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《貴方のことが嫌いだ》
「ッ,,,?!」
遠い記憶。何処で誰に言われたかすら分からないそんな記憶だが、強く脳裏に焼き付いて離れないそんな言葉。
夢の最後、そんな言葉を言われて目が覚めた。頬を伝った汗が決して良い夢だった事じゃない事を確信させる。
時刻は深夜5時。眠るにはもう遅いような時間だ。
やることも無いためスマホを取りだし、暗い部屋でいじる。
{そういえば保存していた画像があったな。}
かなり古い画像の為、表示される順番を古い順にして更新をする。
「これ、」
求めていた画像とは違う写真でスクロールの手を止める。
そこには、昔自分が密かに想いを寄せていた少女とのツーショットだった。
緩やかに巻いた栗色のボブ、翡翠色の瞳。
柔らかな言葉使いと性格に、性別関係なく惹かれてしまうだろう。
彼女の名前は…栗野 遊。
夏の日に一緒に遊ぶと、真っ白なワンピースで河川敷の花を摘んだりピクニックをしたのを覚えている。
彼女と遊ぶと見せてくれるその年相応な純粋な笑顔が、風に揺れた前髪が。
.. .あの言葉を言われたのは、小学六年生の夏休みの終わりだった。
大事な話があると言われて、大きな川をかける橋の真ん中。
いつになく真剣な彼女の顔に、心臓がざわめいた。
『貴方のことが嫌いだ』
「え、わ、私何か」
『何も聞かないで。』
『ごめんなさい』
そう振り返って帰っていく時、彼女の歩いている方向から強く風が吹く。
いい匂いのする彼女の残り香が、より私の心を締め付ける。
その風に乗って、一滴の水滴が私の頬に落ちたのだった。
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【遊の手帳】
8月30日
こんにちは、私、遊!
…私。もうそろそろ死ぬらしいの。
もう助からないんだって、先生が言ってた。
だからここに残すことにしたの。
皆に悲しんで欲しくないなぁ。私のせいで。
特に、朱雨ちゃん。私の一番大切な友達で、好きな人。
私を遊びに誘ってくれるし、面白いんだよ。
あ、好きな人小説でね、嫌われれば悲しまないって!
嫌われるのは嫌だけど…悲しませるよりかは良いんじゃないかな。
朱雨ちゃんに連絡しよう。
8月31日
悲しませちゃったかな、
あんなこと言うつもりじゃなかった。もうちょっと優しくいえば…
でも、悲しませないため。仕方ない
「貴方のことが嫌いだ」なんて、そんなこと思ってないのに。
ごめんなさい。許して
9月1日
入院することになったよ。窓の外からは、皆の元気な声が聞こえる。
いきたかったな
点てきでうまくかけないや
9がつ2か
いたい
ねるじかんがふえたな
9、3
おかあさん、おとおさん、しゅうちゃん、
ごめんなさい
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9月3日、学校の彼女の机には花瓶が置かれていた。