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少し照れくさそうに言う桃くんに、僕はだんだんと怒りが湧いてきた。
桃くんは、弱い人間でも、ダメな人間でもない。
悪いのは、周りの環境なのに…!
「桃くんは弱い人間でも、ダメな人間でもない!」
つい大きな声を出してしまった僕。
ごめん、と言いながら頭を掻く。
「僕、全然気づかなかった。
毎日一緒にいたはずなのに、桃くんがいじめられていることにも、何も気づけなかった。
身体中にあざとか自傷の痕があるって…。
そんなことにも気づけない僕が大切だなんて、桃くんはどこまで優しいんだろうね。
人から愛される生活が当たり前だった。
愛されない人なんていないって、勘違いしてた。
どうして桃くんにはできて、僕にはできないんだろう、って、そんなことばっかり考えてた。
いつもいつも桃くんと比べられて、
“どうして桃は出来るのに、お前はできないんだ”
って、そればっかり言われてた。
どれだけ努力しても報われることなんてなくて、桃くんに追いつけることはなかった。
桃くんがいなければいいのに、って思ったときもあった。最低だよね。
僕が通り魔にあったあの瞬間思い出したんだ。
“青。気をつけろよ。”
っていう桃くんの言葉。
言われたときは、そんなことわかってるって思ってムキになって少し強くあたっちゃったりしたんだけど、桃くんの言う通りだった。
病院に運ばれて、目を覚ます頃、正直桃くんはいないだろうと思ってた。
でも、桃くんは一番に駆けつけてくれてた。一番心配してくれた。
僕より僕のことを心配してた。桃くんって心配とかするんだ、とか思ってたけど、今思うとそういうところが人間らしいのかも。
僕、不思議な夢を見てさ。
あの日の夢だった。
家族で公園に行ったあの日。
お母さんとお父さんがいて、僕に言ったんだ。
“アルモノを探しなさい”
って。
“そうすれば本当に大切なモノが見えてくる”
って。でも、すぐにはわからなかった。
桃くんが運ばれていくのを見て、心臓が止まりそうになった。
桃くんが何日も目を覚さなくて、僕は寂しいと思った。
そこで気づいたんだ。
僕の本当に大切なモノは、“桃くん”なんだって。
当たり前はすぐなくなる、ってわかってたのに、当たり前がなくなるまで気づかなかった。
僕の方こそ最低で、弱くて、ダメな人間だよ。」