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「セーラだけは許さない…。あいつのせいで…、あいつのせいでっ…!」
「……。」
「絶対に殺してやる…。ぜったっ、うっ…。」
「スズちゃん!!」
「リアさん!」
「どうされましたか?」
「スズちゃんがっ、」
…!吐き気…。
「…、トイレに連れていきます。」
「はぁ…はぁ……。」
「落ち着きましたかね。」
「……。」
「よくトイレまで我慢出来ました。具合は悪くないですか?」
それにしても何故急に…。
「…………、貴族だし…。」
「貴族…ですか?」
「あっ!……忘れなさい!」
「分かりました。忘れます。…忘れました。」
「覚えてるでしょ…。」
「申し訳ございません。どうやら忘れられないようです。」
「…戻る。」
「念の為、リビングで安静にしていてくださいね。」
「はぁ、疲っれた。また嫌われちゃう…もう…や…だ……。」
「スズさん?」
「(スーーー…………スーーーー………………。)」
…寝ているようですね。リビングまで抱えていくとしますかね。
「…!スズちゃん!」
「今疲れて寝てしまいましたよ。」
「良かった…。ありがとうございます…!」
ご家族思いでいいですね…。
「大丈夫ですよ。スズさんはこのままリビングに寝かせておきますね。」
「わかりました…。」
なかなか起きませんね。
「(………カクッ、…………カクッ。)」
ヒナさん…。
「眠いですか?近くにお布団を用意致しましょうか。」
「…あ、リア…はん、大丈夫…起きてふぁす…。」
「分かりました。ここにお飲み物を置いておきますね。」
「う…。はぃあ……。ありが…てぇ…う……。おざいあす。リア…さ………。」
…眠ってしまいました。お毛布をかけておきましょう。
おやすみなさい。スズさん、ヒナさん。
「電話長すぎ〜!あ、リアさん!と、スズとヒナ?」
「はい。先程ですね………………。」
「そんな事が…。ごめんなさいね。お皿洗いもやってもらっちゃってスズのお世話も…。」
「大丈夫です。これがメイドの仕事ですから。」
「本当リアさんが来てくれて助かったわ〜。って、そろそろ晩御飯の時間かし、」
「やったあ〜!よるごはんだ〜!」
「静かに!今スズとヒナが寝てるの!」
「はぁい…。」
「ん、ふぁぁぁぁ……。あら…ヒナ……。」
「おはようございます。スズさん。」
「朝…?私そんなに寝ていたのね…。」
「ヒナさんはスズさんが寝ていた時、つきっきりで側にいらしてましたよ。」
「……、心配かけたわね…。……ねぇ、メイド。」
「はい。どうなさいましたか?」
「私…こう…、出してしまったじゃない…、口から…。」
「そうですね?」
「その…嫌いにならなかったの?…いや、元々私のことなんか嫌いでしょうけど!……、やっぱり聞かなかったことにしてちょうだい…。」
スズさん…。
「…私はスズさんの事、初めて会った時から好きですよ。」
「えっ!?」
「昨日の事で嫌いになったりなどしませんし、逆にもっと甘えて欲しいくらいです。だから気にしなくて大丈夫です。」
「……。」
「私の言う事が信用出来ないとしても、嫌いになってない人は最低もう一人横にいらっしゃいますよ。」
「スーーー…スーーー…。」
「…、分かったわよ。あ、あんたがす、好きかどうかは知らないけど!………この子がいるから……もう大丈夫よ。」
「…いいご家族ですね。」
「えっ、」
「え?」
「え、あ、いや…そうね、そうよね。この子を家族に持てて嬉しいわ。」
「ふふ、そうですね。」
「ん…、スズ…ちゃん、?」
「ヒナ。起きたのね。」
「おはようございます。ヒナさん。」
「リアさんも…あれ……あ、あ!スズちゃん!具合はどう…?」
「もう平気よ。昨日からここにいてくれたんでしょう。ありがとうね。」
「ううん…、全然…。大丈夫…!」
「そう。ねえメイド。私部屋に戻るわ。」
「分かりました。ですが一回水分を取ってくださいね。それとお二人は晩御飯を食べていないので、今から軽い物を作りますね。」
「分かったわ。」
「あの、昨日私とスズちゃんが寝た時、何があったんですか?」
「話すのを忘れていましたね。ハナさんはお仕事に出ていかれましたよ。」
「もう行ってしまったのね…。いいわ、早くご飯をちょうだい!お腹が空いたわ。」
「出来上がりましたよ。ゆっくり食べてくださいね。」
「…!美味しいです…!」
「ありがとうございます。昔からお料理は練習してきたので嬉しいです。」
「スズちゃん、私先に部屋に戻ってるね!」
「分かったわ。」
本当に仲が良くていいですね。
「…メイド。話があるのだけれど…。」
どうしたのでしょうか。
「はい。いくらでもお聞きしますよ。」
「お母様〜!絵本読んで!」
「いいですよ、どの絵本にするのかしら?」
「う〜ん、どうしようかな。」
「それなら、お父様が買ってきたこの新しい本はどうだ?」
「それにする〜!読んで、読んで!」
「ふふ、わかりましたよ。昔々あるところに…。」
私は家族が大好きだ。
寝る前には、こうやって絵本を読んでくれていた。
ある日、一人のメイドが来た。
「セーラと申します。スズお嬢様のメイドとして、これから宜しくお願い致します。」
「よろしく!あなたのことはお母様から聞いているわ!」
必要最低限のことしか喋らないし、笑顔も見せない。最初は緊張しているだけかと思っていた。
「セーラ、なんだかお腹が大きくない?」
「食べすぎてしまったようです。」
「そう…。」
日が立つにつれ、セーラのお腹はどんどん大きくなっていった。
「セーラさんのお腹には赤ちゃんがいます。」
お医者様からこの言葉を聞いて、最初は嬉しいことだと思った。
「あら、良かったわね〜。お相手さんは誰なの?」
「タツ様です。」
「…え?」
タツはお父様の名前だ。お母様の表情が一気にくもった。
「お母様?どうしたの…?」
「ちょっとセーラ、タツって誰のこと?」
「タツ様はタツ様です。」
「だから…!」
「お母様…!セーラ!喧嘩はだめっ…。」
その時の私には何が起きているのかわからなかった。
「遅れてすまない!セーラ!どうだった!」
「私とタツ様の子供ができました。」
「ちょっとあなた!どういう事よ!」
お母様のあんなに怒ったお顔、初めて見た。これで私は、このことがとても重大だということがわかった。
「俺はセーラと結婚する。お前はもういらない。明日には城を出てってくれ。」
「何それ…。こっちから願い下げです。スズは引き取らせていただきます。」
「駄目だ。もうお前はただの一般人。そんなことを決める権利はない。」
「…!もういいです。さようなら。」
「え…?お母様……?お父様…。」
「さあ、帰ろうセーラ。無理をしないでくれよ。」
「はい。タツ様。」
お父様はセーラと不倫した。子供まで作った。お母様は出て行ってしまった。この一瞬で。私は受け入れられなかった。
それから毎日、私はセーラを恨んだ。あいつさえいなければ、こんなことにはならなかったのに…。あいつさえいなければ。本当はお父様も悪い。でも、家族が大好きだった私はお父様はセーラに騙されているんだって。そう思っていた。
そしてついに、お父様とセーラの子供が生まれた。
「あー。うーー。うゃー。」
「可愛い…。」
初めての妹はとても可愛いかった。だが、セーラとの子、というのが引っかかった。妹ができたことで、また少しでも楽しい日々が戻って来るといいなと思っていた。
そんなこと、あるわけなかったのに。
妹が生れてから、私はお父様とセーラのストレス発散するためのロボットになった。
「痛いっ!」
「黙れ!お前が悪いんだ!」
「もう…辞めて…、ごめんなさい…!謝るからっ!助けて…!お母様っ、!」
「あなたのお母様ならここにいるわよ。」
お前じゃない!!
「違う!お母様!いたっ!!」
毎日毎日暴力と暴言を浴びせられる日々。
「お母様〜、お父様〜。」
「どうしたんだ?」
「ぎゅ〜!」
「可愛いなぁ。」
「えへへ〜!」
私と妹とでは、沢山差別された。そして、妹が物心ついた頃には、妹にさえバカにされる。
「かわい〜。お姉様。これちょうだい。」
「だめ…。これは大切な…。」
「は?私がお前のことお姉様って読んでるやってるだけでも感謝しろよ。とにかくちょうだい。」
「だめだってば!」
私は妹を蹴ってしまった。
「お姉…様…。」
「え…?違う…違うの…私はこんな事してない…ごめんなさい…でも違うの…やめて…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。やめてやめてやめて助けて…。」
このことはすぐにお母様とお父様に伝わった。私は城から追い出された。知らない森の中。お母様にも会いに行けない。
「ここ…どこ…助けて…お母様。…お父様…。」
そんな時、遠くに明かりが見えた。ひたすらにそっちに走ると、古びた建物があった。インターホンをならそうとしたが、そこで私は倒れてしまった。