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「逆に萬田くんは…こんな私でええの…?」コクンッ

少し恥じらいながらも頷いてくれた萬田くん…嬉しくて私はまた萬田くんにキスをした

チュッ

「嬉しい…!」

「……//」

照れくさそうに笑ったあと真剣な顔になり萬田くんが口を開いた

「ちょっと前に妹が夢に出てきたんや…」

「妹さん…? 」

「そや、桜子には言ってへんかったな…小学生の頃に事故で亡くなったんや」

火事で亡くなったとは決して言わない萬田くん、お父さんへの思いやりなのかな…。

「妹さんの話、前に少しだけ竜一さんから聞いた、ほんまに可哀想やったね…」

「チッ…あいつ人の事ペラペラ喋りよって…」

「今話してくれたんやからそんな怒らんでもいいやんか、な?それで…?」

「あぁ…妹が夢の中でわしに言うたんや”自分のために生きて”て」

「自分のために…」

「その時は妹の言うてる意味が分からんかった、わしは今まで自分のために生きてきたつもりやったしな」

「つもり…?」

「わしは今まで金貸しいう肩書きを盾にして自分の気持ちと向き合う事から逃げてたんや」

「そんなことないよ…!」

「いいや、桜子と一緒になる事からも逃げてきた…」

「え…?」


「正直言うたら怖かったんや… 自分のそういう気持ちと向き合うのが。桜子に惚れとる事を認めんのが…」

「………!?萬田くん…」

「でもわしがどんだけキツく当たっても…拒絶しても桜子は諦めんとまっすぐ向き合うてくれたやろ?」

「だって好きやもん…」

「そうやって自分の気持ち包み隠さず伝えるのは根性いることや」

「包み隠されへん私がアホなだけやよ…笑」

「まぁそうかもな。笑」

「ちょっと!笑」


「でもな… 自分の気持ちから逃げてきたわしなんかより、桜子のほうがよっぽど強い女や…ほんまに自分のために生きとる。」


「わ、私そんな大した人間じゃないよ…」


「わしがそう思ったんやからそれでええんや。そやから自分の事”こんな女”なんて言うな。 」


…………。


「うぅ”………萬田ぐん… グスッグスッ…」

また泣かされる…

「またか… もうええ…笑。 好きなだけ泣け」

「うぅー”…うわーん!」

「子供か…笑」

「だってぇぇ…!」


「桜子…ありがとうな…。」

「ぇ……?」

「わしに気付かせてくれて。」

泣いている私の頭を優しく撫でながらそう言ってくれた萬田くんの笑顔… 何か心の重荷がとれたような、優しい顔だった。

「今の萬田くんミナミの鬼じゃなくて…ワンちゃんやね 笑 かわいい!」

「な…誰がや!」

「ふふ…なぁ?」

「なんや?」

「私も萬田くんじゃなくて”銀次郎さん”って呼んでいい…?」

「ぇ…… コクン」

また黙って恥ずかしそうにそう返事する銀次郎さん

「あー…でも銀次郎さんやとちょっとよそよそし過ぎるからぁ…”銀ちゃん”!」

「…それは絶対あかん」

「えー?なんで、可愛いやん銀ちゃん♪ほら、ワンちゃんみたいやし!」

「わしを犬扱いすな!」

「いいやんかぁ」

「ほなもうわしの家で暮らすのは無しやな」

「えー!嫌や嫌や嫌や!」

「じゃあその呼び方やめ」

「えー?本当は嬉しいくせに」

「な…///」

「ほら図星やん」

………。

「それに側に私が居なくてもいいん?」

「う…………。」

「あれえ?自分の気持ちに素直になるんじゃなかったんかな?銀ちゃん♪」

「くそ… も、もうそれでええ… 」

「やった!」

「桜子…」

「ん?」

さっきまでとは打って変わって真剣な眼差しで私を見つめている萬田くん

「これから先もわしは金貸し続けていく、辞めることは出来ん。そやから桜子にも嫌なもん、人の汚いとこたくさん見せてまう、キツイ思いさせてまう事になる…そやから、わしと一緒におられへんと思ったらその時は…」

「やめて!そんなん全部分かってる。私だって今までたっくさん人の汚いとことか嫌なとこ見てきたし…されてきた。でもこれからは銀ちゃんが居てる。一人で抱え込まんでいいんやって思ったら嬉しい…。

そういうの全部引っくるめて銀ちゃんの事好きやから。」

この時わしはやっと自分に課してきた十字架を下ろせた気がした。

家族を救えんかった自分も、生き延びるために汚い事に手を染めた自分も、家族に愛されたかった自分も、人を羨んだ自分も…

惨めな自分を赦せた気がした…

自分を裁いてたんは自分自身やった。


その事を教えたかったんやな…

“自分のために生きて”

その意味がやっと分かったで、すみれ。

ありがとう。





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