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#妖怪学校の先生はじめました
夜のさんぽ
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▶︎注意
エセ関西弁
第2話 春の続き
春が、少しづつ深まっていった。
桜は散り、若葉が光を弾く頃には僕たちはもう
“偶然隣にいる”ふたりではなかった。
お互いが、隣にいたいと思って隣にいた。
なぜだかそんな気がした。
それでも、僕はまだ、完全には
心を開くことができなかった。
そんなある日、事件は起こった。
僕の母の封印が解けそうになっていた。
もしも母の封印が解けたら……
想像したくもない。
考えた末、僕は一つの案を思いついた。
しかしそれは、友達との関係を
捨てるようなものだった。
元々僕は、そんなことを思いついてしまう程
汚い奴なんだ。僕に友達なんて要らない。
いや、初めから友達なんて居なかったんだ。
実際、最初は打算で近づいた。
それならばもう、捨ててしまおう。
僕は鬼だ。
身も……心も。
そう自分に言い聞かせて、受話器を手に取る。
僕は痛む心を押し殺して普段のように
にこやかな笑顔を作った。
「あ、もしもし晴明くん?
いや元気にしてはるんかな思てさぁ」
「あっせや今度いっぺん
僕んち遊びにこぉへん?」
僕はこの言葉を口にしたことを、 後悔した。
こんなこと、しなければ良かった。
僕は”また”守れなかった。
いや、今度は自分が壊したようなものだ。
今更ながら後悔した僕は
感情のままに母に反抗してみるも、
妖力を吸われ続けていた僕が適う訳もなく。
同じ酒呑童子とは思えないほどに
たったの一撃で敗れてしまった。
虚ろな目をした力なく横たわる彼の身体。
僕はその身体を抱き抱えながら、自責の念に
駆られていた。
やっぱり僕は、人間と関わり持ったら
アカンかったんやろか。
「結局僕は、身も心も鬼になりきれへん
半端モンやった…っ」
自分からこの騒動を起こしたくせに、
瞳からは自分勝手に涙が零れていた。
母に逆らえないことも、妖力がないことも、
友達を使ったことも、そのくせ友が食われたら
自分勝手に涙する中途半端な優しさも、
全てに嫌気が刺した。自分で自分が嫌になる。
そんなことを考えていたときだった。
突然、母が苦しみだした。
喉を抑えて咳き込んだかと思うと、
母が何かを吐き出した。
その何かが彼の体にすぅっと入り込む。
すると、彼がゆっくりと目を開けた。
「あれ……?僕……」
彼はまだ何が起きたのか理解していないようで
困惑した様子でキョロキョロと周りを見回す。
一通り見回して、僕の顔を見つけると
彼は言った。
「……凜太郎くんどうしたの……?」
僕の気持ちも知らず、ただ純粋に
泣いている僕を心配していた。
僕は君を利用しようとしていたのに。
彼の指が僕の涙が伝う頬を優しく触れる。
「泣かないで…… 」
バチッ。
電気のような衝撃が体に走る。
彼の言葉に胸を撃たれたのか、物理的な
攻撃を受けたのか、一瞬判断がつかなかった。
よくよく見ると、彼の退魔の力が
暴走しているようだった。
理由は分からなかったが、とにかく
彼は目覚めて、 しかも退魔の力が 使えるように
なっているのだ。
これほど好都合なことはない。
僕らが母の動きを止め、その隙に彼が
退魔の力を使う。
なんの制限もなく、放出された退魔の力は
とてつもなく大きく神々しく輝いていて、
僕には希望の光に見えた。
しかし、このままでは退治してしまう。
退魔の力を縮小させるため、皆が色々な罵声
を浴びせたが、いざとなると出てこないらしく
苦戦していた。
利用しておいてこんなことを言うのも
考えものであるが、
僕は意外と無意識に彼を見ていたらしい。
彼を萎えさせる言葉などすぐに思いついた。
「晴明くん!!学園長が来年は女子の制服
ブレザーに変更する言うとったで!!」
彼はしっかり傷ついたようで、
退魔の力は適度に小さくなっていた。
それでも僕には十分希望の光に見えた。
いやむしろ、退治しないように自分が傷つく
その優しさが、希望の光に見えたんだ。
「もう凜太郎君が泣かなくて済むように。」
その言葉に、彼の優しさの全てが表れていた。
彼は母の妖力を祓ったことで
力を使い尽くしたのか、おぶさって僕の
ところまで運ばれてきた。
彼のボロボロな姿を見て、色々な思いが
込み上げる。
そんなこととはつゆ知らず、
彼は呑気に 笑顔で話しかけてくる。
「……お人好し!!もしかしたら自分が
死んどったかもしれへんのに、
なんで怒らへんのさ。」
全く、こんな時ですら僕の口は素直じゃない。
自分から巻き込んでおいて
捻くれた言い方を する僕に、 飯綱くんが
呆れながら 勝手に翻訳を付け足す。
「今のは翻訳すると、”ごめんなさい”だ。」
それも間違いではなかったが、
僕はそれよりも……。
「ちゃ……ちゃうし」
「”ありがとう”やし……」
普段は素直に言えない、感謝の言葉。
なれない言葉に少し詰まって、
気恥ずかしさで目線を逸らしてしまう。
それでも、僕の気持ちはきちんと彼に
伝わったようで、彼は嬉しそうに笑った。
あっ、と思い出したかのように彼が言った。
最初に僕が言った、頑張ったらご褒美をあげる
という話について。
僕はまだその話が生きていたことに驚いたが
感謝してもし切れない程のことを
してもらったのだ。もちろん、
何かを 要求されれば
できるだけのことはするつもりだった。
しかし、彼の口から続いた言葉は
予想だにしていない 言葉だった。
「なんか今までは凜太郎君とお友達(仮)
みたいな感じだったからさ。」
図星をつかれて少し驚いた。
気づいていたのか。
「だから」
「今度こそ正式に、
僕とお友達になってください。」
呆れるほどのお人好しだ。
僕は君を利用しようとしたのに……。
君はそのせいで死にかけたのに、怒らず
解決してしまうだけでは飽き足らず、
僕のことを心配し、挙句の果てにはその報酬
に僕と友達になることを要求するなんて。
僕は差し出された手を取った。
「…やっぱりアンタ…お人好しや…。」
それからの日々は、僕らはより一層
二人で過ごすようになった。
昼には一緒に外へ食べに行き、
夜は 互いの家に行き合い一緒に食べ、
休日には二人で遊んだ。
約束をしなくても、
自然と同じ場所に足が向く。
「ねえ、凜太郎くんってさ」
そんなある日、
彼は芝生に寝転び空を見上げながら言う。
「最初より、ちゃんと笑うようになったよね。」
「……そうやろか。」
「うん。ずるいくらいに」
彼の横顔を見ていると、胸が静かに熱くなる。
好き。
その2文字が、
もう隠せないほどに膨らんでいた。
過去は消えない。
けれど、彼が隣にいるときだけはそれが
“終わり”ではなく”通過点”のように思えた。
___守れなかったけど。
でも、これからなら。
守りたい。
彼の横顔を見つめながら、僕は静かに
決意を固めた。
コメント
1件
第2話読み終えたよ〜〜! まず、凜太郎くんが「身も心も鬼になりきれへん半端モン」って自分を責めるシーン、すごく胸にきた。自分から壊したくせに泣いちゃうところ、人間らしさが出てて余計に切ない。 あと、晴明くんが「お友達になってください」って言うシーン、本当に優しすぎる…利用されたのに怒らないどころか報酬がそれって、もう愛だよね(泣) 最後の「好き」の気付きも、じわじわ来たよ。次も楽しみにしてる🌙