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フローレンの観察日記

ある晴れた日の午後、フローレンはムーミン屋敷のテラスで、真新しいノートを開いてペンを走らせていた。彼女の「観察日誌」だ。今日のテーマも、もちろんムーミンスニフの関係について。

「ふむふむ…ムーミンはスニフが困っていると、すぐに駆けつける傾向があるわね。そしてスニフは、ムーミンには少しだけ甘えるのが上手い…」

フローレンは熱心に書き込みながら、庭で遊ぶ二人をそっと見つめていた。ムーミンが花壇の手入れをしていると、スニフが虫を見つけて「わー!ムーミン、見て!」と大騒ぎしている。ムーミンはそんなスニフを「うるさいなぁ、スニフは!」と叱るふりをしながらも、結局は虫を追い払ってあげていた。

「あら、ムーミンったら、また『チビ』って言ってるわ」フローレンはクスリと笑った。しかし、スニフは怒るどころか、少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

その日の夕食後、ムーミンがお皿を洗っていると、スニフが突然、フローレンに話しかけた。

「ねぇ、フローレン。ムーミンってさ、僕のこといつもチビチビって言うだろ?あれ、どう思う?」

スニフの突然の問いに、フローレンは内心で「来たわね!」とほくそ笑んだ。彼女は優雅にカップを置き、にこやかに答える。

「あら、スニフ。ムーミンはね、スニフにしかそんなこと言わないわよ」

スニフはキョトンとした顔をした。

「え、そうなの?他のみんなには言わないの?」

「ええ、もちろんよ。それはね、きっとムーミンがスニフのこと、特別だと思っているからじゃないかしら?」

フローレンはムーミンの方をちらりと見た。ムーミンは皿を洗う手を止め、耳を澄ませている。その背中が、わずかに緊張しているのがフローレンには分かった。

スニフはフローレンの言葉に、頬を赤く染めた。そして、少しだけ俯いて、小さな声で呟いた。

「特別…かぁ」

その言葉は、ムーミンの耳にもはっきりと届いていた。ムーミンの心臓は、ドクンと大きく跳ねる。フローレンは、まるで二人の心の動きを読み取っているかのように、にっこりと微笑んだ。

「そうよ。だから、スニフがムーミンのことをどう思っているのか、もっと素直に伝えてあげたらいいのにって、私は思うわ」

フローレンの言葉は、まるで魔法の呪文のようだった。スニフは、チラリとムーミンの方を見た。ムーミンはまだ皿を洗っているふりをしているが、その耳は真っ赤だ。

「え、でも…その、僕が言いたいことなんて…」

スニフは言い淀む。ムーミンもまた、心の中で「言え!スニフ!僕も言いたい!」と叫んでいた。だが、どちらも一歩を踏み出す勇気がない。

フローレンは満足げに、そっとペンをノートに走らせた。

「ふふ、まあ、二人のペースで、ゆっくりね」

そして、心の中でそっと付け加える。「でも、見てる方はそろそろ限界よ?」と。キッチンには、皿を洗う水音と、二人のもどかしい想いが、静かに響いていた。

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