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琴音#こおと
#ご本人様には関係ありません
兎雪。@新連載始動
16,908
薄暗い部屋にパソコンのファン音と、キーボードを叩く乾いた音だけが響いていた。画面の向こうではゲームのキャラクターが激しく動き回り、ボイスチャットからは聞き馴染んだ、少し低くて張りのある声が聞こえてくる。
「いや、そこマジで無理やって! 絶対おるって!」
「おるおる、完全に気配あったわ。じゃあ俺、先に行ってヘイト買うから、その隙に蘇生頼む」
モニターの光に照らされたバニラは、画面から目を離さないまま、小さく笑ってうなずいた。だるまいずごっどとの通話は、いつものように他愛のない雑談とゲームの掛け合いで進んでいく。絶妙にテンポがずれているようで噛み合っている、不思議な空気感だった。
「お前さ、さっきから漁るの遅すぎん? いつまで物資集めてんの」
「え、だってこれ最強装備作れるルートやもん。だるまこそ、さっきすぐ突っ込んでダウンしたじゃん」
「うるさいわ、あれは事故! 不可抗力! 次は絶対キャリーするから見てろって」
口では軽口を叩きながらも、どこか楽しそうなだるまの声に、バニラは自然と口元を緩ませた。こうやって画面越しに毎日のように声を交わしているけれど、たまにふと、画面の向こうにいる実感が強くなる瞬間がある。ゲームのイベントが終わった後、二人だけで残ってダラダラと世間話をする時間なんて、まさにその典型だった。
「なあバニラ」
突然、ゲームの合間にだるまの声のトーンが少しだけ低くなった。
「ん? どうしたの急に」
「いや、次のコラボの打ち合わせ、来週だったっけ。お前またどうせギリギリまで台本読まんやろ」
「うっ……それは、まあ、追々考えるから大丈夫だって」
「大丈夫じゃねえよ、ほんとマイペースだなお前は。まあ、俺がサポートしてやるからいいんやけどさ」
照れ隠しのように早口で付け加えるその言い回しに、バニラは小さく吹き出した。相変わらずだなと思いながらも、胸の奥が少しだけ温かくなる。
「ありがと、だるま。じゃあ次の試合も、二人でドン勝つ狙うか」
「おう、任せろ。絶対勝つで」
カチリとマウスをクリックする音が重なり、二人は再び、同じ画面のなかへと駆け出していった。
コメント
1件
うわあ、この距離感、すごくいいですね。画面越しの軽口と、ふとした気遣いが絶妙に混ざり合ってて、読んでて自然と頬が緩みました。特に「お前またどうせギリギリまで台本読まんやろ」からのだるまさんの照れ隠しっぽい早口なフォロー、ああいう何気ないやりとりにこそ関係性の深さが出ますよね。二人の呼吸が合ってる感じが伝わってきて、次の展開が気になります。