テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

昔から足で探せなんて言葉があるけど、今の世でそれをやるヤツはバカだけ。


賢い僕は彼女のブログやSNSから行動パターンを見つけ出し、今後の行き先を予想することも可能。

住んでいる場所を特定することも本気を出せば割と簡単に出来たが、いきなり家に押しかけるのはマナー違反。それくらい常識だし何よりも不粋だ。


すぐに正面から花蓮麻琴に会って、僕の正体を打ち明けてもいいのだが、それはあまりにも普通過ぎる。彼女に対しサプライズ的な、いわゆる劇的な出会いを演出したい。

そのためには彼女のことをもっと深く知る必要があると判断した僕は、彼女の行動から趣味や好みを割り出すため観察することにする。

初めて対面する場所は今後の思い出になるのだから慎重に選び、彼女の好みの場所で、彼女の好きなものを渡して僕のことを彼女に刻む。既に沢山会話して相思相愛なのは分かっていても、相手を喜ばせることを忘れてはならないと僕は考える。

劇的な出会いをして、それが僕の仕掛けたことだと知り驚き喜ぶその瞬間を想像すると、思わずニヤケてしまう。


思い立ったらすぐに行動する僕は、彼女の行動をSNSから予測し探した結果、花蓮麻琴とミーチューバーの森田彩もりたあやが一緒に、古めかしい喫茶店へ入るのを発見することができた。


喫茶店内では彼女たちは奥に入り、僕は手前のテーブルまでしか立ち入ることは出来なかったが、無事に出会うことが出来て僕の胸はときめく。


しばらくして、奥から談笑しながら出て来る花蓮麻琴を間近で見た僕は、画面越しでは伝わりきれていなかったその可愛らしさに、心臓が跳ね上がるほどの衝撃を受けてしまう。


すれ違ったとき鼻をくすぐる薫りに脳が痺れた僕は彼女を目で追い、店を出ていくのを見届けた後、席を立って後を追う。

すぐに声を掛けたい衝動に駆られたけど、我慢して写真を撮るだけにする。帰った後その写真を何度も眺め、彼女の動画を見た僕はいても立ってもいられなくなり、彼女へメッセージを送ってしまう。


そこから数日彼女の足取りを追い、声を掛けるタイミングを見計らう。


直接声を交わすのは初めてなわけだし、初めての記念になるわけだから大切にしないといけない。劇的出会いを演出し僕の正体を明かした後、2人は結ばれるだけだ。


彼女の行動をもっと把握したい僕は別の日、目的周辺に待機して彼女を見つけると後を追う。


夜道に一人で歩く彼女のことを心配した僕は辺りに変な奴がいないかを警戒しながら後ろをついて行く。歩くたびに彼女の背中で揺れる髪と、スカートの下から覗くふくらはぎに目を奪われる。


もう少しで髪に触れ、あの足を愛でれると思うと彼女を追う僕の足にも力が入る。


突然急ぎ足になる彼女、気付かれないように慌てて追いかけると、僕が知っている彼女の家とは全く違う方向へと向かっていくことに気付く。

目的地が分からない以上、彼女の背中を見失わないようにと必死に追いかけて行くうちに彼女は突如走り始め、僕も気付けば走っていた。


置いて行かれまいと息を切らしながら追いかけた僕は、いつの間にかどこかの家の庭にいた。まだ建築中なのであろう家と資材の置いてある土がむき出しの庭。

土を踏みしめ先に進むと扉のない玄関があり、暗闇の中へ吸い込まれるように僕は入っていく。

床を土足で踏む感覚に違和感を覚えつつ、歩みを進める家の中は少しカビ臭く、建設途中で放置されたのかもしれない。なんだか最近ゲーム配信で見たホラーゲームに迷い込んだみたいだなと思ってしまう。


暗くてよく見えないのでスマホの明かりを頼りにしようと、ズボンのポケットに手を突っ込んだときだった、首の後ろに冷たいものが当たる。


近くでバッチっと音が頭に響き、ゴツッと鈍い音が遠くで響いたと思ったときにはもう意識が薄れ、深い闇へと落ちていった。

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚