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⚠︎︎ライスバ⚠︎︎
奴隷.キャラ崩壊.他色々
誤字あり
とりま!スタート
……王都の地下市場は、夜になるほど賑わう。
鉄格子の向こうに並べられた人々の視線を避けるように、ナツキ・スバルは俯いていた。首輪は冷たく、鎖が動くたびに小さな音を立てる。
「次の商品だ」
商人の声に肩を震わせる。
何度目の競りだろう。
逃げようとして失敗し、殴られ、また売られる。その繰り返しだった。
「……は、」
乾いた笑いが漏れる。
もう期待なんてしていない。
どうせ次の主人も、自分を物みたいに扱うだけだ。
だが――。
「その人を」
静かな声が響いた。
市場の喧騒が、一瞬止まる。
赤い髪。
青い瞳。
まるで場違いなほど真っ直ぐな騎士。
「私が買おう」
剣聖、ラインハルト・ヴァン・アストレア。
その名を知らぬ者はいない。
商人は慌てて笑顔を作った。
「こ、これは剣聖様! もちろんですとも!」
スバルは顔を上げる。
……なんで、こんな奴がここに?
値段も聞かずに支払いを終えたラインハルトは、鉄格子を開けた。
「立てるかい?」
差し出された手。
スバルは反射的に身を引いた。
「触んな」
掠れた声だった。
普通なら怒鳴られてもおかしくない。
だがラインハルトは、困ったように微笑むだけだった。
「すまない。怖がらせたね」
鎖を外す鍵が鳴る。
首輪が外れた瞬間、スバルは目を見開いた。
「……は?」
「君はもう自由だ」
意味が分からなかった。
「自由……?」
「うん。私は君を所有するつもりはない」
そんな綺麗事、信じられるか。
スバルは睨みつける。
「じゃあなんで買ったんだよ」
ラインハルトは少し黙った。
それから、静かに答える。
「君が、とても苦しそうだったから」
その言葉に、胸が痛んだ。
優しくされる資格なんてない。
期待したら、また裏切られるだけだ。
なのに。
「……ばかじゃねぇの」
声が震える。
ラインハルトは否定しなかった。
「そうかもしれない」
彼は自分のマントを外し、スバルの肩へ掛ける。
温かかった。
その温度に、スバルは耐えられなくなる。
「なんで……」
ぽろり、と涙が落ちた。
「なんでそんな顔すんだよ……」
ラインハルトは何も言わない。
ただ、泣き出したスバルの前に静かに膝をついた。
見上げる形になった剣聖の瞳は、どこまでも真っ直ぐだった。
「君を守りたい」
その一言だけだった。
鎖の跡が残る手首を、ラインハルトは壊れ物みたいにそっと包む。
「これからは、君が望まないことは誰にもさせない」
スバルは唇を噛む。
信じるな。
信じたら終わる。
そう思うのに。
その手を、振り払えなかった。
ラインハルトに連れられて来た屋敷は、信じられないほど静かだった。
暖炉の火。
柔らかなソファ。
温かな食事の匂い。
どれも、スバルには縁のないものだった。
「……好きに使っていい」
そう言って案内された部屋は、一人で使うには広すぎる。
「は?」
「君の部屋だよ」
「俺の……?」
聞き返した声は、情けないほど掠れていた。
ラインハルトは当然みたいに頷く。
「服も新しいものを用意させる。食事も、嫌いなものがあれば――」
「なんで」
遮るようにスバルが言った。
「なんでそこまですんだよ」
ラインハルトは少し目を伏せた。
「……君が、安心して眠れる場所を持っていないように見えたから」
まただ。
またそんな顔をする。
まるでスバルが大切なものみたいな目。
耐えきれず、スバルは視線を逸らした。
「……気持ち悪ぃ」
吐き捨てるように言う。
普通なら傷つく言葉だ。
けれどラインハルトは怒らない。
「そう思わせてしまったなら、すまない」
その声音が優しすぎて、逆に腹が立った。
「謝んなよ……!」
思わず声を荒げる。
「俺、商品だったんだぞ!? 奴隷だぞ!? そんな奴に優しくして、何になんだよ!」
息が乱れる。
怖かった。
この優しさに慣れてしまうのが。
もし失ったら、きっと立ち直れない。
ラインハルトは静かにスバルを見つめた。
「君は物じゃない」
「っ……」
「誰が何と言っても、君は一人の人間だ」
真っ直ぐな声。
スバルの喉がひくりと震える。
「……そんなの、今さら」
「今さらでも、伝えたい」
ラインハルトはゆっくり近づき、スバルの前に片膝をついた。
視線を合わせるためだ。
剣聖がそんなことをする必要なんてないのに。
「スバル」
名前を呼ばれる。
それだけで胸が締め付けられた。
「君は、ここにいていい」
その瞬間。
ずっと張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。
「……っ、」
涙が溢れる。
止められない。
「ぅ、あ……っ」
こんなふうに泣いたのはいつ以来だろう。
ラインハルトは何も言わず、ただそっとスバルを抱き寄せた。
怖くないように。
逃げられるように。
優しく、ゆっくりと。
「ひっ……く、」
震える身体を、大きな手が背中から包む。
温かい。
痛くない。
殴られない。
それが信じられなくて、スバルはぐしゃぐしゃの顔のままラインハルトの服を掴んだ。
「……離れ、んな」
消えそうな声だった。
けれどラインハルトは確かに聞き取った。
「うん」
返ってきた声は、どこまでも穏やかだった。
「君が望む限り、離れないよ」
それから数週間。
スバルは少しずつ、屋敷での生活に慣れ始めていた。
朝起きれば温かい食事があって、夜になれば安心して眠れる場所がある。
誰も怒鳴らない。
誰も殴らない。
そんな当たり前を、ラインハルトは当たり前みたいに与えてくれる。
けれどスバルは、まだ時々怖くなった。
ある夜、悪夢で目を覚ました。
「っ……は、ぁ……」
冷や汗が止まらない。
鎖の音。
地下牢の匂い。
乱暴に腕を掴まれる感覚。
息が苦しい。
大丈夫だと分かっているのに、身体が震える。
その時、控えめなノックが響いた。
「スバル? 起きているかい?」
ラインハルトの声だった。
扉が開く。
青白い顔を見た瞬間、ラインハルトは表情を曇らせた。
「悪夢を?」
スバルは答えられない。
代わりに、震える指がシーツを握り締める。
ラインハルトはゆっくりベッドの傍に腰を下ろした。
「……隣、失礼するよ」
拒絶されない距離で、そっと寄り添う。
それだけで、不思議と呼吸が少し落ち着いた。
「ごめ、ん……」
「謝らなくていい」
即座に返ってくる言葉。
ラインハルトはスバルの髪を優しく撫でた。
「君は、たくさん苦しんできたんだ」
その声音に、また涙が滲む。
「……なんで、そんな優しいんだよ」
「優しくしたいからだよ」
簡単みたいに言う。
でもきっと、ラインハルトにとっては本当に簡単なことなのだ。
誰かを守ることも、
愛することも。
スバルは唇を噛んで、震える声を絞り出した。
「……俺、何も返せねぇぞ」
「返してもらおうと思っていない」
「でも……っ」
ラインハルトはそこで、ふっと笑った。
「では、一つだけお願いしてもいいかな」
「……なに」
「これから先も、君の隣にいさせてほしい」
スバルは目を見開く。
それは所有じゃない。
命令でもない。
ただ、一緒にいたいという願いだった。
胸が熱くなる。
こんなふうに求められたことなんて、一度もなかった。
「……っ、ずりぃ」
涙声で呟く。
ラインハルトは困ったように微笑むだけ。
スバルは震える手で、そっとラインハルトの服を掴んだ。
今度は縋るためじゃない。
離したくないと思ったから。
「……いて、くれ」
小さな声。
けれどラインハルトは、誰より嬉しそうに目を細めた。
「ああ」
そして彼は、壊れ物みたいに大切にスバルを抱きしめる。
暖かな腕の中で、スバルはゆっくり目を閉じた。
もう鎖の音は聞こえない。
代わりに聞こえるのは、穏やかな鼓動だけだった。
おかえりなさい!!
結構内容めちゃくちゃなんですけど…ごめんなさい!!
良ければ、リクエスト受け付けてます!!
では、また次回!!
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