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桜も散り、少しは暖かくなってきたかな。と

道端でふと思う。

雑貨屋の前を通る時。少し、ほんとに少しだけ、あの人の笑顔を思い出す。


私、**菊池 華英きくち かえ**は雑貨屋の隣に住んでいる。

あの人とは、雑貨屋の上の階に住んでいる男子中学生……。すなわち、近所の人。

私は彼と同じ学校に通っているが、校内で会うことも無く、プライベートで会うことも無いにちかく、声も聞いたことがない。

ただ、近所なので、窓から彼の部屋を覗くと結構な確率で素敵なかわいい笑顔をしているのだ。


私はそこに惚れたと言っても過言では無い。

噂で聞くに、彼はクールであり、笑顔を見せることはほぼないらしい。


彼の名前は**明堂 翔空めいどう とあ**と言うらしい。1つ学年が上だ。

そんな先輩の笑顔を誰からにも邪魔されず、先輩からにもバレず、ひっそりと見ている自分はどうなんだ。と思う時もあるが、そんな事を自分から言うのも気が引けるな。と考えを交差させている。


今日も雑貨屋の前を通る。ふと彼の笑顔を思い出すと同時に、少し思ったことがある。

毎日前を通っているが、買い物に行ったことはないと。

それは、春が過ぎ夏に差し掛かっている時だった。

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