どれまで歩いただろうか。
男にとって、数十分前にもそう思った事すら思い出すことが難しかった。
肩から未だ溢れる血を片手で抑えつつ、
視界の一部が赤と黒に染まりふらりふらりと揺れるのに伴い
体もふらふらとしながら、しかしその足を止めない。
オークやブナが根を張り巡らす暗い森で足を引き摺りながら歩く。
ドイツ南部に位置するシュヴァルツヴァルトにはその山奥にまつわる奇妙な噂があった。
何でも、そこでは東国の日本と同じような四季が存在し、
何とも素晴らしい景色が眺められるそうだ。
しかし、その桃源郷とも言える場所には、我々の言語が通じない
人間そっくりの“なにか”が住み着いている、と。
やれソイツは子どもを好んで食うだの、
やれその場所へ行けば二度と帰って来られないだの、
所詮子ども騙しであり子どもを森に近づけないための噂があった。
さてこの男、名をグルッペンと言った。
ドイツ国防軍空軍にて大佐という地位につきつつ、
軍内部の派閥問題によりこうしてはるばる、ドイツ東部から南部まで逃れてきたのだ。
初めは10人近くいた部下たちも、追手により次々と亡くなっていった。
シュヴァルツヴァルトにはその山奥にまつわる奇妙な噂があった。
彼は気がついていない。
朦朧とする意識の中遂にその足が歩みを止めた。
倒れた背中にはやけに柔らかく優しい雪が降り注ぎ始める。
彼は閉じる視界の間際に何を見ただろうか。
綺麗に磨かれた半長靴に覗き込まれた紅瞳。
彼は、意識を手放した。
ー
これは自分の中で最終選抜まで残ったものの没になったやつ。
色々良かったのでここで…。人外出てきます。
因みに地名等は使っておりますが、
実際訪れたことも御座いませんので森の深さ、噂等全て捏造です。
公開設定変えれるようになっててビックリなので600いったらフォロワー限定にします。
コメント
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うーん!!!!!!すき!!!!!!!!!!!!!!!!!!!