紫「おかえり、莉犬くん」
普段まだ聞くことはない声が鼓膜を震わせた
下を向いていた視線を上げると想像通りの人物で
赤「なー、くん…?」
紫「うん?」
赤「今日は、早いね」
紫「仕事が早く終わったからね」
いつも通りの笑顔を俺に向け、その瞳はいつも優しくて
少し、痛い
紫「これから買い物に行くんだけど夕飯何か食べたいのある?」
赤「…あー、俺さとみくんとカフェで軽く食べちゃって……なんでもいいよ」
紫「うん、分かった。量減らしとくね」
赤「うん、ありがとう」
すれ違うなーくんを避けて階段を登る
上手く笑えていただろうか
チラ、と後ろを向くとなーくんと目があった
なーくんは微笑んで手を振って
紫「行ってきます」
と言った
赤「…うん、いってらっしゃい」
目を細めて笑い返し、自分の部屋へと再び足を動かした
ドアを後ろ手で閉めて、ベッドへと体を沈める
その反動でポケットから飛び出たスマホが視界に入った
ヴー、と震えると同時に光る液晶が少し暗くなった部屋では目が痛くなり、明るさを下げた
…るぅちゃん?
どうやらるぅとくんがLINEをしたらしい
来た通知を右にスライドしてパスワードを打つと、るぅとくんとのトーク画面が映し出された
黄『莉犬、ちょっといい?』
何か急用かなと思い、『いいよ』と打つと同時に既読がついて通話がかかってきた
黄『ごめんね、急に』
赤「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」
黄『うん、ちょっと聞きたくて』
赤「なぁに?」
黄『あ、あのね?、その』
画面越しでももじもじしながら、顔を赤らめているのが想像できる
黄『ころちゃんは、、プレゼント、その、さ…喜ぶかな…?』
…可愛い
赤「プレゼントって、誕生日の?」
黄『そうっ!今まで恥ずかしくて渡せなかったんだけど…やっと付き合えた、から』
赤「…そっか、きっと喜ぶよ」
黄『ほんと、?』
赤「うん」
安心させる為に目一杯優しい声を出して頷けば安堵したかのように「良かった」と小さく声を漏らした
赤「どんなプレゼントなの?」
黄『あのね、ころちゃん最近服がダメになったって言ってたからこれから寒くなるし、長袖のパーカーにしたんだ』
赤「そうなんだ、ころちゃん喜ぶね」
黄『だといいなぁ』
その後もちょっと雑談をして、通話を切ると賑やかだった部屋は一気に静かになり、少し寂しさを感じる
そういえば、あんなに堂々と『付き合った日に全て終わらせました!』なんて言ってたけど、るぅとくん、受け…だよね…
赤「…可愛いなぁ…w」
幼馴染のるぅちゃんには幸せになってほしいが、ころちゃんには爆発してほしい
だってあんなにるぅちゃんを泣かせたんだから
あれ……、なんで泣いてたんだっけ…
……………あ、そう
2人が誤解してすれ違いばかりしてるぅとくんが沢山涙を流したんだ
赤「…………本当、どうしたんだろう」
やっぱり、疲れてるのかな
少し重い瞼を擦って電話が来て起こしていた体をベッドへと戻す
そのまま流れるように俺は意識を手放した
次に目を覚ました時にはいい匂いが微かに部屋に漂ってきていた
階段を降りてリビングに近づくにつれいい匂いが強くなってきて、扉を開けると、エプロン姿のなーくんが居て
紫「あ、莉犬くん!丁度今出来た所なんだ」
「良かった」と辺りに花を咲かせながら手招きをするなーくんに近づいてテーブルの上を見ると、どうやら夕飯はオムライスらしい
紫「飲み物何がいい?」
赤「…んー、カフェラテ…」
紫「分かった。先に座ってて」
オムライスにカフェラテは合わないだろう
でも、なんだか飲みたくなってしまったのだ
暫くして戻ってきたなーくんは2つのカップをテーブルに置き、席についた
紫赤「「頂きます」」
2人で手を合わせて声を合わす
カップを手に取ってひと口口に含む
温かくて優しい味
お店のとは少し違くて、美味しい。オムライスも
黙々と夢中に食べる俺を見つめる視線に気づいて見てみればなーくんが暖かい目で俺を見ていて、なんだか恥ずかしくなってきた
赤「……な、何」
紫「ううん別に」
まるでお母さんのような笑顔で俺を見つめて、やっとスプーンに手を伸ばしてくれた
ふぅ、と心の中で息を吐いて俺もオムライスに手を伸ばす
時折雑談をしながら、食事を終わらせ、部屋に戻るついでにお風呂に入った
濡れてぺったりと張り付く髪の毛をタオルで少し雑に拭きながらスマホを弄る
足元で戯れつく可愛らしいペット達の頭を撫でて自分の部屋へと向かう
トテトテと小さな足でついてくるつーちゃん
つーちゃんが部屋に入りきったのを確認して扉を閉めた
椅子に腰掛けて膝の上につーちゃんを乗せ、撫でながらまたスマホを弄る
赤「……………ふぅ、」
なんだか目が疲れて背もたれに体重をかけ、天井を見つめた
赤「8時、か……」
チラッと時計を見る
膝の上で寝てしまったつーちゃんを起こさないように軽く伸びをして、パソコンの電源をつけた
カタカタ…カタ、カタカタカタ
ピロン
赤「……ん、?」
不意に通知音が聞こえてパソコンから視線を外す
スマホを見るともう10時半で、随分と夢中になっていたようだ
通知の相手はさとみくんで
桃『起きてる?』
『うん』そう送ると同時に既読がついた
赤「…なんかみんな既読早いな…w」
電話がかかってきて出ると、少し低く甘い声が耳に伝わる
桃『よぉ莉犬。ご機嫌はいかが?』
赤「何それw」
桃『www』
赤「魔王笑いは相変わらずだね」
桃『カッコいいだろ?』
赤「あーはいはい。ソーデスネー」
膝の上で眠っていたつーちゃんは起きてしまったらしく、膝の上で伸びをして膝から降りた
赤「つーちゃんがうるさいってよ?」
桃『はぁ?そんな事ねぇよ。きっと俺の声をこれ以上聞くとほr』
赤「さぁどうかねぇ」
トテトテと歩くつーちゃんを追ってベッドに腰掛けるとベッドに飛び乗り、俺の隣で丸くなった
頭を撫でてやると気持ちよさそうに瞳を閉じた
電気をつけていない部屋は月明かりに照らされ、薄暗い
桃『じゃあそろそろ寝るぞ』
赤「え、早くない…?」
通話をしてからまだ5分も経っていないのに
桃『早く寝ろっつったろ』
赤「早すぎでしょ」
桃『早くて損はないべ』
赤「……このジジィが」
桃『誰がジジィだよ』
その言葉に俺が笑って、さとみくんも笑う
赤「ふ、はは…w……分かった、今日はもう寝るよ」
桃『おん。じゃあな』
呆気なく切られた通話は俺に早く寝ろと伝えている様で苦笑する
赤「…つーちゃん、早く寝ろってさ」
眠いのか少し潤んだ瞳でこちらを見つめるつーちゃん
ベッドに寝転び、隣にきたつーちゃんの頭を撫でれば気持ちよさそうにして次第に眠りに入っていった
そんなつーちゃんにつられ瞼が重くなっていく
赤「………………今日、何日だっけ」
俺は意識を手放した
もふ…
もふもふ…
赤「かゆ……ん」
目を開けてみると茶色い何かがゆらゆらと揺れていた
赤「……つーちゃん、?」
少し体を起こして見ると俺より先に目覚めていたつーちゃんの尻尾が俺の鼻を擽っていたらしい
俺を見て嬉しそうに声を上げるつーちゃんの頭を撫でてスマホを手に取る
赤「……9月2日…?」
赤「…え、?」
紫「莉犬くん?遅刻するよ」
扉の向こうからなーくんの声が聞こえ、訳の分からないまま学校へ行く支度をした
next…?
コメント
5件
最高でした😭👏✨ もう言葉が出ない🥺次回も楽しみにしています🎶
続きは♡200〜
紫垢ありがとうございます…。大好きな作者さんからの大好き紫赤は本当にご褒美です…ありがとうございます😭幸せです😭 どんどん続いていってとても楽しみで、続きが気になってしまう🤣