「うる、どうしよう俺」
「人、殺しちゃった…」
そう震えた声で君にいわれた。
梅雨時ずぶ濡れのまんま、部屋の前で泣いていた。
「しの!?え、取り敢えず一旦部屋入り」
「うん、」
部屋に入るとうるみやが「どういうこと?人殺したって…」
「殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。」
「もう嫌になって、肩を突き飛ばして、打ち所が悪かったんだ。」
「もうここには居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ。」
しのからその言葉を聞いた時、俺は「それじゃうるみやも連れてって。」
「え!?駄目だよ!!」
「良いから行くで!ほら、行かへんの?」
「うんっ!後悔しないでね?」
君は微笑んでそう言った。
「当たり前や!」
財布を持って、ナイフを持って、携帯ゲームもカバンに詰めて
「いらんもんは全部壊していこ!!」
「分かったw」
あの写真も、あの日記も、今となっちゃもういらないさ。
人殺しとダメ人間の君と僕の旅だ___。
そして僕らは逃げ出した。この狭い狭いこの世界から。家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。
「なぁ、しの」
「なに?」
「うるみや達を苦しめてるこの価値のない狭い世界から逃げ出せば、苦しまないで良い広い世界に行けるかな?」
「行けるよ、きっと」
「遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうな」
「…うん!」
「もうこの世界に価値などないよ。人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか」
「しのは何も悪くないで」
「ありがとう‥!」
結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。
そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じあってきた。
「しの、手繋ご?」
「うん!」
君の手を握った時、微かな震えも既に無くなっていて
「線路の上歩くのドキドキするね~w」
「やな!ww」
誰にも縛られないで二人線路の上を歩いた。
「うる、どうする?お金もうそろそろ無くなっちゃう、」
「ん~。盗んじゃえ!」
__「やっべ、バレた!しの逃げろ!ww」
「にげろー!!」
金を盗んで、二人で逃げて、どこにも行ける気がしたんだ。
今更怖いものは僕らにはなかったんだ。
額の汗も、
「うる、汗すごw」
「うるさいなww」
落ちたメガネも
「今となっちゃどうでもいいさ。あぶれ者の小さな逃避行の旅だ」
「なぁ、しの?」
「ん?なに?」
「いつか夢見た優しくて、誰にも好かれる主人公なら、汚くなったうるみやたちも見捨てずにちゃんと救ってくれるんかな?」
「そんな夢なら捨てた、だって現実を見てよ」
「シアワセの四文字なんてなかった、今までの人生で思い知ったじゃないか」
「自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる」
「そうやな…」
「もう夢を見るなんて無駄な事はしない」
「やな!」
あてもなく彷徨う蝉の群れに、
「何でやろ、目揺れるわ…」
「うる大丈夫、?」
水も無くなり揺れ出す視界に、
「しの逃げろ!追ってきてる!w」
「うるも早く~!w」
迫り狂う鬼たちの怒号に、バカみたいにはしゃぎあいふと君はナイフを取った。
「え、しの?何してるんや‥?」
「うるが今まで傍にいたからここまでこれたんだ」
「しの‥?」
「だからもういいよ。もういいよ」
「死ぬのは俺一人でいいよ」
「しの!!」
そして君は首を切った。まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見ている気がした。
「しの、?うそや…さっきまで一緒に笑いあってたやん」
「一緒に死のうって約束したやんかッ!」
気づけば僕は捕まって。
君がどこにも見つからなくって。君だけがどこにもいなくって。
___そして時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。家族もクラスの奴らもいるのになぜか君だけはどこにもいない。
あの夏の日を思い出す。僕は今も今でも歌ってる。
「しのをずっと探してるんや」
「しのに言いたいことがあるんや」
九月の終わりにくしゃみして六月の匂いを繰り返す。
君の笑顔は君の無邪気さは頭の中を飽和している。
誰も何も悪くないよ。しのも何も悪くはないから、もういいよ。投げ出してしまおう。
「そう言って欲しかったのだろう?なあ?」
コメント
1件
歌詞パロ良いですよね。最高。感動です(TOT)