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ぺしぺし! ぺしぺし!


うっ……、ううんっ。


「もう朝か、シロおはよう~」


暗くて姿は見えないがそこに居るのはなんとなくわかる。


木窓を開くと、すこしどんよりした空模様。


メアリーも起こして朝の散歩に出かける。


戻ってきたら裏庭で剣を振ったり身体強化の練習をしたり。


朝食を美味しく頂きながら今日の予定を組み立てていく。


明日からは行商の付き添いと護衛だ。


マクベさんにメアリーを連れて行きたいとお願いしてみた。


はじめは渋い顔を見せていたマクベさんだったが、


「足手まといになるようなら次回からは連れていかないよ」


なんとか許可してもらえた!


良かった。これでみんな一緒だな。


今日はどのように行動すればいいのかマクベさんに聞いてみると、


荷物は晩までに纏めておくから夕食後に預かって欲しいとのことだ。


これで夕方まではフリーになったのでメアリーの着る物を買いに行くことにした。


旅に出るのだ、さすがにワンピースひとつでは心もとない。


えっ、ダンジョンではどうしていたのかって?


最初に会ったときに着ていた貫頭衣に短パンだな。その上からこの前買ったサラマンダーのローブを着せていた。


本人がこれが動きやすいし、涼しくて良いっていうものだから……。


その辺も含めて今回は見ていきますかね。


みんなで朝市に出かけてみることにした。






この界隈でも朝市は立っているのだが、やはり中央広場の市にはかなわない。


そういうことで中央広場横の露店市場までやってきた。


メアリーは俺が腕に抱いている。朝からでも結構人が多いのだ。


あちこち出ている古着屋を回ってみるが子供服は数が少ない。


古着と革製品を置いてある店があったので、服の積んであるワゴンを眺めてみる。


「いらっしゃい! 良かったら見てってよぉ」


恰幅のいいおばちゃんが声をかけてくる。


「この娘と少し旅に出るんだが、しっかりした服はあるかい?」


とりあえず聞いてみた。


服屋のおばちゃんはメアリーを下におろすように言うと。


しゃがんで前から見て今度はメアリーを反対を向かせて後ろも確認している。


そして古着を積んだワゴンに目をやると、


厚布のパンツ・革のパンツ・薄手のチェニック・丸首シャツ・そして分厚い靴下2足分をささっと見繕い、


「この厚手の靴下に合わせた靴かブーツを探しな!」


と簡単にアドバイスしてくれた。


「では、全てもらうよ」


そう言って清算を済ませると、


「あんた~! ちょっと、あんた~。店番を変わっとくれ!」


露店の奥にいた旦那さんと交代するようだ。


「兄ちゃんたちも、ちょっと待ってておくれ。直ぐやってあげるから」


古着屋のおばちゃんは服を持って奥に入っていった。






俺たちは周りの商品を眺めながら15分程待っただろうか。


「さあ、出来たよ。獣人さんはこれをやっとかないと困るだろう」


そう言ってパンツを見せてくる。


(なるほど、尻尾が邪魔にならないようにUの字に切って補強したのか)


――器用なものだ。


(確かに、ただの穴だと用をたす時に大変だよな)


親切なおばちゃんに礼を言って次は靴屋を探していく。


(やはり子供用は少ないか……)


市場をしばらく回ってようやく子供用靴が並んでいる店を発見した。


専門店ではないがなかなかの品揃えだ。


革の靴やブーツなんかもそれなりに置いてあるみたいだし。


店の者にショートブーツを何点か出してもらい気持ち大きいものを選んで購入した。


市場で買い物を終えた俺たちは、裏通りへ入るとシベア防具店に立ち寄った。


「いよー、やってるー!」


モヒカン男もにこやかに出迎えてくれる。


「この娘が使えるような胸当てはあるかな? あとアームガードも欲しいんだけど」


それに対してモヒカン男は、


「片持ちショルダーの3点ベルトのヤツでいいかー」


そう言いながら小さい胸当てを出してきた。


「へー、このサイズのヤツなんかよく置いてたよなぁ」


「それは俺っちが作った試作品なんだぜ」


俺が感心しているとモヒカン男はしたり顔だ。


「それに品質も問題ねーぞ。ちゃんと薄いが鉄板も入れてあるからよぉ」


さらにドヤ顔を展開している。


「…………」


悔しい。悔しいが……でも買っちゃう!


そのあと、アームガードもちょちょいと手直しして合わせてくれた。


クッ、やるようになったな世紀末!






このように気持ちよく買い物を終えた俺たちは、再びダンジョン5階層の転移台座前に来ていた。


6階層に続く階段を下りていく。


「さあ6階層だぞ。ここからはシロくらいの大きさのウルフやホブゴブリンが稀に出てくる。シロの言うことをちゃんと聞いてしっかり戦うんだぞ」


腕抱きにしたままメアリーに言って聞かせる。


「うん、わかった!」


俺の目を見てコクんと頷くメアリー。


「シロもメアリーを頼むな。しっかりとサポートしてやってくれ。結界は常に準備しておくんだぞ」


すると、お願いされたシロは尻尾を振りながら ワンッ! と一吠えして答えてくれた。


わかっているのなら問題ないだろう。


メアリーを下し子供用の水筒をたすき掛けにしてやる。


幼稚園児が遠足にでも行くかのようである。遊びに行くのは殺伐としたダンジョンの中なのだが。


「水がなくなったら帰ってくるんだぞ。怪我したり痛いとこがあったらシロに言うんだぞ。それじゃ気をつけてな」


そう言って送り出すと、メアリーは振り返って俺に手を振りシロと一緒に駆けていった。


俺もメアリーが駆けていった方向にゆっくりと進んでいく。


どれだけ離れていても『ダンジョンマップ』があるのでメアリーの居所は手にとるように分かるのだ。


そんな中で俺は、ダンジョン・サラに話しを通しある物を作って欲しいとお願していた。


というのも昨日の晩。


旅が近いということもあり、俺はインベントリー内の整理をおこなっていた。


その折、以前サラに作ってもらったミスリルのインゴットを机に並べていたのだが……。


ごつごつとした拳大のインゴット。よく見るとまったく同じ形なのだ。


こっ、これは……。


そう、俺の出した条件にあわせてサラが形成したということだ。


「……あはっ!」


つまり金属の形成ができるということなのだ。一瞬で。


なにこれ! どこぞの錬金術師も真っ青じゃん!


ということで現在に至る……。


(サラ、作ってもらいたい物があるんだ。クナイと言って多用途の刃物なんだが。両刃で持ち手の先はカンつきで…………、イメージはこんな感じだな。材質はこれと同じミスリル合金で作ってほしい)


そう言って俺は女神さまに頂いたショートソードを地面に置いた。


[了解です、マスター。こんな感じでいいですか?]


早速、試作してくれたようだ。


………………

…………

……


それからやり取りすること数十回、ようやく納得できるものが完成した。






試しに近くの岩に向けて数回投げてみた。


(クナイは本来投擲するものではありません!)


そして岩に刺さったクナイを回収したが、刃こぼれどころか傷ひとつ入ってない。


さすがは ダンジョン・クオリティ といったところか。


俺用のモノを20本、メアリー用に小さくしたモノを20本お願いすると、サラはすぐに作ってくれた。


しかし……、俺にはインベントリーがあるからいいのだがメアリーにはクナイ用のホルダーが必要だろうな。


(またモヒカン男のところに行って頼んでみるか? それとも……)


俺がクナイを持ったままいろいろ悩んでいると、


[マスター。こんなのは如何でしょう]


そう言って出してきたのはクナイを入れるホルダーが左右装備された子供用のベルトであった。


ベルトにはサスペンダーが付いておりクナイ装備時でも負担が少なくなるよう考えられている。


(ほほう、これはまるで『軍用ベルト』だよな)


このベルトに水筒やポーチなんかを付けるのも有りかもしれない。


さらに装備されたクナイが不用意に飛び出さないよう、革で編み込まれた紐がカン (輪っか) の中を通してあり、サイドで止めるようになっている。


うんうん、子供だから転んだり、うっかり触ったりしたら危ないからな。


なんて子供のことを考えた安全安心設計なんだ。どこぞのランドセルメーカーのようである。


……うん、まあ、子供に刃物を持たせる時点でどうよ? と思わないでもないのだが。






そろそろ昼時だな一旦呼び戻すか。シロに帰るよう念話を送る。


すると、しばらくしてシロとメアリーは並んで帰ってきた。


メアリーにはオレンの果実水をシロには水をそれぞれ渡し、シロに預けていた(シロが背おえるように加工した)マジックバッグの中身を確かめてみた。


魔石が42個・低級ポーションが2本・角笛が1個!?


これはまさか!


(ゴブリン召喚のヤツか? そうなのか?)


試しに吹いてみた。


「…………???」


なにも起こらなかった。


――あれぇ?


と思いながら周りを見回してみるとシロとメアリーが眠っていた。


……疲れたのかなぁ。


いや違うだろ! 鑑定をしろよ。鑑定を。


ということで、――鑑定!


”眠りの角笛:効果範囲7m:使用制限19回”


なるほど。場合によっては効果的なアイテムだな。


使用制限は今1回使ったから残りが19回ということなんだろう。


と言うことはメアリーはこの角笛のせいで眠ってしまったわけだ。


で、シロはお付き合いで寝ているだけだな。


なんといってもシロは状態異常無効のスキルをもっているのだし。


シロとメアリーを起こして昼食にする。


木皿の上に串焼きをそれぞれ2本ずつ出してやる。


すると、メアリーはシロに出した串焼きの串を1本1本丁寧に抜いてあげていた。


うんうん、先に食べないだけでもえらいのにシロの面倒まで見てくれて。


――できた妹だよなぁ。


そうして、倒してきたモンスターのことを楽しそうに話してくれるメアリー。


「そうか、そうか」


と相づちを打ちながら、俺たちは楽しく串焼きをほおばるのだった。

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