テラーノベル
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アヴィア王城、謁見の間。その室内には、昼の陽光が大きなステンドグラスを通して降り注ぎ、赤や青の色彩を大理石の床に落としていた。
魔王ステラ・アジャンスタは、分厚い書類の山の前で筆を止め、黄金の瞳をわずかに細めた。
「関税率は10%で良いだろう」
「し、しかし魔王陛下。それでは近隣のサールス商会との折り合いが──」
目の前のアヴィアの国王が、おそるおそる声を上げた。白髪に金の冠。威厳を保つその姿には、しかし汗が浮かんでいる。
「サールス商会の主は、先週私が直々に呼んで話をつけた。あいつは、長期取引を保障する方が大事だと言っていたはずだ。」
パラリ、と紙を捲りながら、ステラは淡々と告げた。
「問題ない。10%で押し切れ」
「……かしこまりました」
国王は深々と頭を下げた。
「それと──」
ステラがさらに視線を鋭くする。
「これ以上、貴族どもに勝手に私の許可なしで外交文書を回すな、私の名前を勝手に使うのも禁止だ、と伝えておけ」
国王は冷や汗をぬぐう。
「も、申し訳ございません……」
「……この国同士の取引は面倒だが、大事だ。わかっているな」
「はっ……!!」
ステラは短く息を吐き、またサインを走らせる。紙とペンが擦れる音が謁見の間に静かに響いた。
書類を片付け終えると、ステラは指先で黒髪をかきあげた。
(……終わったか)
ふ、と窓外を見る。白い雲が空を走り、街の屋根が陽光で煌めいていた。
(……魔王城に戻るか?)
足元に魔力が集まり、転移の魔方陣がうっすらと光り始める。だが、次の瞬間ステラは小さく頭を振った。
「……いや、面倒だ」
結局、陣はすぐに掻き消えた。
再び謁見の間の扉が重く開く音がした。
「し、失礼しますっ……あっ、えっと……エンリカ……き、来ました……」
戸口に立っているのは、魔王軍幹部エンリカ。華奢な体を縮めるように立ち、視線を彷徨わせている。その背後から、一際強烈な存在感を放つ白衣の男がゆっくり入ってきた。
全身白のロング丈実験服。細身だが、妙に空気を支配する迫力。紫の光を点滅させるゴーグルを目元に装着し、その光が不規則に瞬いている。
「へっへっへ!! 解析は終わったぜぇ! 俺の計算式は、やっぱり完璧だったなぁ!!」
ステラは顔をわずかにしかめた。
「……うるさいぞ、シグ」
シグ・エルファート。魔王軍の技術・研究・セキュリティ部門を統括する幹部。その若々しい外見に似合わぬ古参レベルの知識と技術力を備えた男だ。
「へへへ! だろ!? 俺は天才だからなぁ!! そんでさ、ステラ様! この前言ってた魔道具のデータ、解析完了したんだよ!! いやぁ、未知数って最高だな!!」
エンリカが恐る恐る口を挟む。
「あっ、えっと……ステラさま……し、シグさん……ずっと喋ってて……止まらない……です……」
ステラは軽く額を押さえた。
「解析結果は後で聞く。それより報告があるだろう。」
「おうとも! ちょっと待ってな!」
白衣の袖の中からシグはごそごそと何かを取り出す。魔力で構成されたホログラム式の板がぱっと空中に展開され、数字と線が複雑に走った。
「ほら! これ! 魔王城の監視網のデータ転送速度、前回比27.3%向上! それから結界強度、昨年比41.8%アップ!! おかげで他国の暗号通信、だいたい解読済みだぜ!!」
ステラは疲れたようにまぶたを伏せた。
「……他国の暗号解読はやりすぎるな。それと面倒ごとは増やすな」
「うおー!? ステラ様冷たいっ!! せっかく俺の芸術的暗号解析がぁぁ!!」
ステラは無言でホログラムを閉じると、エンリカへ目を向ける。
「……で、幹部間の調整はどうなっている?」
エンリカはぴくりと肩を揺らした。
「あっ、えっと……バルマレオさんと……さっき、話してきました……。その……トオルさん達の、訓練の……こと……」
ステラはわずかに目を細める。
「……訓練、か」
短く息を吐き、思い出すのは昨日の話。
ヴァルム、ルザリオ、バルマレオの3人が透達を鍛えるというもの。
「バルマレオは、あいつらの鍛錬に乗り気なのか」
「う、うん……。バルマレオさん……あの、トオルくん達が、筋肉足りないって……。基礎からって話だったけど……色々するって……」
ステラの唇がわずかに動く。
「……そうか。」
ステラはふっと息をつき、視線を窓の外にやった。
(あいつら、少しは変わったか。ヴァルムも妙に張り切っていたし……)
一瞬、思案するようにステラは指先で机を叩く。
(見に行くか……)
やがて決意を帯び、ステラは静かに立ち上がった。
「……片付けはまた後だ。面倒だが、行くぞ」
白衣を揺らすシグが「おっ! ならついでに訓練の解析データも取るぜ!」とにやにや笑い、エンリカが「うぅ……うるさいぃ…」と呟く中、魔王ステラ・アジャンスタは静かに空間転移の陣を呼び出した。
黄金の光が、再び彼女を飲み込んでいく。
────────────────────────
夕暮れの光が、城の裏庭を長く赤く染めていた。
風が強く吹き抜け、茂みを揺らし、葉擦れの音が小さなざわめきを生む。
その庭の中心には、まるで瓦礫の山のように、五人が転がっていた。
透。ギルメザ。ミナミ。ラグ。キール。
全員が地面に倒れ込み、呼吸は荒く、衣服は土や草で汚れている。
透は、息を吐きながら天を仰いだ。
意識がまだ揺らいでいる。
視界がにじんで、空の赤が暗く沈んでいくのをぼんやりと見つめていた。
(……やっべ……息が……吸えねぇ……)
その隣でギルメザが「ぜはっ、ぜはっ」と必死に息をしている。
110cmほどの体格であるにも関わらず、顔は真っ赤で、白目を剥きかけていた。
「ぅあ゛ああああ……お、オレ様が……なんで……」
ミナミは同じく、地面にへたり込んで手足を広げ、かすれた声で泣きそうになっていた。
「もぅやだ……もぅ無理……なんなのさっきから……」
ラグは口の端から血を流しつつ、荒い息を吐き、左腕を抱えている。
「ッ、くそ……どれがフェイントで、どれが本気だか……わっかんねぇ……」
キールは鼻血を垂らしつつ、ぼうっと虚空を見ていた。
「耳が痛ぇ……あんな速さで動かれたら、音が追いつかねぇよ……」
彼らの前に立っているのは、ヴァルム。
魔王軍幹部の一人で、銀髪を後ろに流した端正な顔立ちの男。
上品な燕尾服姿のまま、目元に僅かな笑みを浮かべている。
「──やり過ぎましたかねぇ。ふふふ……」
ヴァルムは指先で顎を掻き、目を細めた。
まるで幼い子供が、やり過ぎた悪戯を反省するような表情だ。
しかし、反省しているはずなのに、その口元にはなお楽しげな笑みが残っていた。
「でも……素晴らしかったですよ、皆さん。実に、実に面白かった」
透はうつ伏せのまま、息も絶え絶えに呟く。
「……どの隙も、フェイクか本物かわかんねぇの……無理すぎ……」
「えぇ、それこそが《判断力》の訓練ですからねぇ」
ヴァルムは深く息を吐き、背筋を伸ばした。
「『隙』というものは、戦場において敵がわざと作る罠であることが多い。ですが本物の隙もある。見極めが遅れれば、死ぬのは一瞬です」
彼は足元の透たちを優雅に見下ろす。
「今回の訓練は、私がフェイントと本気の攻撃を混ぜながら、皆さんの《判断力》を極限まで引き出すというものでした。ふふっ……なかなか、皆さん良い反応をしてくれましたよ」
透は血の味を感じながら、地面に顔を押し付けた。
(良い反応ってなんだよ……)
ヴァルムは続ける。
「特にラグどの。素晴らしかった。あの土魔法、予測していた動きと別ルートを塞ぐ狙い、見事でした。ですが──」
彼はゆっくり手袋をはずし、白い指を見せつつ笑う。
「詰めが甘い。あなたが動いた瞬間、私は気づいていました」
ラグが顔をしかめる。
「くそっ……全部読まれてんじゃねぇか……」
ヴァルムはまた視線を巡らせる。
「キールどのも悪くはない。耳を頼りに私の動きを追おうとしたのは評価します。しかし──」
ヴァルムは素早く片手を振り、キールの耳元すれすれを風が切り抜けた。
「私の動きは音速を超えています。追いきれませんよ」
キールは「ひっ」と声を上げて首をすくめる。
ヴァルムの目が透に戻る。
「そして……トオルどの」
ヴァルムは微笑んだまま、透の髪をひょいと摘まんだ。
「最初のアレ、素晴らしかったですよ。上下の空間を使う発想は、なかなか出来るものではない」
透は息を切らしながら目を細めた。
「……それでも結局、ボコられてんだけどな……」
ヴァルムは朗らかに笑った。
「それが訓練というものです。失敗して学び、次に活かす。貴方の《判断力》は、今回で確実に伸びました」
その瞬間──
「──やりすぎだ」
低く、凍りつくような声が背後から響いた。
透たちが驚いて顔を向けると、そこには漆黒の長い髪、鋭い金の双眸を持つ女が立っていた。
魔王、ステラ・アジャンスタ。
ステラはゆっくりと庭を歩み出し、ヴァルムに金の視線を突き刺す。
「……お前、全員死ぬ一歩手前じゃないか」
「はは……ステラどの。つい楽しくなりまして」
ヴァルムが苦笑する横で、さらに二人の人影が現れた。
「えっ、えっ……うぅ、すごい……ぐちゃぐちゃ……」
顔を真っ赤にしたエンリカが、恐る恐るギルメザを引きずっていた。
もう片方では、白衣の男、シグ・エルファートが透の脚を掴んでいる。
「おーし、運ぶぞぉ! えっさ、ほいさ!!」
「やめろ、恥ずかしい……っ」
透は必死に抵抗したが、力が入らず、ずるずると引きずられていく。
ギルメザも「ぐあああぁ……オレ様を……引きずるなァ……」と絶叫している。
ステラは、呆れ顔でヴァルムを見やった。
「……何がどうなったか、報告してくれ」
ヴァルムは燕尾服の裾を整え、真顔に戻る。
「今回の訓練、テーマは極限の《判断力》。全ての攻撃の隙が本物か偽物か、判断させる内容でした。」
ステラが眉をひそめる。
「で、結果は?」
「成長の兆しは見えます。特にトオルどのは、空間移動を縦軸で使い、私の足元を取ろうとした。これは非常に優れた発想です。」
ステラは顎に指を当てた。
「……あれだけ血まみれにしておいて、それだけか」
ヴァルムは苦笑する。
「ミナミどのも連携が良くなってきました。だが恐怖心が先行しすぎる。ギルメザどのは──」
ヴァルムはギルメザの方向を見て、顔をしかめた。
「……調子に乗りすぎです」
「うるせぇえええええ!!」
ギルメザが絶叫した。だが、引きずられたままピクピクしている。
ヴァルムは続けた。
「ラグどの、キールどのも素質はあります。ただし状況の変化に対する柔軟性がまだ不足しています。皆さん、確実に成長はしてますよ」
ステラはわずかに目を細めた。
「……ふむ」
赤い夕空がゆっくりと紺へと移り変わる。星がひとつ、またひとつと顔を出す頃。
透は、まだ地面に転がりながら、ようやく目を開けた。
(……死ぬかと思った……)
痛む体を無理やり起こすと、空の深い紺が目に沁みた。魔王城の灯りが遠く瞬いていた。
透は、ぼんやりと天井を見つめていた
視界の端で揺れる天幕は、淡い魔石の光を反射しながらゆらりと揺れている
部屋はしんと静まり返り、僅かに聞こえるのは人の寝息だけだった
視線を横にずらすと、隣のベッドでギルメザが大きな口を開け、ぴくりと尾びれを動かしている
小さな体は布団に埋もれ、それでもなお威圧感を放つように寝ている姿に、透は無意識に息を漏らした
その少し先、別のベッドではミナミが薄い寝息を立てながら、布団をぐるぐる巻きにして眠っている
顔の半分を隠したまま、たまに寝言を呟く声が耳に届く
「……も、もぅやだぁ……」
ラグも、キールも、それぞれ布団に顔をうずめたまま完全に沈黙していた
全員、まるでこの世の終わりを見たような疲労困憊の顔をしているものの、今は穏やかに、すぅすぅと規則正しい呼吸を繰り返していた
透は、小さく笑みを漏らす
あんな地獄のような訓練の後に、よくこんな顔して寝られるなと思う自分も、きっと同じ顔をして眠っていたに違いない
(……腹減ったな)
ふと、透の腹がきゅるりと鳴った
その音が部屋に小さく響いて、思わず周りを確認する
全員爆睡中だった
(どっこいしょ……)
ゆっくりと体を起こす
その動作一つで、全身の筋肉が軋むような感覚があったが──
「……痛くねぇ、な」
透は腕をゆっくり動かし、肩を回した
殴られ、蹴られ、締め落とされ、あちこちに入っていたはずの激痛が、嘘のように消えていた
昨日はまともに息もできなかったのに、深呼吸も楽々できる
(……治癒魔法、か)
ヴァルムが直接癒したわけじゃないだろう
多分、誰か別の幹部がやってくれたのだろうと透は推測する
昨日見たエンリカとシグの気遣いを思い出しながら、ちょっとだけ口元を緩めた
透はそっと布団を下ろし、ベッドの足元に置かれていた外套を掴む
寝てる連中を起こさないよう、気配を殺しながら部屋を出ると、廊下に出た瞬間、ひんやりとした空気が頬を撫でた
魔王城の廊下は昼でも暗い
今は外が夜に染まり切る直前で、わずかな外光が長い回廊の奥をぼんやり照らしていた
灯りが魔石のランプに移り変わるころ合いだ
透は、深く息を吐きながら歩き出す
体の軽さが、かえって妙な違和感だった
(どっかで飯、探すか……いや、ステラとか幹部連中に会えたら食べれるとことか教えてもらえるしな……)
あの訓練の続きを聞くのは怖いが、それでもヴァルムの言葉はどこか学びがあった
それに、魔王軍に限らず、この世界の幹部、はたまた王は、一筋縄ではいかないが妙に人間味があって嫌いになれない
俺を運んでいたあの騒がしい白衣のやつも含めてだ
(……ハレビアとかクリスティアも、ちょっと話してみたいしな)
そう思いながら、透がゆるりと廊下を曲がった、その瞬間だった
「……お前か」
背後で、落ち着いた低い声が響いた
透はびくりと肩を跳ねさせる
振り返ると、そこには深緑の髪を後ろで束ねた男が立っていた
鋭い目元と、冷たい雰囲気を全身から漂わせる男——異淵王、クリスティア
「あ〜……」
透は思わず声を詰まらせた
クリスティアと話すのは、実はこれが初めてだ
幹部とは顔を合わせることも多いが、王であるこの男はその立場ゆえか、これまでほとんど距離を置いていた
その視線に射抜かれるだけで、肌が粟立つような感覚がある
「…ずいぶん気楽そうだな」
氷でできたように冷たい。
「いや、別に……気楽ってわけじゃねぇけど」
透は、慎重に言葉を選んだ
異淵王であるという緊張感が、じわりと背中に汗をにじませる
「言っておくが」
クリスティアはじっと透を見つめる
その瞳にはわずかな光が揺れているが、どこか遠い
「……俺はお前のことを信用していない」
その言葉は鋭く、容赦がなかった
透は、心臓がひゅっと縮む感覚を覚える
だが、不思議と腹の底には、少しだけ安心もあった
(あ、この人、俺のこと嫌いなんだな)
透は苦笑を浮かべるしかなかった
こういう相手の方が、ある意味分かりやすい
「……ま、俺も、あんたに気に入られるとも思ってねぇし」
クリスティアは、ふっと目を細めた
「口だけは達者だな」
その声には冷笑が混ざっていた
だが、その冷笑は完全に氷の刃ではなかった
どこか、ほんの僅かに柔らかい成分が入り込んでいる
それは優しさというほど単純なものではなく、まるで深海の底でわずかに光る微光のような感情だった
透は、そのわずかな光を敏感に察する
だが、それを指摘するほど間抜けでもない
「なぁ、クリスティア。ちょっと聞きたいことがある」
「……なんだ」
「……使徒って、全部悪いやつらなんじゃないのか?」
その問いを口にした瞬間、クリスティアの瞳が細く鋭くなった
空気が一気に冷たくなる
その空気を前にしても、透はなんとか踏ん張って立ち続けた
「……お前は、本当に物を知らないな」
クリスティアは吐き捨てるように言う
「使徒とは元来、世界の運行を正すために生まれる存在だ」
その声は平坦で淡々としているが、確かな熱が籠っていた
透は、息を呑んだ
「すべての使徒が人類の敵だと思うのは、お前の浅い発想だな」
「は……?」
「友好的な使徒もいる」
クリスティアは鋭い声を抑え、僅かに目を伏せる
「ただし、敵対的な使徒の方が、圧倒的に多いというだけの話だ」
「いや、それって結局、敵が多いってことじゃ……」
「お前のその思考が愚かだと言ってるんだ」
クリスティアは冷ややかな笑みを浮かべた
「友好的か敵対的かは、存在の意思の問題だ」
その言葉を吐く声の奥には、ほんの微かな苦しみすら漂っていた
だが、それは一瞬で冷徹な表情に戻る
「使徒というのは、個体ごとに意思を持つ。だが、その根底にある使命は変わらない」
「使命……?」
「世界を正すこと。それが彼らの本質だ」
クリスティアは、薄く笑った
「問題は、何を『正す』と定義するか……それだけだ」
透はその言葉に、背筋がぞくりとした
そこに漂う不気味さは、単純な善悪では切り分けられない深さがあった
「……なるほどな」
「分かっていないだろう」
「……ああ。全然分かんねぇ」
透は自嘲気味に笑った
だが同時に、ぞわりと興奮に近いものが湧いてくるのを感じていた
目の前のクリスティアが放つ言葉は、どれも剣のように鋭いが、同時に未知の知識を伴う何かだった
「まったく……」
クリスティアは溜息をつき、廊下の先へと歩き出す
そして一度だけ振り返る
「使徒の本質を知らぬまま、この世界に生き延びられると思うな」
その言葉を残して、クリスティアは暗い廊下の先へと姿を消した
透は、その背中を黙って見つめ続けるしかなかった
静寂が再び廊下を満たす
透の心臓が、まだ速く脈打っている
息をゆっくり整えながら、透は奥歯を噛みしめた
(……使徒の本質、か……)
自分はまだ、何も知らない
目の前にあるのは底なしの闇だ
その向こうに何が潜んでいるのか─
どうなるのか──