ユズとリクは目を覚ました。
夜の寒さから少し解放され、体が暖まっていることに安堵した。
「おはよう、リク。よく眠れた?」
「うん」
二人はおばさんが持たせてくれたパンを食べた。
いつも食べているパン。
いつもと違う場所。
同じ味、同じ硬さ。それでもとても新鮮に感じた。
少し大人になった気分だった。
パンを食べ終わると、すぐに旅を続ける準備を始めた。
小屋を出ると、森の中の静寂が二人を包んだ。灰色の雪は降り続け、辺り一面は幻想的な光景に包まれている。
「今日は森を抜けられるといいね。」
「うん」
森の奥深くへと進むと、道が次第に険しくなり、木々の間を縫うように歩くのが難しくなってきた。枝が道を塞ぎ、雪が積もった場所では足を取られることもあった。それでも二人は決して諦めず、互いに支え合いながら前へ進んだ。
「少し休もっか」
「そうだね」
2人は大きな木の幹に腰を下ろし、息を整えた。
火を焚き、温まる準備をしていると、微かな音が聞こえてきた。
ユズとリクは耳を澄ませてその音を聞き取ろうとした。
「誰かが近づいてくるみたいだ」
ユズは警戒心を抱きながら言った。
しばらくして、一人の老人が木々の向こうから現れた。長い白髪と髭を持ち、古びたコートをまとったその老人は、杖をつきながらまっすぐこちらに歩いてきた。
「こんにちは。ここで何をしているのかね?」
老人は優しい笑顔を浮かべながら二人に近づいてきた。
「こんにちは。私たちは外を目指して旅をしているんです」
老人は興味深そうに二人を見つめ、
そして微笑んだ。
「外の世界、、か。若い者たちは冒険心に満ちているな。なにが目的じゃ?」
「知りたい」
まっすぐなユズの目。
老人は少し考え、口にした。
「旅は過程が大事じゃ。目的を達成したときにそれが自分の描く理想でなくとも、それには意味がある。わしはここから北、【リナリア】という街から来たんじゃ。まだ行く当てがないのでありゃぁ、寄ってみるといい。すぐそこじゃよ。」
そう言って杖を指した。
「わかった。ありがとう」
老人はまた微笑み、私たちが来た方向へとゆっくり歩いて行った。
私たちもまた、まっすぐと 言われた方向に歩き始めた。
森を抜けた。雲間から降る微かな日差しがとても眩しく感じる。
遠くに大きな街が見えた。
遠くからでも分かる大きな建物が立ち並び、2人は目を見張った。
「リク、見て!」
ユズは感嘆の声を上げた。
「すごいね」
冒険を初め、初めての街。
ユズは疲れを忘れたように走り出し、
リクも引っ張られるように走り出した。