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「なあなあ若井は?いつまで母さんと風呂入ってた?」
皆和気あいあいと談笑に花を咲かせガヤガヤと騒々しい昼休み。それは俺と俺の友達も例外ではなく、お弁当を食べながらくだらない話をしていた頃、話の流れで『いつまで母親とお風呂に入っていたか』というトークテーマに入っていった。典型的な男子中学生である。
「うーん…俺は大体兄ちゃんと入ってたからわかんない」
「あー、若井お兄ちゃんっ子だもんな」
「や、というより若井の兄ちゃんがブラコンなんだよ」
友達のその言葉にとりあえず曖昧に笑顔を返して濁す。
俺の兄が弟大好きなブラコンというのは地元では割と周知の事実で 幼稚園からの幼なじみであるこの2人ももちろん知っている。
まあ、俺の家に遊びに来る度に兄に冷たくあしらわれているし酷い時は「早く帰ってよ」と追い出されたこともあるので、身をもって知ってるだろう。あの時は本当に申し訳なかった。あの後兄と人生で初めての口喧嘩をしたのも含め苦い思い出だ。
「俺はたぶん小2くらいで1人風呂デビューした!」
「あぁ、一緒くらいかも。若井も?」
「うん…俺もそのくらいかな」
…嘘だけど。
適当に相槌を打ちながら弁当に入っていたからあげをぱくりと頬張り「ハムスターみたい」とよくからかわれる頬袋を忙しなく動かしながら咀嚼していると、次第に話題は移り変っていき、高校の進路の話になった。
「俺は私立専願ではやく受験終わらす予定っ!」
「うわ、ずる〜!俺は多分普通に県立だな…若井は?」
基本的に人から聞かれないと喋れない俺の性格をよく知ってくれていて、毎回俺にも話を振ってくれる友達には本当感謝している。
「俺も適当に商業のとこいく、〇〇高校とか」
「あ、一緒!今度のオープンスクール一緒に行こうな!」
「えっずりい!俺も行く」
「お前私立に行くんだろー?笑 若井、二人で行こうなー」
陽気に笑いながら肩を組んできた友達や、「ううぅ」と泣き真似をしてくる友達の姿が面白くてつい笑顔になる。
こんな大人しい自分と仲良くしてくれる賑やかな友達に囲まれて、和やかな昼休みの時間は刻刻と過ぎていく。最近では学校が1番心休まる場所だ。
…家に帰ると、兄…元貴がいるから。
「遅い。何してたのこんな時間まで」
「……塾。それにまだ7時じゃん…」
「今日は無いはずでしょ。お友達の…岡田くんだっけ?…の家行ってたんだよね」
「っ…!またGPS付けたの…?何回も言ってんじゃんっ、そんなのつけないでよ!」
家に帰ると、運悪く元貴がバイトに行っておらず、家にいる時間帯だった。昔から俺に異常なほど執着していて、俺をどんな手を使ってでも縛り付ける元貴には何を言っても意味が無いことなんてもうわかってるが、それでも抗議せずにはいられなかった。
だが、今日はダメだった。
抵抗してはいけない日だった。
その証拠に、元貴の目は俺の言葉によりすっかり氷のように冷えきり、真っ黒な瞳には俺しか映ってなかった。玄関だけ温度が下がったような気がして、自然と身震いする。
「っ、あの…元貴…っ」
少し俺の言い方がきつかっただろうか。途端に心配になってすぐビビってしまうのは俺の悪いところだ。
「本当に滉斗は頭悪いよね、この前もこうやって教え込んだのに」
声色は先程と変わりなく穏やかなのだが、それは元貴の心の中で荒れ狂う激情を無理やり押えているからこそであり、逆に俺の恐怖心を助長させる。
「まあいいか。何度でも身体に叩き込んでやるから」
あぁ、ミスったな。今日は機嫌が悪めの日だったのか。
そう他人事のように自棄的に考えているとぐい、と強い力で腕を引っ張られ体のバランスを崩したところを膝裏に手を回され所謂お姫様抱っこをされる。突然の浮遊感に慌てて首に手を回すと連れて行かれたのはやはりというべきか元貴の部屋で、ベッドに乱暴に投げ飛ばされベッドのスプリングの音が大きく音を立てた。
「…っ、おかあさんは…?いるんじゃないの…」
「うん、今は夜ご飯作ってるよ。だからあんまりおっきい声出しちゃだめね」
「そんな…。…ちょっ、やだ…やめて…!」
俺の声は無視して制服を無理矢理剥ぎ取られる。肌には昨日つけられたばかりの大量の噛み跡やキスマーク。少しだけ元貴の瞳に光が戻った気がした。
「よかった、さすがにまだ残ってるか。こんなんじゃ人前で脱げないね」
にやりと笑いながらそう言う元貴に腹が立つ。
「っ、元貴がやったんでしょ…!」
「だって、滉斗の裸をクソ男どもが見たら欲情するに決まってるでしょ。牽制しとかなきゃ」
するわけないだろ。こんなぺらっぺらの固い体なんかで。第一俺は男だ。そりゃあ…そういう好みの人もいるかもしれないけど、ほとんどの男は可愛くて、柔らかそうな女の子が好きだろう。
元貴が、噛み跡やキスマークひとつひとつを優しく撫でるたびにぞわぞわと鳥肌がたち、それと同時にこんな所を母親に見られたらと気が気でない。
「ねえ…っ、やめて…!お母さんに見られたらどうするの?」
「大丈夫、最近この部屋内鍵つけたから」
そう平然と言う元貴に戦慄する。
だって、そんなの
「だから誰も入ってこれないよ」
今後、もっと抱かれる頻度が増えるということじゃないか。
「や、だ…やめてよ……」
もう弱々しい声しか出ない。こんな…えっちなこと、普通兄弟はしない。ブラコンなんてそんな次元じゃない。恐怖と、俺たちはなんでこうなってしまったんだと今更すぎる疑問で頭がよく回らない。
「母さんに見られたくないんでしょ?滉斗のためにやったんだよ」
相変らず頭の回転が早い元貴には口論では勝てない。言い返す言葉が思い浮かばなくてただ口をぱくぱくと開けたり閉じたりしていると、元貴の顔が近づいていて、これで話は終わり、 とでもいうようにキスされていた。
コメント
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兄弟パロの中でも癖中の癖です🫶