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アリスは笑顔で子供達に向き合い
そして持参した段ボールに入っている、百冊程度の新品の絵本を寄付し
その様子と北斗が佐原議長の有権者であった、病院の院長と握手を交わしている所をカメラクルーが捉える
この光景は夕方の選挙ニュースですぐに流れる、それと同時に北斗の広報担当も動画カメラを回す
撮れた映像はすぐさま信夫率いるSNSチームに送られ、午後の二ュースより早くSNSで拡散される
アリスはそれから子供達に手を引かれ、それぞれの病棟の自分のベッドに招かれて、そこでしばらく楽しく過ごした
1時間ほど経って、カメラクルーやSNSチームも帰り、いつしか北斗の姿も見当たらなくなったので
アリスはトイレに行く途中で北斗の姿を探した
すると女性トイレの帰り道、ひとつの個室の引き戸が開いており
その奥からくぐもった北斗の声が聞こえて来た、アリスはそっとその部屋をのぞいてみた
護衛チームもいなく、ピンクのカーテンの下の隙間からは確かに、北斗のグレーのスラックスと病院来客用の緑のスリッパが見えた
?・・・たしかに北斗さんね・・・誰かと話している?
アリスは一旦廊下に出て、その部屋の入院患者の名札を見てみた
この個室に入院している患者は、「佐々木美紀」と言う10歳の白血病の患者だった
もう一度覗いてみると、北斗とその女の子はとても楽しそうに話していた
女の子の肌は真っ白過ぎるほど白くとても儚く見え、髪の毛が全く生えていない、頭皮がむき出しになった頭には、緑のバンダナが巻かれていてた
そしてそのバンダナの結び目には、「ハリー・ポッター」に出てくる、グリフィンドール寮生が付ける、ライオンのバッヂがつけられていた
北斗はその女の子が座っているベッドの端に腰掛け一緒に「ハリー・ポッターシリーズ・炎のゴブレッド」を読んでいた
「・・・確かに君が言うように、三大魔法学校対抗試合の前日のダンスパーティーで、ロンとハーマイオニーがお互いの気持ちに、気づかなかったのはイライラしたね、君もグリフィンドール生なの? 」
北斗がとても優しい声で女の子のバンダナに、付けているグリフィンドールのバッヂを指差して言う
とても温かみのある低い声だ
クスクス・・・「他に入るクラスなんて無いわ、それに私はマクゴナガル教授の一番弟子になるの、どんな動物にも変身できるのよ」
「それはすごいね」
頬がこけて弱々しい声だけど、少女の話し方で彼女はとても知的で、意志の強い子に思えた
少しして目だけが異様に大きく見える瞳を伏せて、少女が大きくため息をつく
「・・・でも私の体の中にも、ヴォルデモートがいるの・・・、それが時々暴れ出すと息が出来なくなってとても苦しいわ・・・ 」
おうっ!と北斗が胸を抑えてリアクションをする
「君はとても勇気があるね!「あの人の名前」を口に出すなんて」
フフフと女の子が笑う
「だってヴォルデモートなんてちっとも怖くないもの!」
しかしさっきまでの笑顔が急に消えて、少女はまた俯いた
「でも・・・辛くて痛い治療は嫌・・・・・時々死にたくなるの・・・ 」
アリスはこの二人の会話をカーテンに隠れて、聞きながら胸が締め付けられた
・・・こんなに小さいのに・・・彼女は重い病気と闘っている・・・かわいそうに・・・