「やっほー、みんな!ミィコだよ。今日で配信1周年!いつも応援してくれてありがとう。今日は特別な曲、歌うね!」
ミィコの声は明るく、自然体だった。彼は
「どうせ大したことない」
と冷めた目で見ていたが、彼女がギターの弦を爪弾き始めた瞬間、時間が止まった。
温かい声が、スマホの小さなスピーカーから流れ出した。誰もが知るカバー曲だったが、ミィコの歌声はまるで魔法のようだった。
優しく、柔らかく、それでいて心の奥に染み入る。
配信を始めて1年、彼女の声には経験からくる自信と、視聴者への感謝が込められていた。
彼の疲れた心が、まるで温かな光に包まれるような感覚に襲われた。
「…何だ、この声」
彼は目を閉じ、ただその歌声に耳を傾けた。
仕事の苛立ち、クライアントとのやり取り、過去の裏切り。それらが一瞬で溶けていく。
ミィコの歌は、彼が長い年月忘れていた「温もり」を思い出させた。配信が終わり、ミィコが笑顔で言った。
「1年間、みんなと一緒に歌えて本当に幸せ。あ、そうだ!『セバス』さん、初めて来てくれたんだった!ありがとうね。また明日ね!」
彼は一瞬、目を丸くした。自分のハンドルネームが呼ばれたことに驚きつつ、胸が微かに震えた。
「…本当に、こんな声があるのか?」
彼はスマホを握り、静かに呟いた。砂漠のように干からびていた心に、初めて一滴の水が落ちた。
愛情という名の水をかけたとしても、すぐに乾いてしまうような荒れ地だったが、ミィコの歌声はその砂漠に、ほんの一瞬だけ潤いをもたらした瞬間だった。
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