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【 酒は呑んでも呑まれるな 】
「あの、会長。そろそろやめにしません?」
「え〜、やだよ。僕酔ってないもん」
「三十路過ぎの男がもんなんて言っても可愛くないですよ」
厳しい。
あ〜あ、せっかく久しぶりにお酒呑んで機嫌よかったのにな〜。蒼井のせいで傷ついちゃったな〜。ゴロゴロとカーペットに転がりながら蒼井にそう文句を言ったら、無言で腹に蹴りを入れられた。酷い。大人なのにみっともないって、大人が全員精神まで大人になれるとは限らないんだよ。知ってるくせに。
「そんなひどいことするんだ?ふーん?」
「なに、文句ですか?」
「いやあ?…あーあ、けられたおなかすっごくいたいなあ〜。しんじゃうかもしれないよ?」
「はは、なっさけないですね。」
「ひどい!」
わんわん喚いても、冷たい目線が飛んでくるだけ。身体は子供みたいにあったかいのに勿体ないなあ…。あ、そっか。蒼井は実際今子供なんだ。そうだった。
蒼井は床に正座したまま、机の上に放置されていた食器やらランチョンマットやらを全てテキパキと片付けている。あんなに小さな手なのに凄いなあ。暫く蒼井の手を眺めて、洗い物でもしようとしたのかその場を離れそうになった時、僕は咄嗟に蒼井の手をつかんでしまっていた。僕の親指と小指だけでも余裕で一周できてしまうほど細い腕は、必死に僕の手から逃れようとする。諦め悪いなあ、知ってるけど。
「なんなんですか、離してくださいよ」
「やだ。あらいものなんかあとですればいいじゃん」
「嫌ですよ、せめて水で濯ぐくらいしないと」
「あしたやすみなんだからあしたでいいの。あおいはちいさいんだし、キッチンにひとりでなんてあぶないよ」
「小さいって…外見だけの話でしょう」
「見た目だけだとしても!とにかくきょうはだめ」
「だから嫌だって」
「やぬしはぼくだし、とめてあげてるのもぼくだよ?いうこときいて」
「はあ?……分かりましたよ」
蒼井は諦めたように僕の目の前に座り込む。ふふん、勝った。
「あおいさあ、いましあわせ?学校たのしい?」
「は?……楽しいですけど」
「そっかあ、よかったねぇ」
「子供扱いやめてくださいよ」
「こどもじゃん」
蒼井のまあるい頭の上をぽんぽんと叩くと、蒼井は不満気な顔をしながら僕の手をどかした。ひどい。
「本当に、そろそろ寝ないと明日後悔しますよ。会長の為に言ってるんです。」
「ふーん」
「聞いてますか?もう夜の2時ですよ、僕も眠いんです。」
「ねないの?」
「アンタのせいで寝れてないって分かりませんか?まだ洗い物も何も終わってないのに。」
「……ふーん。そんなのよくやるよね」
「アンタがやんないからじゃないですか」
「あしたでいーじゃん。きょうはもうやめよーよ。」
「じゃあ僕寝ますね」
「それはだめだよ。蒼井あしたおやすみでしょ?ちょっとまってて」
寝室へ向かおうとする小さな身体を咄嗟に引き止めて、財布とか携帯を持ったあと、若干おぼつかない足を引き摺りながら玄関へと向かう。
廊下を3歩も歩かないうちに、蒼井がぱたぱた走ってきて、あんた何しようとしてんですか、馬鹿じゃないですか!ってきゃんきゃん喚く声が聞こえてきた。蒼井の分のじゅーすかってきたげる。いっしょにのもっていっても、蒼井は顔を歪ませ僕をベットまでグイグイ引っ張ってくる。ぼくまだねたくないのに。
「アンタ今酔ってるんですよ?馬鹿なんじゃないですか。はい、お酒没収!残りはまた今度!」
「ええ〜、足らないよ〜。僕まだそんなに酔ってないよ?」
「酔っぱらいはみんなそういうんです。ほら寝た寝た!」
強制的に布団をかけられ、電気を消され、お酒は全て冷蔵庫の野菜室へと収納された。僕が飲むはずだったのに。僕のお酒……。
ふわーあ、ねむいな。まだねたくないんだけど……ねーえ、あおい、どこいくの?またぼくをおいてどっかいくんでしょ。洗い物はあしたでいいっていったばっかじゃんか。う、やめて。暖房とかつけられると眠くな……る……。
「う……あたまいたい……今何時…?」
「おはようございます。もう14時過ぎですよ」
「14時ね……えっ?」
「まったく、散々駄々こねて、その上こんな時間まで寝るなんて何考えてるんですか?」
「はは……」
「とりあえず起きて着替えてください。頭やばいですよ」
「はーい……」
コメント
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酔った大人に勝ってしまう蒼井茜最高です🫶 源輝が大人になるまで知識などは更新されていないのであそこまで口が達者なのはやはり蒼井茜の口の悪さとか語彙力とか源輝へのうざったさその他諸々の感情とかが詰まった結果なのだろうか…あまりにも素晴らしすぎて昇天でございます… いつも通りの我儘源輝なのに全部平仮名のせいで酔ってると感じれて良きでございまする 夜だから、自分が眠いから、そういう理由もあるけど第一源輝が酔ってるから外に出させないの蒼井茜優しすぎて大好き でも源輝は源輝でジュース買ってあげようとしてるの優しすぎて大好き でも蒼井茜は中身は一応高校生だから出されたら飲むけど自分からは買わないし買ってとも頼まなそうな小3?頃の蒼井茜想像しただけで尊いです… 酔ってないって言い張るの滅茶苦茶に酔っ払いでわろたw 今回の作品も神すぎました ありがとうございましたああああああああああ