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次の日会議が行われた。一度整理して今後を考えようと言うことだ。
事件の詳細はこうだ。
2月13日、大森元貴が彼の自宅で血まみれで倒れているところをメンバーの若井に発見された。
現場には明らかに人の手によって割れた花瓶だけがあり、我々は『自殺未遂』と判断し、世間に発表している。
しかし、この解釈にはいささかおかしな点がある。
この違和感の原因を考えてみようと思う。
scene1 若井滉斗の証言
聴取室に入ると彼は虚な目でこちらを見た。
「若井滉斗さんで間違いないですか?」
「、、、はい」
数秒遅れて彼は返事をする。
「今日、聴取を担当する衣笠です。よろしくお願いします」
彼は無言でうなずく。
「早速、、、若井さんは第一発見者になりますが、その時の状況など教えていただけませんか?」
「はい、その日は、、、
その日はちょうど新曲のメンバーとサポメンだけでの練習をしていたんです。
5日前くらいにデモを渡されて。練習してこいって。
5日でできるかって?俺たちの中ではそれが普通だから、今更何も思わないですね。
そしたらその日涼ちゃ、藤澤が遅刻してきて。あろうことか、1番大事な楽譜を忘れてきて。
藤澤の家はメンバーの中で1番スタジオから遠くて。しょうがないから、覚えてる範囲でやろうってなったんです。
でも、彼は調子が悪くいつもはしないミスを連発しました。大森も不機嫌で、険悪な雰囲気のまま練習が始まりました。
しかしいつまでもそうしているわけにもいかず、マネージャーが気を聞かせて、大森と藤澤を二人きりにしたんです。
その間どんな会話が交わされたのかは知らないですけど、仲直りをしたように、にこにこしていました。
俺は何日か前に藤澤とけんかしたと、大森に相談されていたので、二人の笑顔にほっとしました。
なんだかんだで練習が終わり、俺はわからないところがあるからと、大森の家に行く予定をたて一度家に帰りました。
そして大森の家に行くと、、、
ほんとにびっくりしました。時間が止まりましたもん。」
彼はひきつった笑顔を見せる。
そりゃそうだ。メンバーが死にかけていたのだから。できれば思い出したくもないに決まっている。
「気分を悪くされたら申し訳ありませんが、現場の様子など、詳しく教えていただけませんか?」
「、、、そうですね、、、花瓶が落ちてて、倒れている元貴から血がたくさん出てて、、っ」
彼は苦しそうに顔を歪める。
「すみません、こんなこと聞いて。もう終わりますから。」
その瞬間、彼が安心したような表情を浮かべたのを俺は見逃さなかった。
きっと周りの人間は誰も気づいていない。
俺は事件のことを話せて、気持ちの整理が少しついたのでは、とあまり気にもとめなかった。
みぐり。です。
最初の1、2、3話はみんなの証言を振り返っていく感じで書いていこうと思います。