ルーカスお兄様と別れた後、アイラさんが床にうずくまっていた。
その肩は小刻みに揺れていた。
「あ、あの、アイラさん。そんなところにいると、風邪をひきますよ」
俺が声をかけると、アイラさんはゆっくり振り返って、
「そうね…」
と呟いた。
アイラさんは普段はとても明るくて、笑顔が素敵な人だ。
だけど…今は目に光がない。
それはそうだ。最愛の婚約者_それも、もうすぐ結婚するはずだったリアムお兄様が殺されて……
俺だって、リアムお兄様が亡くなって…辛すぎるッ。
でも、俺は少しでもアイラさんを助けたい。
そこへ、ちょうど執事のジョンが通りかかったので、俺はジョンに声をかけた。
「ジョン。アイラさんにホットココアを出してくれないか?」
「かしこまりました」
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俺はアイラさんを客室に招いて、ホットココアを差し出した。
「アイラさん、すみません。今はこれぐらいしか出来ないんですけど… 」
「ううん…ありがとう。嬉しい。ノアくんって優しいのね」
アイラさんが少しだが微笑んだ。
「…おいしい。やっぱりココアって好き」
…リアムお兄様が言っていた通りだ。
リアムお兄様は、アイラさんのことをいつも楽しそうに話す。
ココアが好きだとか、花のお世話がルーティンだとか。
リアムお兄様があまりに嬉しそうに話すから、俺まで釣られて笑顔になった。
リアムお兄様が大好きだったアイラさんの笑顔を、今度は俺が守りたい。
「アイラさん」
「?」
「絶対、犯人は捕まります。だから安心してください。リアムお兄様は、ずっと、これからも、アイラさんを見守っています」
「!」
アイラさんの目から涙が零れ落ちた。
「……ッ…うん」