コメント
0件
「セーラだけは許さない…。あいつのせいで…、あいつのせいでっ…!」
「……。」
「絶対に殺してやる…。ぜったっ、うっ…。」
「スズちゃん!!」
「リアさん!」
「どうされましたか?」
「スズちゃんがっ、」
…!吐き気…。
「…、トイレに連れていきます。」
「はぁ…はぁ……。」
「落ち着きましたかね。」
「……。」
「よくトイレまで我慢出来ました。具合は悪くないですか?」
それにしても何故急に…。
「…………、貴族だし…。」
「貴族…ですか?」
「あっ!……忘れなさい!」
「分かりました。忘れます。…忘れました。」
「覚えてるでしょ…。」
「申し訳ございません。どうやら忘れられないようです。」
「…戻る。」
「念の為、リビングで安静にしていてくださいね。」
「はぁ、疲っれた。また嫌われちゃう…もう…や…だ……。」
「スズさん?」
「(スーーー…………スーーーー………………。)」
…寝ているようですね。リビングまで抱えていくとしますかね。
「…!スズちゃん!」
「今疲れて寝てしまいましたよ。」
「良かった…。ありがとうございます…!」
ご家族思いでいいですね…。
「大丈夫ですよ。スズさんはこのままリビングに寝かせておきますね。」
「わかりました…。」
なかなか起きませんね。
「(………カクッ、…………カクッ。)」
ヒナさん…。
「眠いですか?近くにお布団を用意致しましょうか。」
「…あ、リア…はん、大丈夫…起きてふぁす…。」
「分かりました。ここにお飲み物を置いておきますね。」
「う…。はぃあ……。ありが…てぇ…う……。おざいあす。リア…さ………。」
…眠ってしまいました。お毛布をかけておきましょう。
おやすみなさい。スズさん、ヒナさん。
「電話長すぎ〜!あ、リアさん!と、スズとヒナ?」
「はい。先程ですね………………。」
「そんな事が…。ごめんなさいね。お皿洗いもやってもらっちゃってスズのお世話も…。」
「大丈夫です。これがメイドの仕事ですから。」
「本当リアさんが来てくれて助かったわ〜。って、そろそろ晩御飯の時間かし、」
「やったあ〜!よるごはんだ〜!」
「静かに!今スズとヒナが寝てるの!」
「はぁい…。」
「ん、ふぁぁぁぁ……。あら…ヒナ……。」
「おはようございます。スズさん。」
「朝…?私そんなに寝ていたのね…。」
「ヒナさんはスズさんが寝ていた時、つきっきりで側にいらしてましたよ。」
「……、心配かけたわね…。……ねぇ、メイド。」
「はい。どうなさいましたか?」
「私…こう…、出してしまったじゃない…、口から…。」
「そうですね?」
「その…嫌いにならなかったの?…いや、元々私のことなんか嫌いでしょうけど!……、やっぱり聞かなかったことにしてちょうだい…。」
スズさん…。
「…私はスズさんの事、初めて会った時から好きですよ。」
「えっ!?」
「昨日の事で嫌いになったりなどしませんし、逆にもっと甘えて欲しいくらいです。だから気にしなくて大丈夫です。」
「……。」
「私の言う事が信用出来ないとしても、嫌いになってない人は最低もう一人横にいらっしゃいますよ。」
「スーーー…スーーー…。」
「…、分かったわよ。あ、あんたがす、好きかどうかは知らないけど!………この子がいるから……もう大丈夫よ。」
「…いいご家族ですね。」
「えっ、」
「え?」
「え、あ、いや…そうね、そうよね。この子を家族に持てて嬉しいわ。」
「ふふ、そうですね。」
「ん…、スズ…ちゃん、?」
「ヒナ。起きたのね。」
「おはようございます。ヒナさん。」
「リアさんも…あれ……あ、あ!スズちゃん!具合はどう…?」
「もう平気よ。昨日からここにいてくれたんでしょう。ありがとうね。」
「ううん…、全然…。大丈夫…!」
「そう。ねえメイド。私部屋に戻るわ。」
「分かりました。ですが一回水分を取ってくださいね。それとお二人は晩御飯を食べていないので、今から軽い物を作りますね。」
「分かったわ。」
「あの、昨日私とスズちゃんが寝た時、何があったんですか?」
「話すのを忘れていましたね。ハナさんはお仕事に出ていかれましたよ。」
「もう行ってしまったのね…。いいわ、早くご飯をちょうだい!お腹が空いたわ。」
「出来上がりましたよ。ゆっくり食べてくださいね。」
「…!美味しいです…!」
「ありがとうございます。昔からお料理は練習してきたので嬉しいです。」
「スズちゃん、私先に部屋に戻ってるね!」
「分かったわ。」
本当に仲が良くていいですね。
「…メイド。話があるのだけれど…。」
どうしたのでしょうか。
「はい。いくらでもお聞きしますよ。」
「お母様〜!絵本読んで!」
「いいですよ、どの絵本にするのかしら?」
「う〜ん、どうしようかな。」
「それなら、お父様が買ってきたこの新しい本はどうだ?」
「それにする〜!読んで、読んで!」
「ふふ、わかりましたよ。昔々あるところに…。」
私は家族が大好きだ。
寝る前には、こうやって絵本を読んでくれていた。
ある日、一人のメイドが来た。
「セーラと申します。スズお嬢様のメイドとして、これから宜しくお願い致します。」
「よろしく!あなたのことはお母様から聞いているわ!」
必要最低限のことしか喋らないし、笑顔も見せない。最初は緊張しているだけかと思っていた。
「セーラ、なんだかお腹が大きくない?」
「食べすぎてしまったようです。」
「そう…。」
日が立つにつれ、セーラのお腹はどんどん大きくなっていった。
「セーラさんのお腹には赤ちゃんがいます。」
お医者様からこの言葉を聞いて、最初は嬉しいことだと思った。
「あら、良かったわね〜。お相手さんは誰なの?」
「タツ様です。」
「…え?」
タツはお父様の名前だ。お母様の表情が一気にくもった。
「お母様?どうしたの…?」
「ちょっとセーラ、タツって誰のこと?」
「タツ様はタツ様です。」
「だから…!」
「お母様…!セーラ!喧嘩はだめっ…。」
その時の私には何が起きているのかわからなかった。
「遅れてすまない!セーラ!どうだった!」
「私とタツ様の子供ができました。」
「ちょっとあなた!どういう事よ!」
お母様のあんなに怒ったお顔、初めて見た。これで私は、このことがとても重大だということがわかった。
「俺はセーラと結婚する。お前はもういらない。明日には城を出てってくれ。」
「何それ…。こっちから願い下げです。スズは引き取らせていただきます。」
「駄目だ。もうお前はただの一般人。そんなことを決める権利はない。」
「…!もういいです。さようなら。」
「え…?お母様……?お父様…。」
「さあ、帰ろうセーラ。無理をしないでくれよ。」
「はい。タツ様。」
お父様はセーラと不倫した。子供まで作った。お母様は出て行ってしまった。この一瞬で。私は受け入れられなかった。
それから毎日、私はセーラを恨んだ。あいつさえいなければ、こんなことにはならなかったのに…。あいつさえいなければ。本当はお父様も悪い。でも、家族が大好きだった私はお父様はセーラに騙されているんだって。そう思っていた。
そしてついに、お父様とセーラの子供が生まれた。
「あー。うーー。うゃー。」
「可愛い…。」
初めての妹はとても可愛いかった。だが、セーラとの子、というのが引っかかった。妹ができたことで、また少しでも楽しい日々が戻って来るといいなと思っていた。
そんなこと、あるわけなかったのに。
妹が生れてから、私はお父様とセーラのストレス発散するためのロボットになった。
「痛いっ!」
「黙れ!お前が悪いんだ!」
「もう…辞めて…、ごめんなさい…!謝るからっ!助けて…!お母様っ、!」
「あなたのお母様ならここにいるわよ。」
お前じゃない!!
「違う!お母様!いたっ!!」
毎日毎日暴力と暴言を浴びせられる日々。
「お母様〜、お父様〜。」
「どうしたんだ?」
「ぎゅ〜!」
「可愛いなぁ。」
「えへへ〜!」
私と妹とでは、沢山差別された。そして、妹が物心ついた頃には、妹にさえバカにされる。
「かわい〜。お姉様。これちょうだい。」
「だめ…。これは大切な…。」
「は?私がお前のことお姉様って読んでるやってるだけでも感謝しろよ。とにかくちょうだい。」
「だめだってば!」
私は妹を蹴ってしまった。
「お姉…様…。」
「え…?違う…違うの…私はこんな事してない…ごめんなさい…でも違うの…やめて…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。やめてやめてやめて助けて…。」
このことはすぐにお母様とお父様に伝わった。私は城から追い出された。知らない森の中。お母様にも会いに行けない。
「ここ…どこ…助けて…お母様。…お父様…。」
そんな時、遠くに明かりが見えた。ひたすらにそっちに走ると、古びた建物があった。インターホンをならそうとしたが、そこで私は倒れてしまった。