉妬? 遊び? それとも……)
それを確かめようにも、今朝のナムギュはいつも通りの仏頂面で、話しかけてもこなかった。
(……まぁ、そんなもんだよね)
と、自分に言い聞かせた。
セミはベランダに出て、ひとりぼんやりしていた。
そこに――扉の開く音。
「……ここいたのか」
ナムギュだった。
「あんたがベランダ来るなんて珍しいね」
セミは笑いながらも、どこか目を合わせられなかった。
ナムギュは無言で彼女の隣に立ち、缶ジュースを無言で差し出す。
セミが受け取って、一口。
「……一昨日のこと、なかったことにしたいの?」
ナムギュは答えなかった。
でもその代わり――少しだけ、ぎこちない声で言った。
「……たぶん、俺さ」
「ん?」
「お前のこと、ずっと気になってたんだと思う」
セミは思わず彼を見上げる。
ナムギュはその視線から逃げるように、遠くを見ながら続ける。
「ムカつくし、うるさいし、……マジで合わねーって思ってたけど」
「……ひど」
「でも……他の男と話してたり、兄貴に触られてんの見ると……腹立ってどうしようもなくなる」
風が吹いた。
セミの髪が揺れる。
「……嫉妬ってやつ?」
「……たぶん、そう」
ナムギュは少しだけ顔を赤くして、でも言った。
「だから……お前も、他に行くなよ」
「……」
「俺のこと、嫌いでもいいから。……それでも、俺だけ見てろ」
それが、ナムギュなりの告白だった。
不器用で、遠回しで、でもまっすぐな気持ち。
セミは一瞬黙って────
ふっと笑って、小さく返した。
「……じゃあ、“嫌いだけど好き”ってことで、いい?」
ナムギュの耳が真っ赤になる。
「……は? なにそれ……」
「ふふ、いいじゃん。お互い様でしょ?」
ふたりの距離は、昨日よりずっと近づいていた。
コメント
7件
はぁぁぁぁ‼️好きすぎます…🥹💕 いいね2000まで飛ばしました…🥹❤
神だぁ、、、神がうまれたぁ、、、拝め拝め、、、今回も最高すぎます〜!お互いツンケンしてるのがタイトルにあっててほんとに最高、、、尊い、、、
あッ好きぃ♡