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るる
「お願いです、この、この店だけは、」
僕は今、カフェの前で土下座をしている。
「あのねぇ、」
「この店だけは!僕が守らなきゃいけないんです!」
ずっとずっと僕のご先祖さまが守ってきたお店。
白衣の男は困っている様だった。
「でもね、この店は、」
………
「わかった、わかったからさ、それなら結果を出してもらわないと。そうだね、コーヒーを貰ってもいいかな?」
彼は何とか笑顔を保ちながら、僕に飲み物を要求してきた。落ち着け、話をしよう、と言っているのだろう。当たり前だ。こんな真昼間に年下の男に土下座をさせるというのはよろしくない。
「はい!ただいま!」
すぐに立ち上がりカフェへ振り向くと、
そこには、
何も無かった
性格には、空き地だった。
「…………」
何も言えないようだった。仕方がないね、今気がついたのだが。僕は何と無いはずなのに見えているし何も見えていないし。彼はさっきまで僕にとっては恐ろしく、大切なものを奪おうとする悪魔でしか無かったのに、今となっては何とか僕に話を合わせてくれる優しい男なのだと気がついた。
「ごめんね気が着いたかな?はっきりいった方が頭の中の、整理がしやすいかな?君はよく幻覚を見る。」
「あなたは幻覚ですか?」
困ったように斜め下を見ていたのだが、今は僕の目をしっかりと見て。
「俺の認識している限りでは今、俺は明確にこの世界に存在しているものだと思っている。仮に俺が幻覚だとしてもその幻覚にはっきりと意識があるんだね。非常に興味深いよ」
「ねぇ、もしも僕が君が幻覚だと気づけばさっきのカフェみたいになるの?」
「さっきのカフェを俺は見えていないから、あまり強気なことは言えないけれど、言うことにするね。カフェと同じようになるだろうね、ちなみに俺は煙のように消えると認識するよ。」
「僕はどう生きていけばいいですか?」
今、大変なことになっている。
もしも僕が就職したとしよう。
気づけばその会社は幻覚でした。
もしも僕が誰かに養われるとしよう。
養ってくれている人は、幻覚でした。
「ねぇ借金取りさん。」
「借金取りじゃない。見ればわかるだろう?それとも君の幻覚は人の服も変えてしまうのかな?」
見れば?服?
「白衣を着た借金取りの可能性も。」
「俺の認識する限りでは白衣を着た借金取りは、見たことないな。」
「いいじゃないか、清潔感に溢れる借金取り」
「というか話が脱線したね?話を戻そう。戻して急に質問だ。君は理解してくれるが受け止めてくれない人と、理解をしてくれないが受け止めてくれる人、どちらがいい?」
「僕は、理解はしないでもいいから、受け入れて欲しい。受け止めて欲しい。」
彼はニコリと笑った。
「なるほどね、俺の認識する限り、そんな人はいないよ。俺人脈ないんだ。」
僕は久方ぶりの、殺意を覚えた。
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