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「じゃあ……自己紹介だけぱぱっと終わらせたいから雨乃、暇くんの隣、
空いてるから、そこ座って」
「はーい」
先生の視線が向いたのは、窓際。
無言で外を眺めていた男子―暇なつ―の
隣の席だった。
こさめはすっと歩いていき、
静かに鞄を置いて座った。
けれどなつは、ちらりとも見ない。
窓の外を見たまま、無言だった。
(この人も俺のこと見てないのかよッ!!)
斎藤先生が手を叩く。
「じゃ、恒例のやつやるか。
自己紹介、先生が名前適当に呼んでいくから呼ばれてら立って名前と趣味とか言え。」
自己紹介がどんどん自己紹介が進み
「次、らん」
前の方に座っていた前髪だけピンクな男子が立ち上がった。
どこか不思議な雰囲気を纏っている。
「LANって言います。
趣味はぱっと思いつくものありませんが
スイーツとかが好きです?……以上」
微妙な空気が流れる。けれど本人はまったく気にしていない様子で、すとんと座る。
「えーと次すち」
先生から名前が呼ばれても反応もしなけれ
ば立ち上がりもしない。
「おい…すち、寝るな~」
そう言われてもびくともしないので先生が
なぜか変わりに自己紹介し始めた
(今寝てるこいつがすちでえーなんだ
………、ん?真面目な顔してピアスつけて
やがるこいつ そんなやつだ)
クラスは大盛り上がり
それはそうだろう、ほんのしたボケと
ツッコミができる先生に当たったのだから
「はい…次、みことな」
今度はふわっとした雰囲気のある男子が立ち上がった。黄色髪の髪先がほんのりピンクで優しそうな笑顔を浮かべている。
「みことです。音楽が好きで、
よく弾き語りとかしてます。
仲良くしてくれると嬉しいです!」
その一言で、クラスの女子たちが一気にざわめいた。どうやら早くも人気が出そうな
タイプらしい。
「じゃあー次、いるま」
そう先生に言われるとなつがちらっと
窓から視界がいるまへいっているような
気がした。
アホ毛が特徴的な人が少しうつむき加減に
座っていた男子が、ゆっくり立ち上がる。
「……いるま。特に言うことは、ないです」
とだけ言ってすぐに座る。
「次、暇くんで」
すっと立ち上がったなつは、
前髪をかきあげながら言った。
「なつです。めんどくさいの苦手です。
あんま話しかけないでください」
そう言って静かに座る。その鋭い眼差しと、感情の見えない声に、場が少しピリついた。
そして次――
「フライングしたがもう1回雨乃自己紹介
いっとくか。」
教室中の視線が自然と集まった。
席に着いて間もないその美形の男子が、
すっと立ち上がる。
「雨乃小雨っていいます。
あだ名はそのまま“こさめ”で大丈夫です。
えっと……美味しいスイーツのお店、
誰か詳しい人いたら、ぜひ教えてください」
柔らかく微笑んで、ほんの少しだけ目を
伏せるような仕草。
その瞬間、数人の心音が跳ねた。
「よろしくお願いします!」
丁寧に一礼して座る。こさめの隣では、なつがまったくの無反応だったが、こさめは
ちら、とだけそちらを見た。
(ほんとに…興味なさそうな顔するんだな)
そう思いながら、小さく笑みを浮かべる。
自己紹介が終わったあと、先生が言った。
「ま、まだまだこれからだけど、せっかくだからこのあと近くの席の子と話してみなー?」
その一言に、LANが後ろを振り返って
歩き出す。
「なあ、」
「ん?……なんだよ」
「名前なんつーの?」
不意にそう聞いた。
なつは一拍置いて、面倒くさそうに答える。
「…お前自己紹介聞いてなかったのかよ…、
……、なつ」
LANは、それを聞いてニッと笑った。
「そっか。よろしくな、なっちゃん」
「その呼び方やめろ」
「えー!いいじゃん別に」
その笑顔に、なつは少しだけ目を細めたが、何も言わなかった。
――そして、静かな興味が、
教室に生まれはじめる。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「でさ、その後めっちゃ先生怒ってさ〜」
「ふーん…」
窓の外をぼんやり見ながら、相槌だけで
会話してるなつ
「なぁ」
突然いるまが現れてLANに
「なんの話ししてんだよ」
「俺の武勇伝的なやつ いるまも聞く〜?」
「いや、つまんなそうだしやめとくわ」
「ひっど、なっちゃんは
聞いてくれてるのに」
「…なつだって適当に返してるだけ
だったじゃん」
「え?!そうなのなっちゃん
てかいるまとなっちゃん友達?」
「まーな」
と笑顔で言うとその顔をみて少しなつの耳が赤くなる
「……あ〜これ、いるまが勝手に絡み始めた
やつだ」
(ニヤニヤしながら眺めてる)
「…なんかいるまに目ぇつけられた
かもよ?」「……どうでもいい」
そう言いつつも、ほんのわずかになつの
口元が動いた
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
LANと暇なつといるまがぽつぽつと
会話しているその横で、
前列ではみこととすちが
何やら楽しそうに笑っていた。
すちが手振りを交えて何かを説明し、
みことが「それ面白いな」と相槌を打つ。
2人の空気は自然で、会話も途切れない。
そこへこさめが椅子を引いて立ち上がった。
「ねぇ、すちくん!」
元気よく声をかけるも、すちはチラッとだけこさめを見て、首を傾げた。
「んー、ごめん。今みこちゃんと話してるから、ちょっと後でいい?」
あっけらかんとした声に、
こさめの表情が固まる。
「……ッ! こさめも、
みことくんとすちくんとお話したい」
一瞬だけ声が震えたのを、
みことが見逃さなかった。
「そんなこと言ってもらえるなんて
嬉しいな。こさめちゃんも一緒に喋ろ!」
みことの柔らかな笑顔に、こさめは少し目を丸くしてから、ぎこちなく席のそばに
腰を下ろした。
すちもそれ以上は否定せず、
三人で会話を再開する。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
みことに救われ、
ようやく肩の力を抜いたこさめ。
「でさ、この前の――」とみことが話を
続けようとした、その時。
「おーい、みことー!」
やたら元気な声とともに、
LANがズカズカと近づいてくる。
後ろには、腕をつかまれ半ば引きずられる
ように歩くなつといるま。
「ん、?…、らんなんで俺まで…」
「俺、別に行くって言ってねぇし」
二人とも顔に「帰りたい」と書いてある。
LANはそんなの気にせず、
すちの正面に立ってニカっと笑った。
「なんだなんだー? すちとみことと…あ、
こさめもいるじゃん! 俺らも混ぜてよ」
「らんくんまで…」とすちが少し眉を寄せるもみことは軽く笑って
「まぁいいんじゃない?」と椅子を引く。
こさめも小さく頷き、
LANは遠慮なく腰を下ろした。
なつといるまも仕方なく着席し、
テーブルは一気に賑やかになる…かと
思いきや、なつといるまは腕を組んで
沈黙し、LANが会話を回していく。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
LANがトークを続ける中、
なつといるまは腕を組んだまま無表情。
「お前らさ、なんかさぁ…
仲いいの悪いの?」
LANが笑いながら聞いても、二人は
「別に…」と声をそろえて返す。
「じゃあさ、あれやってんの?
“ブラッド・サーガV”」
その瞬間、二人の顔色が変わった。
❇たぶんそんなゲームないです。
「…え、お前もあれやってんの?」
「やってるやってる。てかラスボス、
第二形態で全滅しなかった?」
「わかる! あれマジで初見殺しじゃね?」
さっきまで空気みたいに黙ってた二人が、
急に身を乗り出して語り出す。
LANはニヤニヤしながら、すちとみことに
小声で「ほら、男子ってこういうとこ
可愛いよなぁ」と耳打ち。
こさめはそんな二人を見て、小さく笑った。
さっきまで距離感あったのに、ゲーム一つで一気に打ち解ける――そんな単純さが、
ちょっと羨ましくもあった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「え、てかさ」
LANがにやりと笑って、話題を投げる。
「”ブラッド・サーガV”もいいけど、
“ドラゴンスマッシュ”はやっぱ王道じゃね? お前らどっち派?」
なつが即答した。
「”ブラサガ”一択」
いるまも負けじと食い気味に言う。
「いやいや、”ドラゴンスマッシュ”でしょ あれ神ゲーだから!」
「は? あんなガチャゲー何がいいんだよ」
「お前、レア引けてないだけだろ!?」
初対面とは思えないくらい真剣に言い合いを始める二人。
LANは腕を組んで
「はいはい、かわいいわ~」と
心の中でニヤニヤ。
こさめとみことも思わず吹き出して、
すちも口元を押さえて笑いをこらえる。
言い合いながらも、なつといるまの表情は
どこか楽しそうで、互いに
“同じ熱量で話せる相手を見つけた”みたいに目がきらきらしている。
やがて、なつが笑いながら言った。
「…でもさ、どっちにしろ徹夜して
やっちゃうんだよな」
「わかる、それな!」
「学校行きたくなくなるまで
やっちゃう!」
「マジでそれ!」
二人は結局笑い合いながら、
机をトントン叩いて盛り上がる。
LANは小声で
「男子ってほんと単純でかわいい」
ってつぶやいた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
キーンコーンカーンコーン――。
まだ教室の空気がわちゃわちゃしたまま、
予鈴が響いた。
「うわ、もう時間か」
LANが小さく肩をすくめる。
さっきまで盛り上がってた男子たちも、
名残惜しそうにそれぞれの席へ
散っていった。
なつは席に戻る途中で、ちらっといるまを
見て「また話そ」なんて一言を投げる。
いるまもぶっきらぼうに「…ああ」って返すけど、口元がちょっと緩んでた。
こさめは、すちの後ろ姿を追いながら
歩きつつ、
(……後で絶対話すんだから)
と心に決めて席に戻る。
やがてチャイム。
ガラガラ、と扉が開いて、斎藤先生が
入ってきた。
「はいはい、そこ静かにー。今日は教科書配るだけだが明後日からは早いが本格的に
授業始めるぞ」
高校生活、初めての授業。
教科書がどんどん前から後ろに流れていき
少し緊張した空気が流れる。
斎藤先生は黒板にチョークを走らせながら
振り返る。
「お前ら、ま、リラックスして
名前今のうちに書いておけよ」
なつは頬杖をついて窓の外を眺めながら、
先生の声だけは耳に入れてる。
いるまはペンを回しながら、さっきのゲームの会話の続きを頭の中で反芻してる。
LANはさっそく名前を書いていて、みことは手が止まっていた
「みこちゃんどうしたの?」
「え…えっと〜マッキー忘れちゃって、…」
「俺のでよければ貸すよ」
そういってマッキーをみことに渡すと
「ありがとう!!すっちー!」
「!、すっちー?」
「うん! すっちーのほうが言いやすいし」
「言いやすいとかあるかな?」
「ある!」
すちがみことと楽しく喋ってる中
こさめはずっとすち方を見てのほっぺを
ぷっくりさせている。
後ろ姿をちらちら見ながら、ペン先を
走らせる。
(なんで〜!??みことくんと喋ってる
ときあんな笑顔なのん!! ふつーに!
こさめが一番に笑顔引きがしたかった〜…)
(すちくん…絶対、振り向かせてみせる)
最初の一時間は、全員が“自分の高校生活の幕開け”を胸に感じながら、
静かに過ぎていった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
コメント
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学生設定ほんと大好きなので栄養素高すぎます…✨️✨️ 続き楽しみにしてますッ!!