僕らの マスク戦争
第一章 pandemic〜1
僕は一心不乱にその場を走って逃げた。
(どうする?強くなれ自分❗️考えろ、弟を救うためにも、絶対に捕まるナ)
どこまでもどこまでも気が遠くなるほど走り続ける。時々背後を振り返りながら、右や左の路地を駆け抜け、商店街の軒先をくぐると、目の前に見える大通りの人混みの中に身を投じた。
ゴールドのバッチをつけた全身黒ずくめのスーツを着た者達は,あちらこちらに配置され、国の意向に背く行為を見つけ次第、取り締まる。
政府機関の危機管理対策として、新しく作られた組織,すなわち、違反者を捕える(黒マスク)警察と呼ばれた。
追っては、次から次えと現れ、あらゆる場所からターゲットに照準を合わせて食らいついてくる。
(どのぐらい走って来ただろうか?高校入学から三年、終わらないpandemicって?僕達は何も悪く無い!普通に暮らすことが罪だなんて、僕らの自由を返せ❗️)
いろいろな事が頭の中を去来し、逃げていたその間、僕にはとてもとても長い記憶のように今甦…る。
僕の名前は宮原シズキ、都立高校3年。
志望校受験をそれなりに頑張り、普通に新たな学生生活を楽しみに待つはずが、流行病はその年から広がりを見せ、入学式の際は、パンデミックの真っ最中となり、式典は教室内で短時間のリモート祝辞で終えた。
もちろん1学期は数える位しか通えなかったし、初めてクラスの仲間たちと出会ったのに、悲しいのか嬉しいのか?本当に笑っているのか、マスクの上からだと表情が乏しく(生の笑顔が見たい!)と僕は,心底思っていた。
暫くは苛立ちと歯痒さを感じながらも、皆、同じ境遇と、思いが重なり、それなりに心通う友は増えていった。
ただ、女子は苦手なので、なかなか自分から話すことも無い。結果、この1年は登校日も数える位だったことも在り、女子との縁は、まるで無縁そのもの。これから先もずっとだ。
但し,1人の女子を除いて……うん
櫻坂キョウコとは高二の進学クラスで一緒になった。僕の前がキョウコの席だ。あつ森ゲームの話などで、盛り上がり、親しく話ようになる。
キョウコは快活で、頭も良く、美術部に所属し、美大を目指していた。160センチの痩せ型で、切れ長の狐女と言うより、もっと身近な動物、うんそう、尖り耳が付けばまさに未来猫(ロボット型ニャンコ女子だ❗️)と、最初僕は見た時、強烈に感じた印象から、勝手に名付けた記憶がある。
マスクから覗く瞳が大きく、高音で抑揚の少ないまっすぐな声も、まさに(ITロボット)のように目立っていたから… …。僕は彼女に不思議な縁を感じていたが、それが何故かは分からない。唯、彼女の近くに居れば、安心する。
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