「友人を許してやってくれ、みんな無骨者で礼儀をわきまえていないんだ」
北斗はため息をついてアリスに小さく首を振った
クスクス・・・「いいえお会いできて嬉しいですわ」
「良い買い物が出来たかい?」
「はい!とっても!インスタでここのお花屋さんを見つけて、お土産にぴったりだなってずっと思ってたの、これなら貞子さんも喜んで頂けるんじゃないかしら」
アリスは嬉しそうに北斗に花を見せた
「でも・・・ラッピングに時間がかかって、お待たせしちゃって申し訳なかったわ、やっぱり前日に私が一人で買いにくれば、お手間を取らせずに済んだのにね・・・」
北斗がアリスの髪を一束指にとって、その匂いを嗅ぐ
「君のためなら、たとえ明石海峡の生ワカメが欲しいと言われても、船を出して連れて行くよ 」
「せっかくのお休みなのに、私の行きたいお店に連れてきて下さるなんて、あなたはとても優しい旦那様だわ」
ボソッ「お礼なら今夜たっぷり聞くよ・・・あれから君のおねだりがないから、俺は実は寂しく感じてるんだよ?」
アリスの耳元で囁く
「わっ!もうっ!皆さんに聞こえるわ!北斗さんったら・・・恥ずかしいっ 」
アリスが真っ赤になって、北斗の胸に隠れた
ぼぉ~っとその光景を四人が、口をあんぐり開けて眺めている
恥ずかしがるアリスの肩を抱いて、去って行こうとする北斗が、くるりと四人に振り向いて聞いた
「それで?カミさんをどうするって?」
「あっ!いや・・その・・・」
「俺達は別に・・・ 」
しどろもどろになって焦っている四人を残して二人は去って行った
北斗の同級生の四人は、暫く二人が見えなくなるまで呆然と見送った
そして一人がボソッとつぶやいた
「すんげぇ・・・美人だな」
「げ・・・芸能人かなにかかな?・・」
「さぁ・・・・ 」
「羨ましいのだけは確かだな・・・」
「北斗さんは本当に色んな人に影響力があるのね、みんな北斗さんと仲良くしたがっているし、あの人たちもどこか北斗さんを尊敬していたわ」
「そう褒めてくれて嬉しい分、気に入らない気持ちもある」
「どうして?」
アリスはうっとりと素敵な自分の夫を眺めて聞く
「君に色目をつかう男が多すぎる、全員ぶち殺してしまいたくなる」
唸り声で言った、意表を突かれてアリスがいきなり笑い出した
クスクス・・・「そんなバカげた焼きもちをやいて頂いて光栄だわ、本当に・・・とんでもないぐらい・・・素敵だわ・・・感謝します 」
「感謝してくれてもちっとも嬉しくない」
ぶすっとしている北斗が何だか可愛くて、おかしくて笑ってしまう
笑われているのが気に入らないのか、北斗が意地悪くアリスに言う
「ここのサービス・エリアなら、ちゃんと店員がいて対応してくれるから大丈夫だっただろう?」
「もうっ!北斗さんってば、まだここに来る前の事、思い出して笑ってるのね」
アリスがプクッと膨れて北斗の腕に手を回してきた、柔らかなアリスの胸の感覚がとても気持ちがいい
くっくっ・・「ごめん・・・ごめん・・君は貴重な存在だなぁ~と思ってさ、巷のお嬢様はみんなそんな感じなのかな?」
プイッ「そんなことありませんっっ!」
アリスは不服そうにほっぺを膨らませた、でもたしかにあの失態はなかったなと、思ってまたアリスは恥ずかしくなった
それはつい30分ほど前の事・・・
「ちょっとコンビニに寄ってコーヒーでも飲まないか?お目当てのジンの家はまだ遠い 」
「ええ!私も喉が渇いたわ」
アリスがぱっと表情を輝かせた
北斗が土地が余っている田舎にありがちな、大きな駐車場の割には、こじんまりとしたコンビニエンスストアの前に車を駐車した
北斗が店内に入ると、コーヒーと揚げたてのフライドポテトの匂いがした