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日はとっくに沈み、月が顔を出している頃、

日中でも薄暗いこの街は、夜になるとさらにその暗さが増す。

届かない月明かりのかわりに街灯があたりを照らしていた。


しばらくして、ナリアの寝息が聞こえてきた頃、何を思ったのか、俺はベランダへ出ることにした。

夜風が頬を撫でる度に、“頭部”がなびいて形を変えていく。


ー貴方…私の姉と会ったことあるんじゃないの?


彼女の声が蘇る。


「ああ…!あるとも!あるに決まってるだろ…!だって…あんなに…」


「あんなに…」


蹲りながらも、必死に頭を働かせる。

知っている。彼女を。


そうだ。俺は彼女をあんなにも…


「愛してたのに…」


どうして 思い出せない ?


彼女の顔も、鈴を鳴らしたのようなあの声も、甘い香りも…暖かさも…

体では思い出せる。なのに…どうして…頭が追いつかないんだ。


俺は泣いていた。

涙を流すはずのない体が…涙を流していた。


すぐそこにあるのに、思い出せないもどかしさと、悲しみで震えてた。


嗚呼、いつぶりだろうか。

俺がこんなにも感情を高ぶらせて震えるのは。

この世に生まれ落ちた時ですら、こんなにも感情を高ぶらせることはしなかった。


一体俺は 何を忘れたんだろう

「…」


深い霧に包まれたこの記憶だけが、

頭の中で渦巻いていた。

君にアネモネの花束を

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