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心拍数が低下の警告が鳴る。
視界がぼやける。
「涼ちゃん?!大丈夫…
今ナースコール
押したから…」
焦った顔の元貴がぼやけていく。
死んじゃうのかな。
なんなんだ。今となっては不思議と怖くない
あ、でも嘘つきになっちゃう。
「…も、もとき、……」
どうしよう。もうほとんど目が開かない。
「涼ちゃん…!喋らないで、
安静にして…。」
ああ、まだ元貴は生きる希望があるのか。
「しゃべれるうちに、…しゃべるから、
きいてほしい…」
ほんとに、絞り出せる最大の声で。
「もときは、…傷つかないでほしい。
ただしいとおもった道を、すすんでほしい。
ぼくは、ずっと大好きなのは…かわらない。
だから、傷つかないで…
あと、ありがとう…」
あ、あと若井…
「これは、若井に…つたえて。
これからも、元貴も…ぼくも、
ささえていてほしい。
うそついちゃってごめんなさい。
ありがとう。」
独りで逝きたくないなぁ。
明日が、もう来ないんだ。
もう、藤澤涼架も消えるんだ。
「涼ちゃん…」
生暖かい雫が僕の手の甲に落ちる。
握られている手は、震えている。
「ねえ、…さいごに、
なまえで呼んでよ…。」
最期くらい、神様は許してくれるはず。
「…涼架…!涼架…?」
ああ、幸せ。
「涼架が思い描いていたのは…、
どんな世界…??」
ぼくは、君と若井と笑って暮らせる、
そんな在り来りだけど
幸せな生活がしたかったな。
「また、…描こう。
起きたら、おはようって。」
また、来て欲しいな。
また、起きたら君は笑ってくれる?
「ありがとう、…ごめんね、じゃあね」
そう言って微笑むと、僕は真っ暗な、暖かい世界に叩き込まれた。
死んだはずなのに、元貴の泣き声が微かに
聞こえたのは勘違いでは無いはずだ。
どこからか、カーテンから差し込む風が
心地良かった。