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気付いたら夕日が綺麗に見える時間になっていた。私は森さんと今後の任務の話という名の雑談をしていた。
私は話すのが好きな方では無い、正直嫌いな方だ。
けれど世の中には話していても苦にならない人が居るのだと知った 。
人間は同じ知能レベルの人間と話すのが一番楽だと聞くが、私はそれよりも、もっと重要なことがあると考えている。
しばらく沈黙だった空間で再度喋りだしたのは私だった。
価値観が合って思想が似てるからこそ小さな違いがあったとき、その人のことをより深くしれたと思える。
でもそれは元々の感覚が似ていないと、知らない部分を知ったという認識になってしまう。
私はそれがあまり好きじゃない。
新しい知識を取り入れたいなら知的で物知りな人と話せばいい、沢山の人と話すことのメリットはこの世界にはどれだけの種類の人間が居て、その人間一人一人どのような特徴があり、どうやって相手をして、どう付き合っていくかということを知る為だけの行為に過ぎない。
森さんはどう思う?私の発言を聞いて森さんは少し笑い答えてくれた。
沢山の人と話すことにはもう一つメリットがあると思う。
私が首を傾げ、もう一つのメリットは何かと尋ねると、森さんは楽しそうに話を続ける。
簡単な理由さ、知能が低い人間の発言や行動を知ることで阿呆に化けることが出来る。
でも、そんな手段は滅多に使わないし、元から頭が良い人ならそんなことをしなくてもある程度合わせられるし、相手がそこまで賢くないなら合わせていることにも気づかない。
だからやっぱりメリットとしては価値が低すぎるかな。私は森さんの話を聞いて思った。
実際現実ではあまり頭の良い人間の意見を参考にしてみて成功する例もあるのでは無いかと、しかしそれと同時に今脳裏に浮かんだ意見が如何に愚かかを理解した。
その上で私は森さんに聞いてみることにした。でも、森さんメリットなら他にもあるんじゃない?馬鹿でも固く物事を考えすぎずに、素直な意見で周りからの支持を得ている人とか。
私がそう話すと森さんは渋い顔で答えた。
馬鹿と素直で頭が柔らかい人を一緒にしちゃいけないよ、物事を固く考えず、時には安直過ぎると周りが思うようなアイディアを出せる人は馬鹿じゃないんだよ。
そういう事は頭が良くないとできないしね。
それと、楽観的な思考で周りからの指示を得られたとしても、それは一時的なものに過ぎない。森さんは話終わったあと、何かと不満そうにしていたが、私は気にせず話し出した。
深く物事を考えれもしないだけなのに、思考を放棄するのは良くないよね、普段から森さんに何回も「物事を軽く考えるな」って言われてるからね。
私がそう言っても森さんから返事はなかった。窓の方を見ていた私は返事のない森さんの方へ振り返った。
私と目が会った瞬間、森さんは不貞腐れたような顔で喋り始めた。
私がなんて返答するか気になってわざと聞いたよね。
私はどうなんだろうね、とだけ答えた。私と森さんが話し終わる頃には、ヨコハマの街に月が出てきていた。
次の任務の時間が迫っていたので森さんの部屋を出ようとした時、「今夜は月が綺麗ですね」と言われたが私は「そうですね」とだけ答えて部屋を後にした。