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薄曇りの空。
父の営む、旅館の料理店の中からみる外の景色はいつもよりさめざめと暗くみえた。
「今日は畑中さん来てないのね」
「行方不明なんだってさ。」
「まーた『影』が出たのかなぁユリも気をつけなよぉ?」
「だいじょぶ、私があーちゃんのこと守るもんっ」
常連の女の子たちの噂話が聞こえる。
『影』というのは最近の行方不明事件の犯人だと言われているもの。最近のちょっとしたトピックである。
日比谷蒼介は騒がしい店内を背に、ドアノブに手をかけ歩き出す。
「あ、そーちゃんお出かけ?」
「今からはやめときなよォ子どもは寝なさいっ」
いつにもまして絡んでくる「ユリ」と「あーちゃん」に、何となく言い返す。
「別にそんな遠く行くわけじゃないから気にしなくていいよ!」
2人も負けじと言い返してくる。
「最近物騒じゃない。ほら」
『ここのお客さんも4分の1くらい減っちゃったし』
確かにこのところ特に行方不明の人が多い。蒼介は怪物のようなものを信じているわけではなかったが、物騒なのは理解していた。
「…じゃあもう戻るや」
「おやすみぃー」
「ちゃんとお風呂とおトイレいけよー」
いつもの調子で赤ちゃん扱いしてくる「ユリ」と「あーちゃん」にやっぱり悪態をつきながら階段を駆け上がった。
深夜12時。蒼介はまだ寝つけずにベッドにいた。
しかし何分かたつうちにうとうとと夢の世界に入っていった。
どこかで誰かの荒い息遣いと押し殺したような悲鳴が聞こえた気がした。
ジリリリリ、、
いつもの朝。みんなに挨拶してお客さんとともに食卓につく。
「あれ」
周りを見渡し、あの二人がいないことに気づく。
「田中さんおはよ!ゆりさんとあんずさん、知らない?」
「知らんな。昨日の夜コンビニに行くとか言っとったがな。」
脳裏を『影』のことが掠める。
犯罪に巻き込まれたのか。
でもあの二人のことだからふらっと帰ってくるかもしれない、、
昨日話していた内容だけに、冷や汗はどんどん増していくばかりだった。
ーもしかして、昨日の声って、?
なんだか心配になって、街を回って探した。
しかし、夜になっても会えることは無かった。
深夜12時。昨日くらいの時間になった。
目の前に、髪の長い女性のシルエットが浮かぶ。それはまるで、ゆりさんのそれのようだった。
「待ってたのよそーちゃん、、」
影の形が変化して、怪物のような形になり、ニタリニタリと笑う。
「みんなでねぇ!」
真っ黒いいくつもの影がかかり、蒼介に襲いかかってきた。
「あ、っ」
道の端にあった鉄の棒で何とか振り払うが何度も何度も絡みついて攻撃してくるそれには勝てない。
ゴツっ
「あでっ」
頭に落ちて来た硬いものは、銃のようだった。
「う、うわっ」
襲いかかってきたそれに向かって、蒼介はやけくそで1発、、
バーンっ
撃った。その頭の上に…
ドスッ
ゴキっ
「おおっと、ごめんよ」
そこには金色に光る長めの髪をした男の子がいた。
その後ろから耳(?)のついた小さな女の子がぴょこっと顔をだす。
「落としちった、、って」
「あっれえ?俺の任務ってこいつら倒すことじゃなかったっけぇ?なんで終わってんの?」
男は、辺りを見回し、弱っている怪物と蒼介、蒼介の持っている銃と後ろの女の子を見比べた。
きょとんとした目をして、女の子は蒼介を指さす。
男も頷いて、蒼介の前に腰を下ろした。
「きみぃ、何歳?」
金髪男は蒼介に尋ねる。
「えっうっ次中1ですっあのっすいません、」
「君さあ、、戦闘漫画とかキョーミない?」
急に関係の無い話を始めた男に蒼介はきょとんとする。
「さ、さあ、、ありますけど」
「じゃあさ」
にやにやして男は言う。
「お引越し、しよっか。君も戦士になろーではないかぁ!」
「へ?」
ぱちっ
(目を覚ます)
「ここ、どこぉぉぉ!!!」