(注意点)
100%妄想です
酷い怪我や流血の表現があります
敵キャラが喋ります
言葉遣いなど解釈違いでしたらすみません
途中不穏ですがハッピーエンドです
長文で申し訳ないです
大丈夫な方はこのままお進みください
暑い夏の日。
ディティカは先日の戦いにより負傷し、暫く任務はお休みさせてもらっていた。
既に今は全員ほぼ完治し、穏やかな昼下がりを 各々過ごしている。
3人が其々の部屋でくつろいでいる時に、伊波が帰宅した。
伊波「ただいまー!本部から差し入れ貰ったよー!」
その声を聞いて星導と叢雲が自室の部屋から出てきた。
叢雲「おかえりー。なんやそれ、なんかシャレとるやん。」
伊波「なんかね、先日俺たちが助けた人が、お礼に持ってきてくれたんだって。」
星導「フルーツ系フレーバーのアイスティーですね。わー美味しそう。」
叢雲「え、水に溶ける粉末状なんてあるんや。夏にピッタリやん。」
伊波「まじで!?よく見てなかった!じゃあ今からキンキンに冷えた氷水でアイスティー作るね!何味が良い?」
3人でパッケージをまじまじと見ながら楽しそうに選んでいく。
伊波「俺レモンティーかな!サッパリしてそうじゃん?」
叢雲「じゃピーチティー!今甘いもん飲みたい気分や。」
星導「アップルティー貰って良いですか?で、まだ来ない小柳くんは残ったマスカットティーということで。」
小柳「おい勝手に決めんなよ。」
眠そうに目を擦りながら小柳がやってきた。
昼寝から覚めたばかりなようで、とても眠そうだ。
星導「え、マスカット嫌いですか?」
小柳「別に良いけど、。ふぁぁ、顔洗ってくる。」
あくびをしながら洗面所へ向かった。
もう氷水を4つのコップに準備していた伊波は、チョイスされたフレーバーティーの粉を混ぜながら鼻歌を歌っている。
黄色、ピンク、赤、緑、味に合わせて綺麗な色が付いて、叢雲も「映えやん」と浮かれている。
3人着席状態で小柳を待つが、なかなかやって来ない。
星導「小柳くーん、まだですか?先飲んじゃいますからねー!」
小柳「ん〜。」
と気怠げにタオルで顔を拭きながら帰ってきた。
伊波と星導は、夏で暑かった事もあり、半分ほどごくごくと一気に飲んだ。
伊波は「甘ーい!」と笑顔を綻ばせた。
叢雲はひと口、口内に含んだ時点で「ん?」と眉間に皺を寄せた。
一歩遅れて来た小柳はグラスを口元まで近付けると、その瞬間険しい表情に一変した。
小柳「飲むな!毒だ!」
嗅覚の優れている小柳にはすぐに分かった。
これは致死量の強い毒だ。
叢雲は口に含んでいた紅茶をシンクにペッと吐き出した。
修行の時に訓練していたので、毒に関しては知識があった。
叢雲「これやっぱおかしいやんな。口に入れただけで分かったわ。」
問題は勢いよく飲んだ2人。
普通の人間の味覚と嗅覚では気付かなかった。
強い甘みと香りで誤魔化されていて、常人には分かるはずがなかった。
場が凍りつく。
最初に動き出したのは伊波だった。
ガタガタと震えだし、呼吸が乱れ始めた。
ブワッと冷や汗を全身に纏うと、脱力して椅子から転げ落ちた。
小柳「ライ!!」
隣に座っていた小柳が、頭を打たないように咄嗟に身体を抱えた。
叢雲があちこちの部屋や自分の持ち物を慌てて探り出し、やっと見つけたのは1つの解毒剤だった。
叢雲「あかん、1つしか持っとらんかった。」
星導「早くそれをライに!」
叢雲「おまえもガッツリ毒飲んだやろ!せめて半分ずつ分けや!急いでもう1つ持ってくるから、それまで待っとけ!」
星導「ライのがやばいの一目瞭然でしょう。俺は人間より回復力高いから、大丈夫ですよ。」
そう言って明らかに強がっている星導も、既に震えが始まり、呼吸が乱れ出す。倒れるとはいかないものの、時間の問題だろう。
小柳「てめぇも人のこと言えねえ状態だろうが!半分ずつ飲め!」
叢雲が走ってコップに水を注いで持ってきた。
星導「は〜、分かりました。水と解毒薬を貸してください。」
そう言うと星導は、自分で半分を水で服用し、伊波に残り半分を水で飲ませた。
と、見せかけて、、
自分は飲んだフリをして、全量の解毒剤を伊波に飲ませていた。
数分後に伊波の震えは止まり、少しラクそうな呼吸に変わった。
叢雲「今すぐもう1つ解毒剤貰って来るから、狼はその2人の様子見といてな。」
小柳「おう、一旦寝かせてとくわ。」
そういうと、既に意識を失っている伊波を運びソファに寝かせた。
星導「俺はちょっと、外の空気吸ってきます。気分スッキリすると思うんで。」
と笑顔で明るく言うと、足早に部屋を出ていった。
小柳「病人なんだからすぐ戻れよ。」
伊波の額の汗を拭き取りながら、背中越しに言葉を返す。
実は結構ギリギリだった。
人より回復力と頑丈さがあるとしても、致死量の毒はかなり辛い。
身体が内部から蝕まれていく。
一歩一歩、歩く毎に身体が重くなっていく。
意識が朦朧としてきた。冷や汗と震えも今となってだいぶ酷くなった。
裏口へと続く廊下でついに片膝をつくと、「ごぼっ」と口から血が大量に溢れた。
本格的にやばいかもしれない。
廊下に血溜まりを作ったまま、這うように裏口から外へ出ると、気持ちいい風が頬を撫でる。
そのホッとした気持ち良さに、そのままスゥと意識を手放した。
そこへ、1人の黒い人影がやってきた。
敵「あっさりバレるかと思ったが、この1人は仕留められたな。しかも自分から外へ出るとは。良い土産ができた。」
今回、嘘をついて毒入り紅茶を送ってきたのは敵だった。
しかも、飲んだかどうか様子をこっそり見に来た敵に、バッタリ会ってしまった。
これ好都合と敵は星導を抱え、あっさりと連れ去った。
小柳は少し違和感に気付いていた。
あまりに伊波の回復が早い。
毒を飲んで、半量だけの解毒剤を飲み、まだ15分というのに、すでにすっかり症状は回復しており、顔色も良い。
なぜだ。
そして、すぐに戻って来ない星導。
小柳「まさかあいつ!!」
部屋を勢いよく出て廊下を見ると、大きな血溜まり。
そこから這うように裏口へと続く血痕。
走って裏口戸をバンと開けると、そこには誰もいなかった。
そして誰かもう1人の足跡。
すぐに頭の中で繋がった。
星導が伊波に解毒薬を全量飲ませ、伊波は回復。自分は叢雲が来るまでひっそりと1人で耐え忍ぶつもりだったのだろう。
そこへ敵と遭遇し、連れ去られた。
小柳「チッ!!あの馬鹿野郎!」
あいつならやりかねない。
自分より酷く苦しむ仲間を助かる為に、また自分を犠牲にしやがった。
あいつは自分が苦しむ事を厭わないくせに、仲間が苦しむ事は耐えられない。
そうだった。そういうやつだった。
そしてそのまま誘拐された。
今はその敵にも、星導にも、同じくらい苛立ちが込み上げる。
とりあえず伊波の元へ戻ると、肩で息をするほど全力で走ってきたのであろう叢雲が、「持ってきたで!」と誇らしげに解毒剤を掲げた。
小柳は悔しさ隠せない口調で、全てを説明した。
全力で持ってきたのに、使うべき仲間は、ここにはいない。
叢雲「はぁ?!あのタコなにやっとんねん!!」
叢雲も怒りを露わに、解毒剤を床に叩きつけた。
小柳がそれを拾い上げ、「どうする?」と問いかける。
今は敵からの指示が無いと何にもできない。
今どこにいるのか、解放条件は、待つ事しかできない。
とりあえず、まだ起きない伊波と、仕方なく一晩を明かした。
すると翌朝、玄関には手紙が差し込まれていた。
それは敵からの手紙だった。
『仲間は預かった。ヒーローたち全員の機密データを持って、0000時に0000まで来い。来なければ仲間はこのまま死ぬ。』
機密データというのは、ヒーロー達の個人情報だ。
これが漏れると、ヒーロー達の家族や身内、仲間達全体が危険に晒される。
小柳「こんなん、、本部が許す訳ないだろ、、」
叢雲「星導の命と、大勢の命が天秤にかけられとる、、まじで最悪のパターンや。」
伊波「本当にごめん、、俺のせいで、、」
今朝完全回復し、状況を聞いた伊波が、目を潤ませながら謝罪する。
叢雲「ライのせいやない。あいつがアホな事したせいや。」
伊波「でも、俺まじで死ぬかと思った、、星導が薬全部くれなかったら、、本当にどうなってたか、、」
しゅんと再び頭を下げる。
小柳はため息をつきながら片手で顔をしばらく覆うと、考えながら俯く。
すると決意した表情でばっと顔をあげた。
「本部はデータの流出を絶対に許すはずがない。だから、俺1人でデータをこっそり抜いて持ってく。」
伊波「そんなことさせられないよ!バレたらクビじゃすまないよ!」
叢雲「お前もアホか!そんなこと俺らが許すわけないやろ!」
小柳「じゃあどうしろって言うんだ!」
小柳が2人より大きな声をあげると、一瞬シンとする。
誰も何も言わないまま、沈黙が続いた。
その頃、敵のアジトの床に転がされてる星導は、やっと少し意識が回復した。
でも体調は最悪で、立ち上がる事はできないし、呼吸も苦しい。
上半身だけなんとか持ち上げると、何かが込み上げてきて、口からドポっと溢れ出た。
床を真っ赤に染め、まだまだ回復どころか、自分が死にかけ状態なのだと分かった。
体勢を変える力もなく、その血溜まりにパシャリと沈む。
敵「おまえの命もあと少しか。極秘データが届くが先か、死が先か、、まあ、1秒でも長く頑張ることだ。」
コツコツと近付いてきた敵は、星導を冷たく見下ろした。
星導「、、データ?、、あぁ、そういうことですか、じゃあそうなれば、、交渉決裂、ですね、、」
にこりと微笑みながら、敵を見上げた。
敵「あまり調子になるなよ死に損ないが。こちらはいつでも殺せるんだからな。」
そういうと、ナイフで太腿をザクリと刺した。
星導「ゔっ!、、、どうぞ、殺してください、、人質なんてごめんです、、」
敵はムッとした表情を見せ、さらに肩にザクリと刺した。
星導「ぐ、、!」
再度敵がナイフを振り上げた時だった。
小柳「やめろ!!」
勢いよく扉を蹴破った小柳と、伊波と叢雲が部屋に飛び込んできた。
そう、結局、3人で極秘データを抜き取ってここへ来てしまったのだ。
しかし皆、後悔はしていない。
仲間を絶対に救いたい。
思いは一緒だった。
伊波「これが欲しかったんだろ!早く星導返せよ!」
USBを敵の足元へ投げた。
敵「思ってたより早かったですね。、、まさか、、本部から盗みましたね!」
敵はケラケラと笑った。
敵「ヒーローが悪事を働くとは滑稽な!」
叢雲「悪事はお前や!毒に誘拐!おまえのせいや!」
小柳「約束通り、それがデータだ。星導を返せ!」
敵「それほどまでにこの人質が大事とは。作戦は大成功だな。」
そう言うと、ナイフを倒れている星導の首筋に当てた。
叢雲「おい!てめぇ!!何しとんねん!!」
3人は一斉に武器を構えた。
敵「データは手に入った、この人質は、お前達3人が自害した後にお返ししよう。」
伊波「おいお前!ふざけんな!」
3人が走り出すが、首に当てたナイフにグッと力が入り、一筋の血が流れた。
皆の足がピタリと止まる。
敵「ふざけてなどいない。」
敵はにやりと笑った。
星導もにやりと笑った。
USBを拾い上げる。
星導「お返しします。」
と言うと、小柳に向かってポイと投げた。
小柳「は?!」
敵「は?!」
驚いた顔してキャッチすると、敵も同じ顔をしていた。
その一瞬の隙を付き、星導は首に当てられたナイフに思い切り力をこめた。
ドバッと血飛沫が舞う。
あまりに突然の出来事に、誰もが理解できず硬直している。
星導「ざん、、ねん、でしたね、、。
交、渉は、、決裂、、です、、。」
ヒュゥヒュウと苦しそうな呼吸を漏らしながら、しかし満足げな表情で目を細めた。
星導「、、人質、は、しに、ます、、。おかえり、、くださ、い、、、、。」
その言葉を最後に、目を閉じ、体は動かなくなった。
とても穏やかな表情だった。
伊波・叢雲「星導ーーッ!!!!」
2人は星導に駆け寄った。
敵は人質を失い、データも奪えず、悔しそうな顔をしながら速やかに撤退した。
しかし出口の前には小柳が既に立ち塞がっていた。
フーフー!と怒りに震えた顔で刀を構える。
敵は腰から銃を取り出し、「どけ!!」と叫びながらバンバン発砲した。
小柳は軽々と避け、敵の背後に回る。
小柳「てめぇは生きて帰さない。抜刀!!」
敵の首が飛んだ。
床に転がるそれを、虚しい目で見下ろす。
結局こんな結果になってしまった。
敵を倒しても、データを守れても、最悪の結果になってしまった。
しばらく3人の場所を振り返れずに俯いていた。
そこへ、部屋に響く叫び声。
それは紛れもない星導のもの。
振り返ると、伊波が星導に抱きついていた。
星導「痛い痛い!!そこ触らないで!!」
叢雲が隣でポカンと口を開けていた。
伊波「生きててよかった、!!本当に!!ほしるべぇぇ!!」
涙に濡れた顔を星導の胸にグリグリ当てながら叫ぶ。
小柳「は?あいつなんで生きてんだ?!」
叢雲「、、意味がわからん。」
星導「あ、これですか?深く切ってないですよ?切る時に床の血すくって飛ばしたから、派手に出血したように見えただけです。」
小柳「演技かよこの野郎!!!」
星導の頭をベシっと叩いた。
叢雲は最大なため息をつきながら床に寝転んだ。
叢雲「まじ最悪やコイツ。」
伊波「星導のバカぁー!でもほんとよがったぁー!!」
さらにギュッとすると星導は痛みを訴える。
星導「ライ!ストップ!俺まだ解毒も止血もできてないから!痛い痛い!!」
小柳「ざまあみやがれ!反省しろ!毎度毎度てめぇは本当に、、!」
叢雲「こいつ解毒せんでええんやない?」
星導「すみませんすみません!まだめっちゃ気持ち悪いので解毒お願いします!」
しばらくその場でお説教され、本気で言ってるのか分からない「反省してます〜」という言質を取る。
案外ヘラヘラしてると思いきや、突然ごばっと吐血すると、床に突っ伏し、気絶した。
3人が慌てて解毒剤を飲ませ、連れて帰った。
後日、星導には『痩せ我慢王』と言う無様な二つ名を付けられて不貞腐れていた。
本当にこいつは反省してるのか?
星導のこういう部分には注意が必要だと心に誓った。
仲間を助けたい気持ちは皆同じだから。
コメント
2件
え、、めちゃくちゃ好きです!!すごく面白かった!!