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「ダメダメ!北斗!何事も最初が肝心だぞ!」
「そうだ!情けないぞ!カミさんの買い物なんか男が付き合うもんじゃないぞ!あの北斗が信じられん!」
「ああ!そうだ!お前は高校の時はそれはそれは恐ろしかった」
四人が昔を懐かしんで言う
「そうだったか?」
北斗がきょとんとして言った、四人が首を縦に振った
「ああ!今はまるくなったものだ」
「忘れたのか?お前は怖かった」
「俺なんかお前と喋れたの育成協会に入ってからだぞ 」
北斗はフム・・・と自分が学生時代の時を思い出した
高校に入学してからの北斗は、亡くなった父の仕草をそっくり真似して横柄に眉を吊り上げ、蔑んだ目で、世界は我が物といわんばかりの態度をずっと取っていた
でも実際はいつ舌が回らなくなって、人前で吃音症がぶり返さないかと恐れてビクビクするのを隠すためだった
幸い高校生活ではそのような失敗もなく、大学に入ってから本格的に農業を学ぶうちにどういうわけか人と打ち解けない態度のせいで、気づくといつしか同級生達が自分を恐れるようになっていた
聡明で体つきも逞しかった北斗が、何より先生にも生徒にも一目置かれるようになったのは、吃音症を隠すためのその態度が関係しているようだった
必要以上に話さないため、将来の裕福な牧場主にふさわしく、尊大に振舞っているように見えていたらしい
本当に気の許せる友人は、幼馴染の郵便局長の息子ビック・ジンと、その妻の貞子とだけで、いつもその二人と過ごす事を好んでいたことも(この二人は北斗の吃音症を理解してくれて援助してくれた)
これまた将来の莫大な財産を持つ牧場主にふさわしく、付き合う仲間を厳選していると思われていた
必要以上にしゃべらないが、いざ意見を求められると率直で、簡潔に、的を得た答えが返ってくるので、北斗自身はまるで信じられない展開だが、周りからは尊敬される学生時代だった
そしてそれは今現在の職業にも生かされ、競走馬育成協会の重役として、みんなから一目置かれていた
「カミさんの言いなりになるのもいいもんだぞ 」
北斗はニッコリ笑って四人に言った
「何を言ってるんだ!男たるものカミさんなんかキチンと、こう言うことを聞かせてだな~!」
一人がバシバシと叩くそぶりをみせる
「そうそう!」
「カミさんはちゃんと躾けないとな」
「お前らみんなできてないくせによく言うぜ!」
「なんだ!俺はカミさんより強いぞ」
「聞いてくれよ!うちのカミさんときたら!」
新婚の北斗を挟んで、友人達が軽い口調で笑いながら楽しそうに話す
「北斗さん!お待たせしちゃってごめんなさい」
その時アリスの声がして、北斗に絡んでいたほろ酔いの四人全員が、声をした方を見やった
その女性は艶やかなのストレートの髪をなびかせ、髪が太陽に反射して輝いていた
手には綺麗にラッピングされた、フリージアのフラワーアレンジメントを持ち、ハート型の顔と長く濃い睫をしている
いまそれがゆっくりと上がって、温かい大きな瞳がこっちを見て微笑んでいる
女らしいしなやかな体つき、自分達よりも遥かに若くて、新妻の初々しさと清楚な色気に溢れている
春らしい透かしニットとクリーム色のチュールスカート、華奢な足首にストラップがついた同じ色のパンプス、愛用しているに違いない、エルメスの小さな水色のバーキン
少し気取った感じの上品な微笑み、一分の隙もないその姿は、まるでおとぎばなしのお姫様そのものだ
四人はアリスを見て静止画のように固まった
間違いなくこれまで出会った誰よりイケてる、女性が今目の前にいる、酒を片手にいつまでも話して聞かせたくなるような
すごい美人だ
「紹介するよ、俺の高校時代の友人で競走馬育成協会のメンバーだ」
北斗がアリスに間抜け面をしている四人を紹介した
ニッコリ
「はじめまして妻のアリスです。どうぞお見知りおきを・・・・」
アリスは四人に微笑んでペコリと会釈した
「あ・・・ 」
「い・・・ 」
「う・・・・」
「えっ・・と・・・・」
その洗練された美しさに、なぜか四人は自分達が田舎者と意識して急に恥ずかしくなって、真っ赤になって何も言えなくなった