ふと思った。
「 都会に行こうかな 」
部屋の中にいることに不満もないしむしろ好き。
だからこうやって紫ノ秋に居候してるワケだし…
久しぶりに外に行ける程度の恰好をして部屋を出た。
「 ン、センセーどうしました?メシ…はさっき持って行ったし… 」
今の時間は午後9時。
「 散歩、してくる 」
「 だ、大丈夫ですか?!お、お体とか… 」
「 なんもないよ。今日中には戻る 」
そう言って僕は紫ノ秋を出た。
まぁ、運動不足解消にもいいかなっと思って歩き出すも結構つかれる。
途中タクシーを使うか迷ったものの都会に出てきた。
人が沢山いて、高い建物が所狭しと並んでる。
部屋に引きこもってる僕からしたらまるで別世界。
僕は大通りを歩いた。
風俗の看板。大音量で通り過ぎる広告トラック。
ネオンライトが光る。
煙草と香水。あとお酒の匂い。
それはまさに都会の匂い。
僕は客引きをしてた女の子を見た。
客引きのために道の隅に立っていたんだろう。
酔っぱらったスーツの男性に絡まれていた。
だけどその女の子は顔色一つ変えず
「 大変ですね… 」
「 すごいですね…! 」
と言葉を並べていた。
あれがサービスとかいうやつか。
あんな男性に絡まれていい気になる人はあんまりいないと思う。
それでもサービスをしてもてなしてるんだよね。
明るい街に浮かない様に暗い心を隠してる。
僕がまだ教員をしてた時は夜の足跡が残っている所もあった。
放置された空き缶。
派手な色したシャッター。
あと簡単に消えない都会の匂い。
ここに住んでる人間は忙しいなぁ
昼は昼の人間が夜は夜の人間が懸命に生きてる。
もちろん夜にも昼の足跡は残ってる。
一目で分かる、人間だ。
スーツを着た仕事終わりの人間。
勤め帰りに飲んだんだろうなと言うのが分かる人たち。
夜と昼が入り混じった世界、とかいうのかな。
昼は夜が見つからない様に隠れてる。
でもそんな簡単に隠れる訳もなくって夜が滲み出る。
これを題材に絵を描くのもいいかも。
あ、幸仁がこの景色を見たらどんな色で書くんだろ。
「 …部屋の中に居たら感じなかったことかも 」
たぶん僕は今日のことをわすれる。
描いたらかろうじで少しは覚えてるだろうけどきっとすぐ忘れる。
まぁ、別に忘れたら死ぬわけじゃないし…
でも今日のこの思いはあんまり忘れたくないかも
「 またマユミに話しておかないとね 」
僕は紫ノ秋の部屋にまた帰って行った。
帰路はコンビニの珈琲で彩った。
コメント
1件
名前 ・ アイコン変わりましたが 、無 ( れいちゃ )です 🙇 私の体験談交えて頂けて 、嬉しいような 、恥ずかしいような 、 筆花先生とシンクロしてるみたいで 、不思議な感覚です 。ありがとうございます !! ているはさんの表現力が流石で 、私が感じたことが生き写しされているようでした 。 物語にもしてもらったので 、多分忘れないんじゃないかな ..? ( 笑 ) 改めて 、ありがとうございます 。これからも楽しみしています 。 長文失礼しました 。