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花崎は自分を追い越していく尾山を、狐につままれたような心境で見つめた。
なんだ―――こいつ……。なんで生きてる……。
死んだはずだろ。
最後の勝者は自殺するんだろ……?
だって、さっきの“鬼ごっこ“のとき―――。
アリスは参加者じゃないってことがはっきりしたじゃないか。
“鬼”はアリスを見ても反応しなかった。
そうだろ……?
『―――彼は次のモノに反応します』
脳裏にアリスの声が蘇る。
『①音 ②気配 ③匂いです。感度は人以上、犬以下だと思ってください』
花崎は舌打ちをした。
―――やられた……!!
感度の部分が気になって、肝心なところをちゃんと考えていなかった。
鬼が反応するのは、音、気配、匂い。
つまり鬼は―――。
目が見えない。
気配も匂いも、正確な方向まではわかりにくい。
鬼が頼りにしていたのは、
―――音だった。
あのときアリスは倒れた体勢のまま微動だにしなかった。
最初に音を立ててのは―――
クローゼットの扉を開け放った自分だった。
アリスはゲームの参加者。
尾山は生き返ってしまった。
ゴールに指定された花崎の自宅には―――
尾山の息子の死体がある。
「くっそ……!!」
花崎は走り出した。